http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/750.html
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※ 参照投稿
「ウクライナ危機で問われるNATOの意味:存在意義が自覚される契機になることでNATOを救ったロシアのクリミア併合」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/445.html
「デフォルトを嫌う金融家のため、危機を頼りにする軍需産業のため、「東西」の合作で分断と対立を煽られたウクライナ」
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/467.html
「ウクライナ情勢の今後:軍事的対応はハナからなしだが、実質的経済制裁も避けたい欧米先進国:焦点はウクライナ東南部地域の“地」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/169.html
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時論公論 「どうする 日ロ関係」2014年06月04日 (水) 午前0:00〜
石川 一洋 解説委員
安倍総理が外交の最重要課題とする日ロ関係は、ウクライナ危機という乱気流に巻き込まれています。その中で政治ではプーチン大統領から平和条約交渉継続への新たなシグナルがありました。また対ロシア制裁にもかかわらず欧米企業はしたたかにロシアとの経済関係を維持しています。では日本は政府も民間もどのようにロシアとの関係を構築すべきか、主体的な戦略が問われています。きょうは日ロ関係をどのように進めるのか考えてみます。
●ナルイシキン訪日
2日からプーチン大統領の側近のナルイシキン下院議長がロシア文化祭開幕に合わせて来日しました。ウクライナ危機後、最も高いレベルのロシアの政治家の来日です。議長はNHKのインタビューに応じて日ロ関係の重要性を強調しました。
ナルイシキン議長「ウクライナ危機は残念ながら日ロ関係にも影響している。しかし日ロ関係は日本にとってもロシアにとっても非常に重要な独自の価値を持っている」
ナルイシキン議長は欧米の制裁リストに入っていて、欧米は公的な接触を制限しています。日本は安倍総理は会談を控えました。世耕官房副長官が文化祭の開会式に出席し、森元総理らは会談し、日ロ関係を重視する立場を示しました。今回の議長訪日で重要なのは日ロがウクライナ問題の立場の相違の中で、日ロ関係を継続するという意思が確認できた点です。
●日ロ関係とウクライナ危機
ウクライナ危機が発生するまで、安倍総理とプーチン大統領は五回の首脳会談を重ね、日ロ関係は順調に発展してきました。今年二月のソチでの首脳会談では、プーチン大統領のこの秋の訪日で合意、プーチン訪日に向けて、領土交渉を加速化、経済や安全保障での協力を深めていくことで一致しました。その思惑はウクライナ危機で大きく狂いました。
「ロシアによるクリミアの一方的な編入は力による領土の変更で容認できない」
日本はアメリカなどG7の一員としてロシア非難の姿勢を示しました。4月の岸田外相の訪ロや経済ミッションも延期し、ロシア政府高官など23人に対する渡航禁止措置など対ロシア制裁も発表しました。ロシアへの強硬姿勢を貫くアメリカは日本に対しても対ロシア制裁で同調するよう求め続けていました。ただ日本の対ロシア制裁は欧米、特にアメリカに比べると、一歩、二歩遅く、範囲も限定的です。
たとえば欧米はロシアに対する部分的な経済制裁に踏み切っていますが、日本は、公的な経済制裁はしていません。安倍政権として何とか日ロ関係を維持したいという苦慮の跡がにじみ出る形となりました。
●プーチンからのシグナル
プーチン大統領は日本の対応を注意深く分析し、先月24日次のように述べ、日本に重要なシグナルを送ってきました。
▼ロシアは四島を対象として平和条約交渉を行う
▼最終的な解決案はまだなく、共同の困難な複雑な交渉の中で生まれる。
▼相互の利益を損なわず、共に敗者とならないような解決・引き分け
▼日本の制裁には驚いた。日本には交渉の用意があるのか。
日本の対ロシア制裁に不快感を示すなど牽制球の要素もありますが、4島を交渉の対象とし、北方領土問題での妥協を模索するとの姿勢を示したことが重要です。
菅官房長官はプーチン発言を評価したうえで、プーチン大統領のこの秋訪日の予定に変更はないとして、両首脳の合意に基づき平和条約交渉を進める立場を明確にしました。
