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[グローバルオピニオン]中国にらみ有志の連合を
米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問 エドワード・ルトワック氏
中国は日本に強硬に振る舞っているが、それによって、かえって日本を助けている。たとえば、集団的自衛権の問題がそうだ。安倍晋三首相は行使の容認をめざしているが、中国の強気な行動のおかげで実現しやすくなった。
東南アジアについても同じことがいえる。中国は南シナ海で強硬な態度をとった結果、ベトナムを一層、米国側に押しやっている。最近まで中立的だったインドネシアも中国に懸念を深め、マレーシアも中国の挑発に目を覚まし、オーストラリアとの安全保障協力を強めようとしている。つまり、中国は自分で、対中包囲網をつくり出してしまっているのだ。
こうしたなか、日本がとるべき対策とは、中国への懸念を抱いている国々と連携し、緩やかで、非公式な連合を築くことだ。そのためには、日本が集団的自衛権を行使できるようになることが必要だ。日本がフィリピンやベトナム、インドネシア、インド、オーストラリア、そして米国などと連合をつくることができれば、アジアの平和を保つこともできる。
ひるがえって中国からみた場合、最良の戦略とは「平和台頭」路線をかかげて各国を安心させ、対中包囲網を崩すことだ。それができないなら、その次に望ましい戦略は、日本以外のアジア諸国や米国に笑顔で接し、日本だけを孤立させることだ。だが、中国指導部はこの戦略をとることはできない。なぜなら、強い発言力を持つ中国陸軍が日本だけでなく、インドも脅威とみなしているためだ。
新たな現実を踏まえ、日本は自衛隊のあり方も再考しなければならない。いま自衛隊が持っているのは、米ソ冷戦下の本格的な戦闘を想定した兵器がほとんどだ。ところが、尖閣諸島などで現実味を帯びているのは(全面侵攻ではなく)中国艦船がほふく前進のように、じわじわと近づいてくるケースだ。そのとき自衛隊に必要なのは、船員は一人も殺傷せず、中国艦船のアンテナなどを破壊し、侵入を食い止めるような新装備である。
ウクライナ危機を受け、中国とロシアが接近するという見方がある。だが、私はそうなるとは思わない。男女に例えるなら、中ロは恋愛ごっこに興じることはあっても、決して結婚することはできない。ロシアはシベリアに侵食してくる中国への警戒を強めている。もし、中国が膨張を続け、中ロに何らかの衝突が生じれば、ロシアは米国や日本と組むにちがいない。
日本がシベリアに投資し、その経済発展を支援することは、日本、ロシア、そして米国の国益にもかなう。なぜなら、シベリアが中国の勢力圏になることは、日ロだけでなく、米国も望んでいないからだ。
(談)
Edward Luttwak 国際的に著名な米戦略家。米国防総省をはじめ、世界各国の政府、軍のアドバイザーも務める。著書に「自滅する中国」など。71歳。
[日経新聞6月16日朝刊P.4]
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