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アメリカが支援するイスラム原理主義カリフ国家創設を狙ったイラクの計画的破壊と政治的細分化(マスコミに載らない海外記事)
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/818.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 6 月 17 日 00:53:47: igsppGRN/E9PQ
 

アメリカが支援するイスラム原理主義カリフ国家創設を狙ったイラクの計画的破壊と政治的細分化
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/post-0fb3.html
2014年6月17日 マスコミに載らない海外記事


イラクとシャームのイスラーム国:欧米軍事同盟の手先


Prof Michel Chossudovsky
Global Research
2014年6月14日


Irak drapeau carte


欧米マスコミは、イラクで展開つつある武力紛争をイラクとシャームのイスラーム国と、アルマリキ政権の国軍との“内戦”と異口同音に表現している。


(イラクとレバントのイスラム国(ISIL)、イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)とも呼ばれる)


武力紛争は“様々な派閥の背後に一体誰がいるのか”には触れずに、過激派のスンナ派とシーア派間の“宗派間戦争”としてさりげなく描かれている。実際に起きているのは、入念に仕組まれた、アメリカの軍諜報機関による作戦なのだ。


アルカイダとつながる様々な団体が、ソ連-アフガニスタン戦争全盛期以来、“諜報工作の手先”として、アメリカ-NATOによって多数の武力紛争で利用されてきたことが知られており、記録も残されている。シリアでは、アル・ヌスラと、ISIS叛徒は、準軍事部隊の採用と訓練を監督し、支配している欧米軍事同盟の歩兵だ。


アルカイダとつながるイラクと大シリアのイスラム国(ISI)は、2013年4月 、一般的に「イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)」と呼ばれる別の様々な名と略称で再登場した。イラクとシリアの両国にまたがるテロ組織の編成は、アメリカの諜報作戦の一環だった。この組織はアメリカの地政学的目標に対応している。シリアで、アメリカが支援している反乱派に対する、シリア政府軍の進撃と、自由シリア軍(FSA)や、様々な“反政府派”テロ旅団の敗北とも同期している。


ワシントンは、シリアとイラク両国で活動し、両国に補給基地を持っているテロ組織の為に、支援を(秘密裏に)行うことに決定した。ISISスンナ派カリフ国家プロジェクトは、イラクとシリアの両国を、三つの地域に切り分けるという積年のアメリカの計画とも一致する。スンナ派イスラム原理主義者カリフ国家、アラブ・シーア派共和国と、クルディスタン共和国だ。


(アメリカ傀儡の)バグダッド政権は、アメリカからロッキード・マーチンのF16ジェット戦闘機を含めた高度な武器体系を購入したが、イラク政府軍と戦っているイラクと大シリアのイスラム国は、秘密裏に欧米の諜報機関によって支援されている。イラク国内で、双方がアメリカ-NATOによって間接的に支配される内戦を仕組むのが目的だ。


双方に、武器を与え、装備させ、高度な兵器体系を購入できるよう資金援助し、“双方を戦わせる”というのがシナリオだ。


アメリカ-NATOは、イラクとシリア両国で活動しているISIS暗殺部隊の採用、訓練と資金援助に関与している。ISISは、間接的なチャンネルを通して、欧米諜報機関と協調して活動している。報道で確証されている通り、シリア反政府派や、欧米の特殊部隊や傭兵は、ISISに仲間入りをしている。


アメリカ-NATOは アメリカの最も信頼できる同盟国カタールとサウジアラビアを通して、秘密裏に対ISIS支援を注ぎ込んできた。ロンドンのデイリー・エクスプレスによれば、“彼等は、カタールとサウジアラビアから資金と兵器提供を受けている.”


