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(回答先: 米国防長官:中国の最近の行動、地域の情勢を不安定化−講演(Bloomberg) 投稿者 五月晴郎 日時 2014 年 6 月 01 日 03:06:49)
http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/39121743.html
2014年05月31日13:04
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アルルの男・ヒロシです。 今日は2014年5月31日です。
安倍晋三首相がシンガポールにまで出向き、IISSという英国のシンクタンク主催で毎年この5月下旬に開催されているアジア太平洋の国防大臣会合の「シャングリ・ラ・ダイアローグ」で今年の基調講演をしました。ちなみに去年の基調講演はベトナムのズン首相でした。
新聞報道で内容を確認しておく。
(引用開始)
首相、中国念頭に「強い非難」 ルールづくり呼びかけ 東南ア支援表明
2014/5/31付 日本経済新聞 朝刊
【シンガポール=永井央紀】安倍晋三首相は30日夜、シンガポールでのアジア安全保障会議で講演した。中国による防空識別圏の設定や南シナ海での衝突を念 頭に「既成事実を積み重ね、現状の変化を固定しようとする動きは強い非難の対象とならざるを得ない」と批判。中国との紛争の平和的解決を目指すベトナムや フィリピンを「強く支持する」と述べた。
首相は南シナ海の海洋安全保障で東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への支援強化を表明。武器輸出3 原則を見直したことで日本の防衛装備を輸出しやすくなったとし、巡視船をインドネシアに3隻無償供与したほか、フィリピンに10隻、ベトナムにも今後供与 すると強調した。
ASEANと中国の対立緩和に向け、双方が話し合っている紛争回避のルールづくりにも触れて「実効性のある行動規範が速やかにできるよう期待する」と述べた。
尖閣諸島など東シナ海での日中の対立に関しては、中国軍機による自衛隊機への異常接近を受け「戦闘機や艦船による危険な遭遇を歓迎しない」と強調。海と空 で不測の事態を防ぐための「連絡メカニズム」が運用に至っていないことに触れ「テーブルに着き、ほほ笑みの一つなりを交わして話し合おう」と中国に呼びかけた。
集団的自衛権など自衛隊の活動拡大を目指す安倍政権の安全保障政策への理解も求め「平和を追求する道をこれからも変わらず歩む」と力説した。
アジア安保会議はアジア太平洋地域の防衛担当閣僚らによる国際会議で、小野寺五典防衛相やヘーゲル米国防長官らも参加している。
首相は講演に先立ち、ヘーゲル氏と会い、中国を念頭に力による現状変更を認めないことで一致。ヘーゲル氏は首相の集団的自衛権に関する取り組みを歓迎した。
小野寺氏もヘーゲル氏、オーストラリアのジョンストン国防相と会談、共同声明を発表して中国の挑発行為を連携して抑えることを確認した。共同声明では中国への名指し批判は避けたものの、小野寺氏は「米豪ともに同じ考えを持ってもらえた」と語った。
日本には南シナ海で生じた問題は、東シナ海でも起こり得るとの危機感がある。中国をにらんだリバランス(再均衡)政策を掲げる米国も同盟国の日韓とともにASEANの協力に期待する。
中国はフィリピンやベトナムに強硬に出る一方、国境を接するミャンマーやラオスにはインフラ整備を支援してASEANの分断を図る。ASEAN内に米国の関与に物足りなさを感じる国があることに付け入る隙を見ている。
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20140531&ng=DGKDASFS3003X_Q4A530C1EA2000
(貼り付け終わり)
日経の記事に出てきた演説の要点をまとめると以下のとおりになる。
(1)力による南シナ海や東シナ海の現状変更を使用としているとして暗に中国を批判
(2)「戦闘機や艦船の危険な遭遇を歓迎しない」と紛争回避のルール作りを中国、ASEAN諸国に呼びかけ
(3)中国には交渉のテーブルについて笑顔で話しあおうと呼びかけ
(4)集団的自衛権の行使容認を国際公約に
(5)巡視船をフィリピン・べトナムに最低10隻の規模で供与
これ以外に、産經新聞の報道では次のように「国際法(法の支配)」の重要性を訴えたと報道している。
(引用開始)
「法の支配」の意味について、首相は「国際法に照らして正しい主張をし、すべからく平和的解決を図れ、ということだ」と解説した。続けて、「その当たり前 のことを、あえて強調しなくてはならない。アジア・太平洋に生きるわれわれ、一人一人が(法の支配の)原則を徹底順守すべきだ」と言い切った。
名指しは避けながらも、中国のみが「法の支配」を順守するという「当たり前」のことをしていないと徹底的に指摘したのだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140530/plc14053023510027-n1.htm
(引用終わり)
日経新聞が報じていない「法の支配」の重視という論点が実は安倍にとっては一番のポイントだったといえる。あとは靖国神社参拝については質疑応答の際に次のように答えた。
(引用開始)
安倍晋三首相が30日、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)で自身の靖国神社参拝について「国のために戦った方に手を合わせる、冥福を祈るのは世界共通のリーダーの姿勢だ」などと語り、会場が拍手に包まれる一幕があった。
講演後の質疑で、出席者の中国人男性が昨年の首相の靖国神社参拝について「先の大戦で日本軍に中国人は殺された。その魂にどう説明するのか」と質問したのに答えた。