政府は国家安全保障局の谷内局長を訪ロさせるなど日ロ関係継続への努力を続けていましたが、今後ロシアがウクライナ情勢安定化に具体的な行動を取るのか睨みつつ、延期している岸田外相訪露をいつ行うのか、難しい判断が迫られるでしょう。
●日ロ経済関係
政治以上に影響を受けているのが、経済関係です。日ロの経済関係は、エネルギー、環境、インフラ、医療、農業などこれまでにない幅広い分野で大きく飛躍する基盤が築かれていました。ウクライナ危機は日本企業のロシア進出の意欲に水をかけた形となりました。
●サンクト経済投資フォーラム
それがはっきりと現れたのが先月サンクトペテルブルクで開かれた経済投資フォーラムです。アメリカ政府はアメリカの企業に対して最高経営責任者CEOは参加しないように求め、日本など同盟国にも同調を要求しました。
日本政府は民間企業がトップを含めて参加するのは妨げないとしながらもアメリカ政府の意向は民間企業に伝えました。
実際の企業の参加では、ほとんどの日本企業がトップはもちろん経営幹部の参加も控えたのに対して、欧米の企業、特にエネルギー企業はCEOこそ少なかったものの、開発担当の副社長クラスを堂々と派遣するなど対照的な動きとなりました。
●ロシア投資を続ける欧米企業
私は司会者としてエネルギーセッションに参加しました。そこでは欧米企業のロシア重視の姿勢が際立ちました。プーチン大統領の側近でロシア最大の石油会社ロスネフチのセーチン社長はアメリカの制裁リストに載っています。しかしアメリカのエクソンモービル、GEそして石油メジャーの老舗BPなどヨーロッパの企業の代表が出席しました。
欧米企業の発言にはさらに驚きました。
ロレンゾ・シモネリGEオイル&ガス社長「セーチン社長の申した通り様々な分野の会社の協力が必要です。技術を売るGEにとってもロスネフチとの協力はとても大切です」
ロベルド・ダトリーBP最高経営責任者「政治家は一年余り先の選挙のことしか考えません。エネルギーの協力は一度限りのものではなく戦略的な相互信頼に基づくものです。私たちはロシアのエネルギー産業の一部であることを嬉しく思います」
●米ロのエネルギー企業の思惑
「ウクライナ危機は短期的なものだ、ロシアとの協力は20年、30年後を睨んだ長期的なもので、ここで打ち切るわけにいかない」とそうした本音が表れた発言です。
ただ欧米の企業が一見アメリカ政府の意向に反する発言をした裏には、私は「アメリカ政府も将来のエネルギー安全保障を考え、米ロ経済関係を継続するに違いない」と各企業が読み切っているしたたかさを感じるのです。
さらに印象的だったのはロシア側の対応です。ロスネフチのセーチン社長をはじめロシア側はアメリカ企業の立場を気遣い、関係維持に細心の注意を払っていました。
セーチン社長は「今回出席した企業の方々の恩義は忘れない」と述べ、ロシアにとっても欧米の技術や資本の重要性を理解していることを感じさせました。そのことが米ロ関係のさらなる悪化を防ぐロシア側での歯止めになっています。ロシアと欧米のエネルギー業界の信頼関係が政治的な対立を解きほぐす外交的な役割を担う可能性もあるでしょう。
●消極的な日本
日ロの経済関係の結びつきも同様であるはずです。
「民間企業はそれぞれのロシアとの経済関係を進めてほしい」というのが、日本政府の公式な立場です。ところが経済制裁をしている欧米の企業がしたたかにロシアとの関係を継続しているのに対して、日本企業が引いてしまうという事態が起きているのです。
●主体的な対ロ戦略を
確かにアメリカは、日ロ関係が突出して進み、G7の対ロシア政策の国際協調を乱すのを恐れ、日本に対して懸念を伝え続けています。時に圧力もかけてくるでしょう。
アメリカがそう出てくるのは当然と言えば当然で、むしろ日本の主体性のなさが問題だと感じます。官民ともにアメリカの反発を恐れる過度な外交的な配慮があるのかもしれません。しかし日本の国益が損なわれては元も子もありません。
今日は政治、経済両面で日ロ関係を見てきました。
さまざまな変数の絡み合うまことに難しい状況です。この秋のプーチン大統領訪日に変更はないとしながらも、ロシアとアメリカの板挟みにあい、主体的な判断ができていないのが日本の現状のように思えます。
国際協調を維持しつつ国益を守るという観点からどのように日ロの関係を進めていくべきか考えなければなりません。
(石川一洋 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/189529.html
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