“サウジアラビアやカタール等の同盟国経由で、ISISや他のアルカイダとつながる民兵へと変身した戦闘的反政府集団を欧米は支援してきた。(デイリー・テレグラフ、2014年6月12日)


マスコミは、ヌリ・アルマリキ首相の政権は、サウジアラビアとカタールを、ISISを支援していると非難していると報じるが、ドーハもリヤドも、ワシントンとの緊密な協力の下、ワシントンの成り代わって行動していることは、相変わらず報じないままだ。


内戦という旗印の下で、本質的に、国家を丸ごと、機構も、経済も更に破壊することに貢献する秘密の侵略戦争が推進されているのだ。秘密作戦は、諜報工作上の計画の一環で、イラクを開かれた地域へと転換することを狙って仕組まれたプロセスだ。


一方、世論は、今起きているのは、シーア派とスンナ派との間の武力紛争だと信じるよう仕向けられている。


アメリカによるイラクの軍事占領は非在来型の戦争によって置き換えられている。現実は曖昧になっている。苦い皮肉で、侵略国家が“主権国家イラク”救援にやってくるものとして描きだされている。


シーア派とスンナ派との間の“内戦”は、アルマリキ政権と、スンナ派ISIS反政府派の両方に対するアメリカ-NATOによる支援によって、あおられている。


宗派境界線に沿ったイラク分割はアメリカと同盟諸国の積年の政策だ。(下記の中東地図を参照)


“両派を支持”


“対テロ戦争”は、諜報作戦の一環として、アルカイダ・テロリスト組織を編み出すことと、テロリスト叛徒の標的となった政府の救済とで構成されている。 このプロセスが、対テロ作戦という旗印の下で行われる。対テロ作戦は介入の口実になるのだ。


ISISというのは、スンナ派イスラム原理主義国家を作り出すというカリフ国家プロジェクトだ。イラクの非宗教的な姿の政府を大半が支持しているスンナ派国民によるプロジェクトではない。カリフ国家プロジェクトは、アメリカ諜報作戦の一環だ。


ISIS叛徒の進軍に対して、ワシントンは空爆の実施と、対テロ作戦の一環としての、バグダッド政府を支援する無人機攻撃とを検討している。すべて良い大義の為だ。テロリストと戦う為、もちろん、こうしたテロリスト連中が、欧米軍事同盟の“歩兵”だということには触れないままで。


言うまでもなく、こうした展開は、イラク不安定化にのみならず、イラク人レジスタンス運動の弱体化にも貢献するが、それがアメリカ-NATOの主目的の一つなのだ。


イスラム原理主義カリフ国家は、サウジアラビア、カタールとトルコの諜報機関と協力して、CIAが秘密裏に支援している。イスラエルも、シリアのアルカイダ叛徒(ゴラン高原から)に対しても、シリアとイラク国内のクルド分離主義運動に対しても支援提供にからんでいる。


より広範に、“グローバル対テロ戦争”(GWOT)は、首尾一貫した、悪魔的な論理を包含している。双方、つまりテロリストも政府も、同じ軍・諜報勢力、つまりアメリカ-NATOに支援されている。


このパターンで、イラクにおける現在の状況を説明できるが、宗派間対立の画策を視野に入れた“双方を支援する”構造は、何度となく、多数の国々で実施されてきた。アルカイダ工作員によって統合された反乱軍は(欧米諜報機関に支援されて)、イエメン、リビア、ナイジェリア、ソマリア、マリ、中央アフリカ共和国、パキスタンを含む多くの国々で優勢だ。大詰めは、主権国民国家を不安定化させて、こうした国々を開かれた領域への転換だ(いわゆる外国投資家に成り代わり)。


人道的な理由で介入するという口実(例:マリ、ナイジェリアや中央アフリカ共和国)は、テロリスト勢力の存在が前提だ。ところがこうしたテロリスト勢力は、アメリカ-NATOによる秘密支援無しには存在しなかっただろう。


モスール掌握: イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)に対するアメリカ-NATOによる秘密裏の支援


モスールでは、厳密な軍事用語では説明不可能な、何かただならぬことが起きた。


6月10日、イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)の武装反抗勢力軍が、人口百万人を超えるイラク第二の都市モスールを掌握した。オバマ政権によれば、この展開は“予期しないもの”だが、兵器、後方支援と資金をISIS叛徒に提供しているのみならず、陰で、ISISのモスール攻撃をも画策していたペンタゴンも、アメリカ諜報機関も知っていたのだ。


他のアルカイダと繋がる組織と比較すれば、ISISは良く装備されており、良く訓練された反乱軍だとは言え、モスール掌握は、ISISの軍事能力によっていたわけではない。全く逆だ。反乱軍を遥かに上回る人数で、高度な武器体系を装備したイラク軍は、ISIS反乱軍を容易に撃退できていたはずだ。


