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ISISとの戦いに備えるイラク人兵士(6月17日、バグダッド) ahmed saad/Reuters
【寄稿】崩壊するオバマ大統領の外交政策=チェイニー元副大統領
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303350404579631882689879224
2014 年 6 月 18 日 19:40 JST By DICK CHENEY AND LIZ CHENEY
イスラム教スンニ派の武装組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が多数のイラク人を虐殺しながら首都バグダッドに迫っている。ここでISISと国際テロ組織アルカイダに関するオバマ米大統領の過去の発言を思い出してみるといい。「2軍の選手がレイカーズのユニホームを着たからといってコービー・ブライアントにはなれない(2014年1月)」「アルカイダをひざまずかせ全滅した(13年8月)」「ここではっきりさせておこう。戦争の潮は引きつつある(11年9月)」
米国の大統領がこれほど多大な犠牲を払い、これほど多くのことについて誤った認識を抱いているのは珍しい。オバマ大統領があたかも祈るかのように、イラクとアフガニスタンの戦争を「終わらせつつある」と何度言ったか数え切れない。大統領の言葉は今や現実の壁にぶつかり、粉々に砕け散っている。かつて米国人の血によって守られていた地域を黒装束のISIS兵士らが奪取していることが、米国の敵が「全滅」していないことを示す決定的な証拠になる。テロリストたちは勢いづき、攻撃を続けている。
イラクのファルージャ、ティクリート、モスル、タルアファルが攻略され、広範なアラブ世界にテロリストの安全な隠れ場所ができることは、米国の安全保障にとって戦略上の脅威となる。ISISがイラクで攻撃を開始する前後のオバマ大統領の行動がその脅威を増大させている。
今春中東を訪れた際、ペルシャ湾岸諸国やイスラエルの首都で「貴国の大統領が何をしているのか説明してほしい」「なぜ大統領は逃げ出そうとしているのか」「なぜ大統領はイラクで激戦の末に勝ち取ったものを平気で放棄するのか」「なぜ大統領は敵と取引するのか」と繰り返し聞かれた。
あるアラブ諸国の首都では高官がシリアとイラクの地図を広げた。高官はシリア北部のラッカ州からイラク西部のアンバル州まで弧を描くように指を動かし、「彼らはこの地域を支配下に収めるだろう。アルカイダはここで安全な隠れ場所と訓練所をつくっている。それで米国人は構わないのか」と語った。
オバマ大統領が気にしている様子はない。イラクがイスラム過激派組織の手に落ちる恐れがある中で、気候変動問題について話している。テロリストたちが史上最大規模の領土と資源を掌握している中で、ゴルフに行っている。アルカイダの復活が米国にとって、はっきりと目前にある危機だということに大統領は全く気付いていない、もしくは無関心なように見える。
オバマ大統領が09年に就任した時、イラクのアルカイダはほぼ壊滅状態だった。活動を活発化させるアルカイダに米軍が勇敢に立ち向かったのが大きかった。大統領はイラクの平和実現を手助けするために、現地治安部隊の訓練や情報収集を行う残存部隊を残す合意について交渉するだけでよかった。だが大統領はイラクを見捨て、米国は勝利目前で逆転負けを喫した。
現在、イラクで繰り広げられている悲劇はストーリーの一部にすぎない。アルカイダとその系列組織は世界中で勢いを盛り返している。ランドが先に行った調査によると、世界のイスラム原理主義テロ組織の数は10年から13年の間に58%増え、テロリストの数は倍増した。
こうした脅威を前にして、オバマ大統領は中東で米国の敵に力を与えるのに忙しい。最初はシリア国内のロシア人。そして今はとても信じがたいことに、イランをイラクに招き入れようと考えている。米国がイラク政策をめぐり、世界最大のテロ支援国であるイランに譲歩すべきと考えるのは愚か者しかいない。
オバマ大統領は、自身の政策がもたらす影響に意図的に目をつぶっている。大統領のイラク放棄を追い風に、中東各地で米国に対する脅威が広がっているにもかかわらず、アフガニスタンでも同じ政策をとる意向を明らかにしている。
米国の同盟国が絶望に陥り、敵国がほくそ笑む中、世界中で米国のリーダーシップが強く求められているのは明白だ。にもかかわらず、オバマ大統領は米国の高慢の鼻をへし折ってから退任しようと決めているように見える。実際に、テロリストがイラクの領土を奪取するスピードは、米軍のイラク撤退のスピードと一致している。
大統領は09年9月23日、国連総会での演説で自身の見解を説明し、「いかなる世界秩序も、他国の上に一国が立つものでは長続きしない」と述べた。不幸にも、危険な政策を次々と打ち出し、米国が優位に立たなければ世界秩序は保たれないことを早くも証明している。
オバマ大統領とその支持者はいくつかの厳しい現実に直面する時が来た。それは、米国はいまだに戦争中であり、敵が戦っている時に戦場から軍隊を撤退させても戦争が「終わった」ことにはならないこと。米国の力の低下が暴力行為を誘発していること。世界からの米国の離脱が災いを引き起こし、われわれの安全を危険にさらしていることだ。
アルカイダとその系列組織は息を吹き返し、冷戦以来となる安全保障上の脅威をもたらしている。こうした勢力に勝つために必要なのは戦略であって幻想ではない。軍事、諜報活動、外交における困難な努力の継続であって誤解を与える無意味な美辞麗句ではない。米軍を弱体化させ、世界情勢に対する米国の影響力を低下させているオバマ政策を転換し、米国の軍事力を立て直す必要がある。
空虚な脅し、無意味なレッドライン(平和的解決から軍事的解決へと移る一線)、後方からの指導、敵への歩み寄り、同盟国の放棄、大国への謝罪はいずれもオバマ政策の特徴を示すものだが、これらによって米国の自由が守られることはない。米国と、世界の米国の友人の安全は過去6年間の外交政策の抜本的な転換によってしか保証されない。
1983年に当時のレーガン大統領は「歴史から何か学べるとするならば、それは無邪気な妥協や敵に希望的観測を抱くのは愚行ということだ。すなわち過去に背き、自由を浪費することになる」と述べた。オバマ大統領は過去に背き、自由を浪費した男として名前を残そうとしている。
(ディック・チェイニー氏は2001〜09年まで米副大統領を務めた。長女のエリザベス・チェイニー氏は02〜04年と05〜06年に近東問題担当の国務副次官補を務めた)
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