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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N6OILO6TTDS401.html
6月13日(ブルームバーグ):
何かがおかしい−。ノルベルト・シュレーダー氏の第六感が告げていた。伝説のスポーツカー「BMW328ロードスター」と寸分違わぬように見えるこの車は、ドイツ・デュッセルドルフのシュレーダー氏の車庫に3日前から鎮座している。車のオーナーもいい加減しびれを切らしているころだ。一通り調べてもオリジナルと異なる点は見つからなかった。しかし、それでもどこかが違うと感じていた。
「ノルベルト、集中しろ。集中だ」と同氏は自分に言い聞かせた。
シュレーダー氏(53)は鳥打ち帽を被らないし、メシャムパイプも吸わないが、クラシックカー界のシャーロック・ホームズ探偵とも言うべき存在だ。ブルームバーグ・マーケッツ誌別冊の高級ライフスタイル誌「ブルームバーグ・パースーツ」2014年夏季号が報じている。
シュレーダー氏はドイツの第三者検査機関テュフ・ラインランド・グループでクラシックカーの鑑定人と復元コンサルタントをしている。専門は認証。つまりクラシックカーが本当にディーラーや所有者の言う通りの代物なのかを確認することだ。しかし近年、虚偽と判明するケースがますます増えているという。
1ミリ単位
英不動産コンサルタント会社ナイト・フランクのラグジュアリー投資指数によれば、クラシックカーの値段は2013年だけで28%値上がりした。マニアの垂ぜんの的である「1955年製アストンマーチンDB2/4」や「フェラーリ250テストロッサ」などはこの10年間で競売落札価格が3−4倍となった。価格が高騰すれば、偽物もまた増える。シュレーダー氏は「偽物の車は90年代には5年に1台だったが、昨年1年間だけで8台に上った」と語った。
素人は車のボディーの特徴あるデザインや外形を見て車種を判断するが、シュレーダー氏のような鑑定人が最も注目するのはシャシー(車台)だ。今回の「BMW328」とされる車の鑑定で同氏が再度目を向けたのもやはり車台だった。「1ミリ単位で調べることにした」と語る。
「328」はBMWが1936−40年に製造したオープンタイプのスポーツカー。その改良型はフランスのルマン24時間耐久レースやイタリアのミッレミリアなどの欧州主要レースを制した。製造された464台のうち、現存するのはわずか180台とみられている。オリジナルは50万ドルで取引される可能性があり、ミッレミリアで優勝した車には2010年に560万ドル(現行為替レートで約5億7400万円)の値が付いた。
フェラーリ166F2
シュレーダー氏は、オリジナルの「328」ではギアボックスが車台の第1クロスバーの3センチ後ろに接続されていることを知っている。調べてみると、ぴったりその場所にあった。さらにギアボックスを車台にボルトで固定するために使われたねじ切りを確認しようとすると、いくら触っても見つからない。なんと、ギアボックスは溶接されていたのだ。こうして嘘がまた1件暴かれることとなった。
クラシックカー市場では復元は常に合法的であるが、これが極めて複雑な話になる可能性がある。欧州最大のクラシックカー見本市の1つ、「テクノクラシカ・エッセン」の会場でシュレーダー氏と会った時、同氏は展示されている「1951年製フェラーリ166F2」の前で、わずか3台しか製造されなかったこの車は少なくとも200万ユーロ(約2億8000万円)の価値があると語った。車台が製造時から全く変わっていないためで、こういうケースばかりではないと教えてくれた。
シュレーダー氏が実際に手掛けた中には、車台の左半分だけがオリジナルで、右半分は複製だったケースがあったという。1970年代以前は、レースカーの車台を幾つかに分けて、それを基に2台以上の車を製造することが珍しくなかった。車台が一部でもオリジナルのものが使われていれば、通常車自体も本物と主張できるからだ。
問題となるのは、買い手に対しどの部分がオリジナルで、どの部分が復元ないし新たに加えられたかを説明する「透明性」と、売り手の意図だ。
ほんの小さな手掛かり
ロンドンに本拠を置く法律事務所グッドマン・デリックでコレクターズカー分野を専門とするマーティン・エミソン弁護士は、「詐欺というのは、偽物であることを知っていて本物と主張することだ」と述べた。同弁護士によれば、最初は純粋にレプリカとして製造されたものの、悪徳業者がオリジナルだとして売りさばいたケースが多いという。
クラシックカーの嘘を見破るには膨大な知識を必要とするが、手掛かりとなるのは大抵ほんの小さな点だ。シュレーダー氏は最近、「メルセデス300SLガルウィング」(本物なら約120万ドル相当)の虚偽を見抜いたが、決め手となったのは車体番号を押すために使われたフォントのわずかな違いだった。
売り手が数十年間も行方が分からなかったレースカーの車台を発見したと言ったり、直近の所有者を明確にしなかったりといった場合も偽の可能性が高い。クラシックカーの専門家でジュネーブでブローカーを営むサイモン・キッドソン氏は、「行方が分からなくなっていた車が発見されたという場合、申告通りの代物だったケースは1割に満たない」と指摘した。
モリアーティ教授
ホームズの宿敵と言えばモリアーティ教授だが、現在のクラシックカー界ではチェチェンの犯罪組織がそれに当たるだろう。同組織は自動車部品を古く見せるため何年間も風雨にさらすなどして、BMWやメルセデス・ベンツのビンテージカーのほぼ完璧な模造車を製造する。シュレーダー氏によれば、ブガッティの車台の偽造を図ったある犯罪組織は、冶金検査でも発覚しないよう、使われなくなったインドの鉄道線路からわざわざ1920年代の鉄を入手して材料にしたという。
テクノクラシカ・エッセンの会場で、100万ユーロ前後で売り出されている赤の「ポルシェ356Aスピードスター」に近づいた時、シュレーダー氏は急に立ち止まった。質問を続けようとしたが、シュレーダー氏は黙るように人差し指で合図し、じっとポルシェを見つめている。「私は今、車と話をしているんだ」。
世界中で年間少なくとも200台を鑑定するというシュレーダー氏は、次第に自分の第六感を信じるようになったという。同氏はポルシェの周りを一回りした後、車体にさらに近づき、眉をひそめ、「悪い予感がする」とつぶやいた。
原題:Fake BMWs Uncovered by Vintage-Car Sleuth Who ScoursChassis(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Jeremy Kahn jkahn21@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Ted Moncreiff tmoncreiff@bloomberg.netJoel Weber
更新日時: 2014/06/13 08:00 JST
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