各報道によれば、1000人のISIS叛徒に対し、モスールには30,000人の政府軍兵士がいた。イラク軍は介入しないことを選んだのだ。マスコミ報道は証拠も無しに、イラク国軍による非介入の決断、大量の脱走兵で特徴付けられるように自然に起きたと説明している。


イラク当局は、イラク人兵士の二個師団 - 約30,000人が - わずか800人の戦士の武装反抗勢力軍による攻撃に直面して、持ち場を離れて逃げたのだと、ガーディアンに語っている。イラクと大シリアのイスラム国の過激派が、水曜日、モスール街頭中を自由に闊歩し、三日間の散発的な戦闘の後、イラク第二の都市を余りにも容易に掌握できたことにあからさまに驚いていた。(ガーディアン、2014年6月12日、強調は筆者)


各報道は、イラク軍の司令官達がスンナ派が率いるISIS叛徒に好意的だったという事実を指摘している。


クルドの都市エルビルで、モスルの将軍達が都市を、宗派的、歴史的つながりを共有しているスンナ派武装反抗勢力に“引き渡した”と脱走兵達は語り、将校達の卑怯さと裏切りを非難した。(デイリー・テレグラフ、2014年6月13日)


理解すべき重要なことは、双方、つまりイラク正規軍も、ISIS反乱軍もアメリカ-NATOに支援されていることだ。モスル現地には、イラク正規軍で働く民間警備会社の工作員を含め、アメリカ軍顧問や特殊部隊が存在している。逆に、ISIS内部にも、アメリカ-NATO(例えば、衛星電話を通じて)と連係している欧米の特殊部隊、あるいは傭兵(CIAやペンタゴンとの契約で活動する) がいる。


こうした状況の下で、アメリカの諜報機関が大いに関与して、アメリカ-NATOの軍と諜報機関の司令部、モスールのイラク軍に派遣されたアメリカ-NATO軍事顧問部隊なり、現地の民間軍事契約業者、ISIS旅団に所属する欧米の特殊部隊との間で、日常的な連絡のやりとりや、調整や、後方支援や、諜報情報のやりとりが行われていただろう。ISIS内で秘密裏に活動しているこれら欧米の特殊部隊は、アメリカ-NATOとの契約で、民間警備会社によって派遣されている可能性がある。



ヤセル・アル-ホドル/ロイターによる


この点で、モスル掌握は、事前にしっかり計画され、丹念に仕組まれた作戦のように思われる。僅かな小競り合いを除いて、戦闘はおきなかった。


アメリカ軍に訓練され、自由に使える高度な兵器体系を装備したイラク国軍の複数師団が容易にISIS叛徒を撃退できたはずだ。報道はイラク軍兵士が司令官達から介入しないよう命じられていたことを示唆している。複数の証人によれば、“一発たりとも発砲はなかった”。


モスルに駐留していた軍隊は逃走した - ISIS軍が都市に押し寄せると、兵士の一部は持ち場も、制服さえも脱ぎ捨てた。


イラクと大シリアのイスラム国(ISIS)の戦士、アルカイダの分家が、場合によっては、前進する戦士から逃げようとして制服すら脱ぎ捨てて、イラク人兵士や警官が持ち場から離脱したと思われた後、一夜にしてこの都市西岸全域を侵略した。http://hotair.com/archives/2014/06/10/mosul-falls-to-al-qaeda-as-us-trained-security-forces-flee/


千人のISIS叛徒の分遣隊が人口百万人以上の大都市を掌握した? アメリカが支配するイラク軍 (兵員30,000名)は介入しないつもりだということを事前に知らなければ、モスル作戦は完全に失敗していただろうし、反乱軍は殲滅されていただろう。


ISISテロリストに、モスルを掌握させようという判断の背後には一体誰がいたのだろうか? 誰が彼等に“青信号”をだしたのだろう。


イラク人司令官達は、欧米軍事顧問から、都市をISIS テロリストに引き渡すよう指示されていたのだろうか? 彼等は取り込まれたのだろうか?



出典: The Economist



モスルのISISへの引き渡しは、アメリカ諜報組織の狙いの一環だったのだろうか?


