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アメリカ政治に関する最新論稿をご紹介します 2014年06月10日 (古村治彦の酔生夢死日記)
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/787.html
投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 6 月 11 日 13:45:36: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://suinikki.blog.jp/archives/6489589.html

古村治彦です。

 今回は、2016年の大統領選挙に関する論稿を皆様にご紹介したいと思います。2016年というとずいぶん先のようですが、アメリカでは既に誰が候補になるかとか支持率調査が行われています。

 今回ご紹介する論稿は、私が2012年に出版した『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で取り上げたアメリカの外交政策と大統領選挙について書かれたものです。私は、自分が取り上げた介入主義と現実主義の争いが、アメリカ政治を分析する上で今でも有効性を持っていることに自信を持ちました。

 この論稿を読まれた後、是非『アメリカ政治の秘密』をお読みください。

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「大統領選挙に立候補すべきだ、ジョー。出馬してくれよ:民主党にとってバイデンの大統領選挙出馬が必要であることの理由とは何か(Run, Joe, Run: Why Democrats Need a Biden Candidacy)」

 エリザベス・ウォーレン(訳者註:Elizabeth Warren、1949年〜、マサチューセッツ州選出の民主党所属連邦上院議員。元ハーヴァード大学法科大学院教授)のことは忘れよう。民主党、そしてアメリカにとって必要なのは、介入主義を代表するヒラリー・クリントン(Hilary Clinton、1947年〜)と抑制主義を代表するジョー・バイデン(Joe Biden、1942年〜)副大統領との間の真剣な討論である(Forget Elizabeth Warren. What the Democratic Party, and the nation, need is a real debate between Hillary Clinton's interventionism and the vice president's restraint.)

The Atlantic

2014年5月9日

ピーター・ベイナート(PETER BEINART)筆

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2014/05/run-joe-run-why-democrats-need-a-biden-candidacy/361965/

 ジョー・バイデン副大統領が民主党の大統領選挙候補になるというのは、ただのジョークに終わってしまう危険の中にある。毎週毎週、民主党の大物たちが新たにヒラリー・クリントンを支援すると表明する動きが続いている。ヒラリーを支援するいくつものグループは、既にマスコミの攻撃的な報道を回避するために団結している。ついには、先週開かれた、ホワイトハウス担当記者との夕食会で、バラク・オバマ大統領はフォックス・ニュースをからかうことでヒラリーの大統領選挙出馬が確定であるという雰囲気作りを行った。オバマ大統領は次のように発言した。「私が大統領を退任したら、私が退任したことを貴方たちは残念に思うだろうね。貴方たちがどんなに頑張ってみても、アメリカ国民に“ヒラリーはケニヤ生まれ”だと信じさせることは、私の時に比べてかなり難しいだろうから」


 2016年の民主党内の予備選挙で起こりうるサプライズとして可能性があるのは、左派からヒラリーに挑戦する候補者(経済面でのポピュリスト)が出てくるということだけだ。エリザベス・ウォーレンの大統領選挙予備選挙出馬という話題は、リベラル派の多くの関心を集めている。ジョー・バイデン副大統領はウォール街の金融業界に対して全く反対の立場を取る十字軍の騎士といった存在ではないために、彼の予備選出馬に関しては人々の関心を集めていないのが現状だ。これは大変に良くないことである。ウォーレンが予備選に出馬することで、民主党内部において、経済における政府の役割に関して貴重な議論が起きるだろう。しかし、バイデンが予備選に立候補したら、もう一つの重要な議論が起きるだろう。それは、世界におけるアメリカの役割についての議論である。

 現在の民主党の外交政策エリートたちの中で、ヒラリー・クリントンとジョー・バイデンは、全く別の、反対の極をそれぞれ代表している。ヒラリーは、1990年代スタイルのタカ派である。ヒラリーと夫であるビル・クリントン(Bill Clinton、1946年〜)元大統領は、ヴェトナム戦争反対の動きが大きくなる中で成長した人々である。しかし、彼らは、ビル・クリントンが大統領在任中、アメリカ軍との関係は良好で、アメリカ軍をうまく利用した。ヒラリーは彼女が出版した最初の回顧録の中で、夫のビルが大統領在任中(つまり、彼女がファースト・レディーである時に)、ボスニアとコソヴォに対するアメリカの介入を支持したと書いている。ヒラリーはファースト・レディーと言う立場を利用して、バルカン半島に対してタカ派的な、強硬な姿勢(軍事介入推進)であったマデリーン・オルブライト(Madeleine Albright、1937年〜)を、クリントン政権二期目の国務長官にするように積極的に働きかけた。

 1998年、「アメリカは世界に二つとない掛け替えのない国家である。私たちは世界の中で最も高い位置に立ち、他のいかなる国よりも遠い未来を見通している」という有名な発言を行った人物こそがオルブライトである。そして、これはヒラリーの考えでもある。2007年、ヒラリーはイラクからの米軍即時撤退に対して反対し、「私には責任感が遺伝子レベルで備わっている」とコメントした。これはつまり次のような意味なのである。アメリカ国民は世界の指導者としての重荷に嫌気が差す時があるし、アメリカの歴代大統領たちは世界の指導者としての役割を演じる際に誤りを犯すこともあったが、より大きな脅威はアメリカが小さすぎる役割しか果たさないことだ。ヒラリーにとっては、イラク戦争後のアメリカの真の危機は、アメリカの積極主義ではなく、消極主義であった。アメリカが活動を縮小することで生じる空白にアメリカの敵たちが充満するとヒラリーは考えたのである。

