05. 2014年7月04日 06:42:32
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おまけhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41136 我々はフェイスブックがテストしてきた商品だ 物議を醸す「感情伝染」の心理実験が許されない理由 2014年07月04日(Fri) Financial Times (2014年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 米フェイスブック、極秘調査発覚 利用者から非難殺到 「感情の伝染」を研究するフェイスブックの心理実験には、ユーザーから非難の声が上がっている〔AFPBB News〕 フェイスブックの最新のスキャンダルは、何でもないことに関する大騒ぎだという議論がある。何の被害も与えず、ほとんど目立った影響がなかった、2012年に1週間にわたって69万人のユーザーに行われた心理実験は、過去の調査研究の乱用の規模に比べればほとんど問題にならない。 また、「感情の伝染」を観察するためにフェイスブックの13億人のユーザーのごく一部から、いくつかの肯定的および否定的な投稿を隠すことは、他の企業が時々顧客に与える悪影響とは比べものにならない。欠陥車を運転する人や脂肪と塩分がいっぱい詰まった加工食品を消費する人の方が自身の健康にはるかに大きなリスクを負っている。 フェイスブックは、そのニュースフィードが現実を操作したものであるという事実を隠していない。フェイスブックは、テストを通じて、ユーザーの興味を引いたり、ユーザーに戻ってきて自分自身を投稿したりするよう促す可能性が最も高いことが分かった投稿やリンクを目立つ場所に表示するために選び出している。そうしたテストは悪意のある実験ではない。それらは商品開発だという。 こうした言い分はすべて正しいが、1つ大きな違いがある。我々は、フェイスブックがテストしてきた商品なのだ。 もしかしたら我々は大人になって、自分自身や家族、友人たちの生活の詳細が詰まった、広告を収入源とするソーシャルネットワークを使う時は、それが世の中の動き方なのだと受け入れるべきなのかもしれない。だが、我々がそれを不気味だと感じたとしたら、それがその実験が証明していることなのだ。 学術研究の倫理原則に違反 今回の失態によって、フェイスブックのデータサイエンティストたちは、我々の大半がぼんやりと意識していたかもしれないが、じっくり考えたことがなかった2つのことに注意を向けさせている。1つは、フェイスブックは自社のテストを行う前に許可を求める必要を感じていない、ということだ。 フェイスブックの利用規約、つまり我々の大半が最後に「イエス」をクリックして先へ進むために素早くスクロールする長々とした文章には、商品を「改善する」ためにデータを利用するという文言が含まれている。2012年以降は「調査」という言葉も盛り込まれた。それだけだ。 米国科学アカデミー紀要に発表された問題の研究論文は、フェイスブックユーザーの「インフォームドコンセント」があると主張しているが、それは明らかに誤りだ。すべてのユーザーに、明確で具体的な調査の説明を提供しない、あらゆる状況に対応できるリストに同意させることは、1979年に同意された米国の学術研究のための倫理原則に反する。 プリンストン大学でコンピューターサイエンスと公共政策の教授を務めるエドワード・フェルテン氏は、フェイスブックの利用規約を学術用語で言う「同意の擬制」と表現する。 商業的にも、フェイスブックは特権的な立場にある。ユニリーバやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)といった多くの企業が心理学的研究を行っているが、彼らは被験者を募集している。アイスクリームを買うために調査研究の免責条項に署名させられることはないのだ。 ユーザーの行動に与える信じられないほどの力 第2に、フェイスブックは、ユーザーの行動に対して信じられないほどの力を行使している。これは部分的には、その純然たる大きさによるものだ。情報が友人同士のネットワークによってどのように広がるのかを調べた、フェイスブックのサイエンティストたちによる別の調査研究は、「我々のサンプルは約2億5300万人から成る」と述べている。つまり、彼らはフランスの人口の4倍に当たる人たちに実験を行ったのだ。 感情伝染に関する論文は、「フェイスブックのようなソーシャルネットワークの圧倒的な大きさを考えると、小さな効果が全体として大きな結果をもたらすこともあり得る」と結論付けている。ユーザーのニュースフィードを変えた今回の実験は、ユーザーの行動に小さな影響しか及ぼさなかったが、それですら「ステータス更新で1日当たり数十万もの感情表現に相当していただろう」という。 フェイスブックは規模が大きいだけでなく、自社のユーザーに関して、他のインターネット企業よりもっと親密な情報を保有している。ニュースフィードを制御するアルゴリズムは、グーグルの検索ランキングを動かすアルゴリズムとよく似ている。どちらも、数々のデータを使って、関連性の度合いによって題材をリストアップしている。グーグルの表示は、ユーザーの興味や反応にも影響される。 だが、グーグルがウェブ全体から題材を分析しているのに対して、フェイスブックは、その判断を個人的な題材に集中させている。例えば、バッキンガム宮殿に関する数千のリンクから選択するアルゴリズムはサービスのように感じる。これに対して、友人や家族の投稿を削除するアルゴリズムは道徳的な監視者のように感じる。 フェイスブックは、人の行動を変えられることを実証している。それが実験の目的だった。「我々はユーザーエクスペリエンスを改善する方法を知るために定期的にテストを実施している。テストを行うことで、人々がフェイスブックでより多くのステータス更新の文章を見た時は、彼ら自身がより多くのステータス更新を書くことが分かった」と、ある幹部は1月に書いた。 フェイスブックは時折、特定の目的のためにその力を使っている。例えば、創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は2012年に、既存の臓器提供者にそのステータスを表示し、友人たちにそうするよう促すのを認めることで、フェイスブックユーザーに臓器提供者になるようそれとなく促した(この取り組みには大勢の人が応じた)。大抵は、ユーザーの成長と活動を刺激するという唯一の目的を持って、アルゴリズムに手を加えている。 極端に楽観的な哲学の落とし穴 ザッカーバーグ氏とフェイスブックの他の経営幹部たちは、ユーザーにとっていいもの――友人と題材を共有すること――はフェイスブックにとってもいいものであり、フェイスブックの成長を促すものはどんなものも万人にとって有益であるという、非常に楽観的な哲学を共有している。 「ニュースフィードの目的は、適切な時に適切な人に適切なコンテンツを届けることである」というのが、しばしば繰り返されるこのサービスの一見単純な秘策だ。 物議を醸す感情伝染の研究を企画したフェイスブックのデータサイエンティスト、アダム・クレイマー氏が今週行った謝罪の無邪気に驚いたようなトーンは、これで説明がつく。「フェイスブックにおける我々の調査の目的はすべて、より良いサービスをいかにして提供するかを学ぶことだ・・・我々の目的は誰かを動揺させることでは決してなかったと断言できる」とクレイマー氏は書いた。 もちろん、そうだっただろう。だが、心に大義があると思っている人が、自分が一番いいと思っていることをするのを止めるために、ずっと以前に米国の学術研究指針が作成された。フェイスブックは今こそ指針を読むべきだ。 By John Gapper
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