イラク軍司令官達は“一発の発砲も”無しで、都市がISIS叛徒の手中に陥るにまかせるよう操作されていたのか、それとも買収されたのだろうか。


モスル陸軍師団指揮官のシーア派将軍マフディ・サビフ・アルガラウイは“この都市を去った”。アルガラウイは、アメリカ軍と緊密に連携して務めてきた。彼は、2011年9月に、アメリカのスコット・マッキーン大佐からモスールの指揮権を引き継いだ。指揮権を放棄するようアメリカ側の相手役から指示され、取り込まれたのだろうか?


(左の写真) 右の人物が、2011年9月4日の権限委譲式典後とイラク警察少将マフディ・サビフ・アルガラウイと語る、第4助言支援旅団、第1機甲師団司令官のアメリカ陸軍スコット・マッキーン大佐。


アメリカ軍も介入は可能だった。アメリカ軍はそういう事態にするよう指示されていたのだ。これはISIS反乱軍の前進と、ISISカリフ国の設立を促進する入念に計画された方針の一環だった。


作戦全体が入念に仕組まれていたように見える。



モスルでは、政府庁舎、警察署、学校、病院等々は、現在、正式にイラクと大シリアのイスラム国(ISIS)の管理下にある。また、ISISは、イラク国軍が放棄したヘリコプターや戦車を含む軍用装備品も支配下におさめた。


現在展開していることは、バグダッド政府の急速な崩壊と並行する、アメリカが支援するイスラム原理主義のISISカリフ国家樹立なのだ。一方、北部クルディスタン地域は、事実上、バグダッドからの独立を宣言した。クルド・ペシュメルガ反乱軍が(イスラエルに支援されている)アルビルやキルクーク等の都市も支配下におさめた。(下記地図を参照)


結論


2003年の侵略以前には、イラクには、アルカイダ叛徒など存在しなかった。しかも、2011年3月に、アメリカ-NATO-イスラエルが支援する反乱が始まるまで、アルカイダは、シリアには存在していなかった。


ISISは独立した組織ではない。アメリカ諜報機関が生み出したものだ。これはアメリカ諜報機関の手先で、今までにない形の戦争の道具なのだ。


アメリカ-NATOが画策した、ISIS叛徒がマリキ政府軍と衝突する継続中の武力紛争の究極的な狙いは、国民国家としてのイラクを、破壊し、不安定化させることだ。これは諜報作戦の一環、諸国を違う領土に組み換える人工的に作り出したプロセスだ。宗派境界線に沿ったイラク分割は、アメリカと同盟諸国の積年の政策だ。


ISISというのは、スンナ派イスラム原理主義国家を樹立するカリフ国家プロジェクトなのだ。歴史的に、非宗教的な政府体制を支持してきたイラクのスンナ派住民のプロジェクトではない。カリフ国家プロジェクトはアメリカが設計したものだ。ISIS軍進軍は、スンナ派住民の、アル・マリキ政府反対という状況に広範な支援に花をそえることを意図していたのだ。


宗派-民族境界線に沿ったイラク分割はペンタゴンの製図板上に、10年以上載っていた。


イランがアル・マリキ政府を支持しており、アメリカの策略は、イランの介入をあおることを意図している可能性もある為、カリフ国家の創生は、中東における、より広範な武力紛争に向けた第一歩という可能性もある。


イラク再分割案は、大まかには、7つの“独立国” (セルビア、クロアチア、ボスニア-ヘルツェゴビナ、マケドニア (FYRM)、スロベニア、モンテネグロ、コソボ)に分割されたユーゴスラビア連邦のそれを手本としている。



マフディ・ダリウス・ナゼムロアヤによれば、イラクの三国家への再分割は、中東地図の書き換えという広範なプロセスの一環だ。


上記の地図は、ラルフ・ピーターズ中佐が作成したものだ。地図は2006年6月に、Armed Forces Journalに発表され、ピーターズは、アメリカ合衆国国防大学の退役中佐。(地図の著作権 ラルフ・ピーターズ中佐 2006年)。


地図はペンタゴンのドクトリンを公式に反映するものではないが、NATOの軍幹部国防大学の研修プログラムで使用されている。 ”(2006年11月付けの、Global Researchマフディ・ダリウス・ナゼムロアヤ記事「中東書き換え計画: “新たな中東”プロジェクト」英文を参照)


