http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/197.html
Tweet |
原文はここ
リンクは英語バージョンがあるもののみ示した。
以下訳
マレーシア機撃墜 プーチンのメディア支配 (タイム誌)
(リード)ロシア国民の大多数は政府の影響下にあるテレビメディアから情報を得ている。
ロシアの外の世界では、MH17機の悲劇が起こったことで、ウクライナ東部の分離主義グループが再び注目を浴びている。分離主義者たちがロシア製の武器を用いて同機を撃墜したと疑われているからだ。しかし、ロシア国内では全く異質の見方が支配的だ。異様な陰謀論的なセオリーをメディアが流布している。いわく、ウクライナ軍がプーチンを暗殺しようとして撃墜した、あるいは、同機には死体が仕込まれていたとか、アメリカとNATOが犯行に関与していたであるとか・・・・。これらのセオリーに共通しているのは、ロシアとプーチンには責任が無いという主張だ。西側諸国の国民にとっては、唖然とするような説だろう。今回の事件は、プーチンによるロシア世論の掌握度がどれほどのものかを、我々にとって不吉なかたちで、浮き彫りにしたようだ。
MH17機事件のクレムリンの情報戦は、ほとんど全てがテレビを舞台に戦われている。ロシアでは1990年代から2000年初頭にかけて新しい報道機関が台頭した。しかし、その後、ロシア政府はメディアの掌握に努め、その殆どが政府の影響下に置かれてしまう。モスクワベースの独立系シンクタンクLevada Center (http://www.levada.ru/eng/ )の最近の調査によれば、ロシア国民の90パーセントがテレビからロシアや世界の情報を得ているとされる。そのテレビメディアのほぼ全てを、クレムリンが所有するか、影響下に置いているのである。一方、インターネットから情報を得ると答えた人は24パーセントに過ぎない。
ロシアで唯一の独立系チャンネル TV Rain ( http://delicast.com/tv/Russia/TV_Rain )の編集長Mikhail Zygarは、「かって我々は、国営テレビにはあきあきしたという言葉をよく耳にしたものだ」という。「しかし、テレビメディアが変質したことで、この傾向は変わったようだ。昔は、北朝鮮のようだったが、今、ロシアのテレビ全体がフォックスニュースのようになってしまった」
プーチンが政権についてしばらくした2000年から、クレムリンはロシアの民放局にも影響を行使し始めた。2001年の終わりまでに、ロシアの主要テレビ局のほとんど全てが、政府に直接所有されるか、もしくは、政府と密接な関係にある企業の傘下に入っている。そのころから着実に、派手なクレムリン宣伝報道が復活していった。今では、国営放送であるRossiya や数多あるその関連会社、たとえばChannel one( http://www.1tv.ru/engNTV )などが、ロシア人の幸福をぶち壊そうとする「脅威」や「敵」を、映像効果を使ってセンセーショナルに報道している。
ロシアのクリミア併合に至っては、その報道振りは「熱に浮かされた」ような様相を呈している。政府支配下にあるメディアが、24時間、善玉と悪玉との戦いを報道し続ける。英雄的な民兵組織が、血に飢えたウクライナのファシストから、善良なロシア系住民を守っている・・・こういう図式である。敵はウクライナばかりではない、ロシアを政治的、経済的に弱体化させようとするアメリカその他の介入者から、クリミアを防衛する英雄的な戦いを続けているというわけだ。今月初め、チャンネルワンは、「分離派の拠点Slavyaniskで、ウクライナ軍が3歳の子供をはりつけにした」というニュースを報道した。この裏づけの無い報道は、激しい批判を浴びたが、ロシアのメディア攻勢は、その低劣さのレベルをひとランク上げたといえるだろう。
モスクワのシンクタンクCarnegie Moscow Center( http://www.carnegie.ru/en/ )の政治アナリスト、Masha Lipmanはこう言う。
「ロシアのテレビが露骨なプロパガンダはすることはこれまでもあったが、今、前例の無いレベルに達しています。」「紛争は、非常にわかりやすい対立の図式の枠にはめられる。我々(ロシア)VS ファシスト、ナチなどの邪悪な言葉で一まとめにされる様々な悪者たち・・・という図式ですね」
前出のTV Rain の編集長 Zygar もこう語る。
「クリミア危機の間に起こった変化は、心理的に非常に重要だ。ロシア国民は、長年、自分たちは弱く、間違っていると感じてきた。しかし、今、自分たちは、正しく、強いのだと思うことができる。これは、非常に重要な点ですね。自分たちは強く、愛されており、正義の側にいるのだから罪悪感を感じる必要も無いのだとね・・・・そういう自分を発見することは、ロシア人にとって、心地よく新鮮なのですよ」