ヒラリー・クリントンはいわゆる「ネオコン」ではない。共和党内のネオコンと呼ばれる人々の多くとは違い、ヒラリーは国際機関と国際法に親近感を持ち、信頼もしている。しかし、ヒラリーは上院議員時代には共和党のジョン・マケインと共同歩調を取ることが多く、2007年には当時のオバマ上院議員を「イランの指導者たちとの直接交渉を行うように提案するなどと無責任でかつ気の弱いところを見せている」と激しく非難したが、それには一つの理由があった。民主党内の多くの人々と比較してみて、際立つ違いというのは、ヒラリーは世界をトーマス・ホッブス(Thomas Hobbs、1588〜1679年)が想定したような場所だと見ており、アメリカの力によってのみ暴力が支配する世界を抑えることができるのだと考えている。

 ヒラリーとは対照的に、バイデンの世界観は、クリントン政権(1993―2001年)の前後の起きたことによって形成されている。2012年にジャーナリストのジェイムズ・トラウブはジョー・バイデンにインタビューを行った。その中で、バイデンは、ジョージ・ケナン(George Kennan、1904〜2005年)に深い尊敬の念を持っていると述べた。ジョージ・ケナンは冷戦期の数十年間、世界規模でソ連の封じ込めを行うことは、アメリカの過剰派兵状態(overstreach)を生み出すと警告し続けた。トラウブは、「バイデンにとって外交政策の面での英雄は、ブレント・スコウクロフト(Brent Scowcroft、1925年、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の国家安全保障担当補佐官)やジェイムズ・ベイカー(1930年〜、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の国務長官)といった人々だ。彼らは、ケナンが生み出した子供たちと言える存在であった」と書いている。スコウクロフトとベイカーに関して私たちが記憶しておくべきなのは、ボスニアへの介入に反対したことである。これによって、次のビル・クリントン大統領はボスニア問題に対してタカ派的な姿勢を取ることになった。スコウクロフトとベイカーは、湾岸戦争終結後のサダム・フセイン(Saddam Hussein、1937〜2006年)の追い落としを望まなかった。ビル・クリントンは大統領在任中の1998年にフセインの追い落としを図った。

 ヒラリー同様、バイデンもアフガニスタンとイラクへの侵攻を支持した一人である。しかし、これらの戦争の悲惨な結果を受けて、バイデンは、スコウクロフトとベイカーが示した慎重なリアリズムの立場を取るようになった。ジャーナリストのボブ・ウッドワードによると、2009年、その当時国務長官であったヒラリー・クリントンは、アフタニスタンに4万人の米軍増派を行うべきだと強く主張した。ヒラリーはテーブルの上で拳を握りしめ、次のように高らかに宣言した。「私たちは私たちが勝利を収めることができるように行動しなければならない」。対照的に、バイデンは、タリバンを打ち破ることは可能でもないし、アメリカにとって必要なことでもないと考えていた。そして、作戦をアルカイーダに絞るべきだと主張した。ヒラリーが恐れたのは、アフガニスタン国内の無秩序と野蛮な行為であったが、バイデンが恐れたのは、アメリカが泥沼に嵌ること(quagmire)であった。

 ジョナサン・アレン、エイミー・パーン著『ヒラリー・ロドハム・クリントン』によると、バイデンは西欧諸国によるリビア空版についてその効果に疑義を示したという。一方で、ヒラリーは西欧諸国による空爆を支持した。バイデンはオサマビンラディンに対する急襲についてリスクが高すぎると考えた。ヒラリーはオバマにオサマビンラディンを吸収するように強く促した。ヒラリーは夫であるビル・クリントンが大統領在任中、クロアチア人勢力に武器を供与することで旧ユーゴスラヴィアにおける和平が達成されたということを覚えていたのか、オバマ大統領に対してシリアの反政府勢力に武器供与を行うように促した。バイデンはこの時も慎重論を唱えた。トラウブは次のように書いている。「ここ数年、特にアラブの春(Arab Spring)の間、様々な出来事が起きたが、そうした出来事が起こるたびにオバマ大統領のホワイトハウスは慎重な対応を求める本能と大きな野心との間でどちらに従うかを選択しなければならなかった。ほぼ全てのケースで、バイデンは疑義を持って慎重に対応する側に立った」

バイデンとヒラリーとの間で私的に行われる議論が皆で見ることができる公の場でなされることは民主党とアメリカにとって良いことである。そうでなければ、予備選挙期間中、ヒラリーはオバマに比べてかなりタカ派的な言動を行うことになるだろう。それは一つにはウクライナ問題のせいでタカ派的な態度が再び人々に受け入れられやすくなっているし、更には、彼女自身の本能がそうせよと教えるからである。しかし、こうしたことは、なかなか他人には気付かれないものだ。

 当然のことながら、ヒラリー・クリントンは、バイデン以外にも、介入主義とは違う立場を取る潜在的な候補者と対峙することになる。それはランド・ポール(Rand Paul、1963年〜、ケンタッキー州選出共和党所属上院議員)である。

(終わり)  

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コメント
 
01. 2014年6月12日 05:12:23 : NyNlB4v0IM
ランド・ポールを過大評価というより、見誤っていること以外は
正しいかどうかも別として(バイデンへの評価)
非常に良く書けていると思う

正しくはないかもしれないが、ヒントにはなる

少し前のアメリカは、こういうものを書ける人が、話せる人が、もっといた
そして、理解できる人も


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