記事原文のurl:http://www.globalresearch.ca/the-destruction-and-political-fragmentation-of-iraq-towards-the-creation-of-a-us-sponsored-islamist-caliphate/5386998


 

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コメント
 
01. 2014年6月17日 01:37:30 : nJF6kGWndY

かくして混乱は続く

http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40975
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
オバマの遺産:ホワイトハウスの主には絶対なるな
2014年06月17日(Tue) Financial Times
(2014年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

「軽」有事に備えた訓練実施 - 米国
理屈の上では、米国の最高司令官たる大統領は世界で最も強い力を持っているが・・・〔AFPBB News〕

 まともな考え方をする人で、米国の大統領になりたい人などいるのだろうか。非常に大きな期待を背負って就任したバラク・オバマ大統領のこれまでの姿を見ていると、こんな警句が頭をよぎる――何かを手に入れたいと望む時はくれぐれも注意せよ、本当に手に入れてしまうかもしれないのだから。

 米国内では、先週のティーパーティー(茶会)派による青天の霹靂の一撃以降、オバマ氏が何か大きなことを成し遂げる可能性はほとんどなくなっている。

 米国外では、米軍の訓練を受けたイラク政府軍の部隊が自分よりはるかに劣るアルカイダ系武装勢力に出くわすや否や、武器を捨てて逃げ出している。首都バグダッドでさえも脆弱に見える。現実に圧倒されるとはまさにこのことだろう。

状況を変える力は衰え、果てしなく責任を負わされる米国大統領

 理屈の上では、米国の最高司令官たる大統領は世界で最も強い力を持っている。しかし実際は、大統領が何かを変える力は弱まりつつあり、その一方で大統領が責任を取る能力には制限が設けられていない。もう一度言おう。こんな仕事に就きたいと考えるまともな人が、果たしてこの世に存在するのだろうか?

 もちろん、ヒラリー・クリントン氏をはじめ大勢いるというのが、その答えだ。恐らく、彼らは考え直すべきだろう。任期をまだ3分の1以上残しながら、オバマ氏はホワイトハウスにこもって「ペンと電話」戦略にいそしんでいる。大統領としての権威や権限を行使して変化を促そうという戦略だ。そうした変化の中には、発電所の二酸化炭素排出量を制限する最新のルールなど立派なものも含まれている。

 また、共和党が先週行った下院選挙の予備選挙で同党保守派のリーダー、エリック・カンター下院院内総務がティーパーティー系の候補に敗れたことから、オバマ氏は国外追放する不法移民の数を減らすよう命じる公算が大きい。オバマ氏は、移民制度改革への支持をカンター氏などから取りつけるために国外追放の件数を自ら増やしていたが、この改革が実現する見通しはもうない。

 大統領は、真に重要な問題――最低賃金の引き上げ、米国のインフラ改修、労働を中間層の割に合うものにすることなど――について大演説を続けることはできる。しかし、連邦議会はこれに反応しないだろう。「ペンと電話」は概ね、自分に力がないことを認めるだけだ。

 進行中の計画には、10億ドルを投じて学校にブロードバンド回線を敷設する、製造業研究機関を6カ所設立する、これから引退する国民のために無税の退職貯蓄制度を創設するといったものがある。いずれも称賛に値するが、こうした漸進主義はVチップ(不適切なテレビ番組が画面に映らないようにする半導体)や学校の制服について語るのに忙しかったビル・クリントン大統領の2期目を彷彿させる。

米軍撤退後のイラクの惨状

 しかし、舞台が以前より小さくなったとはいえ、成功が保証されているわけではない。オバマ氏が大統領として最初にやったのは、グアンタナモ湾収容キャンプの閉鎖を命じることだったが、それから5年以上経つ今でもこの施設は残っている。

 では、イラクで起こっていることについて考えてみよう。イラクは、オバマ氏が大統領選挙に初めて名乗りを上げた時にその理由とした問題にほかならない。

 米国はこの問題で、1兆ドルを優に超える資金を直接使っている。恐らく、ジョージ・W・ブッシュ大統領による2003年の侵攻以降の支払利息と機会費用も、合計すれば同じ1兆ドルに達するだろう。米国はイラク政府軍の訓練と装備にも250億ドルを費やした。今、ぶどう弾*1が打ち込まれた匂いをかぐや否や、米国の武器を捨てているのは、この訓練を受けた人たちだ。