プーチンの情報歪曲キャンペーンは、長年にわたるメディア操作の歴史を利用している面もある。共産党下の情報操作の結果、ロシア国民は、メディアで見聞きすることのほとんど全てに不信感を持つようになっている。彼らの語る「あてこすり」や皮肉は、多くの場合、あいまいで、お互いにつじつまが合わないことも多いが、この傾向は、ロシア人の西側への敵意と、陰謀論的懐疑主義の長い伝統に見合ったものだと言えるだろう。TV Rain のZygar はこう続ける。
「何かものすごく特別な国家による政治宣伝が働いて、ロシア人が、親ロシア派に責任はないと思っているわけではない。ロシア人は永遠の陰謀好きなんですよ。本気で誰かを非難しているわけではない。ごく普通に、半分冗談に日常的に口にするわけです。天気が悪ければ、これはワシントンの気象兵器のせいだ・・・とかね。これが、実際に、普通の人の頭のなかで起こっていることなんですよね」
2010年に発足したRain TVは、小規模だが粘り強く、ロシア主流派の言論に挑戦を続けるインディペンデントメディアだ。他の独立系メディアとして、野党系のNovaya Gazeta(http://en.novayagazeta.ru/ ) や、Russian Forbes、経済紙のVedomosti( http://www.vedomosti.ru/eng/ ) などがある。(Vedomosti は、ウォールストリートジャーナルとファイナンシャルタイムスが主要する)しかし、大部分の独立メディアは、一定の支持者層にはアピールするが、それ以外には無視されているのが実情だ。前出のシンクタンク Levada Center によれば、プーチンの6月の支持率は86パーセント、この14年間で最高の数字である。
カーネギーセンターのLipmanはこう言う。
「少なくともこの10年間、プーチンは本当の政治的反対勢力に煩わさされることが無かった。プーチンは非政府系メディアを叩き潰したわけではなく、むしろ、孤立化させたのです。非政府系メディアは、何を主張しても許されるが、より広い聴衆、大衆へ訴えるための通路を失ってしまった」
Levada Center の調査では、TV Rain を見ると答えたロシア人はわずか2パーセント。これに対して、政府系のRossiya-1とChannnel Oneは、それぞれ48パーセントと8パーセントだった。
MH17機墜落のあと、TV Rain は、事件現場から生中継をやり、様々な視点からの意見を伝えた。その中には、分離主義者、ウクライナ政府、中立的な専門家の意見などがあったわけだが、大多数のロシア人は、全く別のものを見ていたということだ。大多数が見ていた政府系のメディアでは、「事件はウクライナ領内で起こった」ということが、あらゆる機会をとらえて強調された。兵器や航空関係の専門家が動員され、ウクライナを非難し、親ロシア派の民兵は、MH17機を撃墜可能な兵器を持っていないと主張した。
ロシアの独立系メディアは、絶滅への道を辿りつつある。とりわけ、昨年の12月以降、その傾向が加速している。プーチン大統領は、昨年末、大統領令に署名して、国営通信社RIA Novosti や、国際ラジオVoice of Russiaを包摂するメディアコングロマリットを発足させた。Rossiya Segodnya である。プーチンがこの巨大メディアグループの総裁に指名したのは、著名な右派のニュースアンカー、Dimitry Kiselyov氏だった。「ロシア世界で唯一、アメリカを放射性のチリに変える事ができる国だ」という発言で西側では知られている人物だ。また、交通事故で死んだゲイの心臓は(臓器提供にも値しないから)焼いてしまうことを推奨した人物でもある。
TV Rain のMikhail Zygar は自嘲的にこう話す。
「我々の国は、8月に何か悪いことが起こるというジンクスがある。毎年、8月にひどいことが起こるんだ。でも今年は7月に起きたと。そうジョークを言い合っている」
「半年前には、クリミアが併合できるなんて思いもしなかった。そんなことができるかどうか議論したとき、無理だ。ありえない・・・というのが結論だった。我々は、今、お伽噺の現実のなかに生きている感じだ。クリミアの事態が起こり、ウクライナ東部での戦闘が始まって・・・これまでに現実に起こったことを考えると、どんなことでも起こりうるんだと思ってしまいますね」
- 方法論が違うだけでメディアを支配していない近代国家は弱小国家 あっしら 2014/7/27 04:34:54
(0)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。