イラク第2の都市モスルを武装勢力が掌握
イラク中部のナジャフから同国第2の都市モスルへ向けて、武装勢力鎮圧のために出動するイラク軍部隊〔AFPBB News〕

 オバマ氏は2011年に米軍をイラクから完全に撤退させ、イラクは自分の力でやっていけると述べた。しかし今日では、ウサマ・ビンラディンの殺害後に撤退したとオバマ氏自身が語っていたテロリストたちからイラクを守るために、空爆を――できればそれ以上の攻撃も――実行せよとの圧力を受けている。

 話がそれぐらい単純だったら良かったのに、と思う。何しろアルカイダはユーフラテス川からサハラ砂漠の南縁の国々に至る地域で組織を再編成し、拡大し、米国を脅かす新しい機会や集団を見つけ出しているのだ。

 オバマ氏は、選んだ標的を叩くのに必要な無人機やF22戦闘機ならいくらでも持っている。ただ、空からの攻撃には限界があることも、これまでの経験から分かっている。米国の元ボクサー、マイク・タイソン氏はかつて、誰でも計画は立てているが、それは顔にパンチを食らうまでの話だと語ったことがある。

繰り返し顔面パンチを食らうオバマ大統領

 オバマ氏の計画はイラクとアフガニスタンの戦争を終わらせるというもので、同氏はこれにこだわった。また、ニューヨーク州ウエストポイントの陸軍士官学校で先日行った演説で明言したように、可能な場合には軍事的な関与を外交や経済面の政治力に切り替える計画だとしている。もちろん、民主党支持者と共和党支持者が分裂している米国を一緒に問題解決に取り組む脱党派的な米国に変えたいという夢も持っていた。

 今ではこうした希望がすべて、オバマ氏の顔に繰り返しパンチを浴びせている。これでは、世界で最も孤独なポストに就くことについて語る同氏の言葉にやるせなさが漂うのも、特に不思議なことではない。

*1=小さな鉄球を多数詰め込んだ砲弾

 ヒラリー・クリントン氏をはじめ、大統領になることを考えている人たちは、自分ならもっとうまくやれると思っているに違いない。そう思うからこそ、大統領になりたいと思うのだ。

 オバマ氏については、人々を当初期待させすぎた、これまでは仕事への取り組みがあまりに受け身だった、何か大きな成果を上げて、何もしない連邦議会に恥ずかしい思いをさせる時間はまだ残っている、との見方もできるだろう。

歴史における位置づけは・・・

「米国の力に衰え」、米国民の半数以上が調査で
あと2年半任期を残すバラク・オバマ大統領〔AFPBB News〕

 このうち、最も説得力があるのは最初の指摘だ。オバマ氏は、満たすことなど到底できない量の期待や希望を背負って大統領に就任した。それが今日では、ホームランではなく「シングルヒットを打つ」ことについて語っている。そして、歴史における自分の位置づけに強い関心を示している。

 シカゴ、ニューヨーク、そしてハワイの間で、オバマ氏の記念図書館の誘致合戦が熱を帯びている。オバマ氏も、この件について考えることに多くの時間を割いていると伝えられる。政治情報サイト「ポリティコ」によれば、オバマ氏の家族はホワイトハウスを出た後、ニューヨークに住むことに決めたらしい。

 また、同氏がゴルフコースで過ごした日数は、昨年は46日間に上り、自身の過去最高値(30日間)を上回った。これではまるで、もう力を抜き始めているように見える。

 「ちょうど昨夜は人生と芸術というとても大きな、興味深いことについて話をした。今から政治に関するささいな仕事に戻る」。オバマ氏は先月、イタリアの知識人たちとローマで夕食をともにした翌日にそんな愚痴をこぼしている。同氏がキャビン熱*2にかかっていることは明らかだ。良い面があるとすれば、それは同氏の任期が2年半しか残っていないことだ。

*2=狭い空間に長期間押し込まれて精神的に不安定になること

By Edward Luce


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