首相は「法を順守する日本をつくっていくことに誇りを感じている。ひたすら平和国家としての歩みを進めてきたし、これからも歩みを進めていく。これは、はっきり宣言したい」とも述べた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140531/plc14053109090008-n1.htm
(引用終わり)
私はツイッターでこの講演の実況書き込みを見ていたが、この靖国参拝についての安倍首相の見解に拍手が起きたことに注目している欧米の論客もいた。
おそらくこの拍手をしたのは東南アジアか参加する日本の聴衆だと思う。第二次世界大戦後の戦後レジームの正当性に関わる靖国神社という微妙な問題では米国も中国も敏感になるからだ。
安倍首相はフィリピンとベトナムが抱えている海洋国境の問題については次のように述べていた。
「南シナ海における紛争の解決を,まさに3原則にのっとり求めようとしているフィリピンの努力を,私の政府は強く支持します。ベトナムが,対話を通じて問題を解決しようとしていることを,同様に支持します」(シャングリラ演説http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/nsp/page4_000496.html)
これは安倍首相の言う三原則、すなわち「国際法に照らして正しい主張をし,力や威圧に頼らず,紛争は,すべからく平和的解決を図れ」に基づいて、フィリピンやベトナムが中 国との問題を国際司法裁判所(ICJ)ないしは国際仲裁裁判所に仲裁してもらおうと動いていることへの日本の支持表明と読める。
しかし、なぜか日本と 中国の尖閣諸島の領有権問題の話が質疑応答で出た時には、「現状に挑戦している中国が考えるべきこと」と日本側の動きを否定している。
ここが私には、安倍首相が評価するフィリピンなどの行動と矛盾していると映った。
フィリピンも日本も中国から挑戦されているという点では立場は同じ。フィリピンの場合は日本は「提訴は支持」となって、 日本が当事者になると「提訴はしない」というのでは日本の言う「国際法の支配」というのはただの「二重基準」ではないかと読めてしまう。
あるいは「時期が来れば日本も提訴するが、ここは東南アジア諸国の結束を待つ」ということなのかもしれないが、いずれにしても釈然としない部分がこの演説には残った。
<安倍演説から分かること>
安倍首相はアジア国防大臣会合の場にわざわざ出かけて行って「集団的自衛権」を含む積極的平和主義(そう、集団的自衛権は積極定期平和主義の一部なのだ)を訴えたということが重要である。
アメリカはすでに日本でもよく知られているように「アジアへの軸足移動(ピヴォット、リバランス)」を標榜しながらも、予算の関係や、アメリカの支配層の意識がまだアジアではなく中 東や西ユーラシアにとどまっており、アメリカ国民は戦争はも嫌だという「厭戦気分」で海外への過度のコミット、かかわりを嫌う風潮にある。
そこで地域の同盟国にある程度は責任負担を移転してアメリカは国内の立て直しを行う。これがオフショアバランシング戦略である。アメリカは地域覇権国の登場は 認めないが、地域のリーダーとなる同盟国の存在は認める、ということである。
http://livedoor.blogimg.jp/bilderberg54/imgs/3/8/38574a8b.jpg
そのリーダーにふさわしいのが飼いならされた同盟国である日本である。
一方、安倍の方としても「祖父の代でつくろうとした大東亜共栄圏の失敗は、アメリカの了解を取り付けずに勝手に動いたことに失敗がある」とつくづく認識し ている。アメリカを交えた東アジアサミットやシャングリラ会合や多国間の防衛協力の中で日本がリーダーシップを発揮していけばアメリカも認めてくれると安 倍は考えていると思われる。
アメリカは日本にアメリカの「リージョナルエージェント」としての立場を認めつつ、安倍政権の右翼体質が過度に出てきた場合には、日本の民主党の親米派を使って「抑え」に入るというやり方で地域をコントロールしていくのだろう。
安倍が集団的自衛権を認めたいのは米国の中東での戦争に日本が付き合うという意識ではないだろう。それよりもむしろ、東南アジア諸国との多国間、二国間の 枠組みの防衛協力を(アメリカの同意のもとで)進めて行く中で、日本が集団的自衛権を行使できないことが障害になっていると考えているのだろう。
この認識 はアーミテージらとも共通すると思う。みんな日本のメディアも論客も誤解しているが、今の集団的自衛権論争は、「米国を守るための集団的自衛権」ではな い。日本が東南アジアを中国から防衛するためのものである。
このことがいよいよ明確になったのがシンガポールでの安倍演説であるといってよい。
安倍晋三にしてみれば、東アジアサミットやシャングリラというのは、東條英機首相が泥縄でつくりあげようとして失敗した「大東亜会議」の現代版だろう。
東南アジアの支持を得ながら日本は西太平洋でリーダーとなるというのが安倍の長年の願望だと思われる。
ただ、東南アジアに巡視船を供与したり、極端に武器供与などの面で加担していって、中国との紛争が本格化するという「誤算」の可能性もある。抑止のゲームの読み違えが「安全保障のジレンマ」ということになるからだ。
その時、東南アジアは必ず日本の味方につくといえるだろうか。大東亜会議も日本の理想主義を利用してうまく東南アジア諸国が植民地支配から脱却するために 利用されるだけ利用された側面がある。全盛期における大東亜共栄圏構想の挫折のことを深田祐介の『黎明の世紀』(文春文庫)という本は描いていた。
(引用開始)
結局、戦時日本人はアジア開放の大義を信じていたが故に、それを理念として宣明した大東亜会議は日本の朝野 をおおいに昂揚させたが、東條首相のアジア家族主義がいい例で、日本はおおむね主観的善意の押し付けに終始した。いわば全アジア満州国化の意図だが、これ に対抗するアジア諸国との政治力学的関係がテーマになったといえよう。
『黎明の世紀』深田祐介著から
(引用終わり)
安倍首相の前のめりの「理想主義」は、どこかで高転びに転ばないかと危惧はしておいた方がいい。
<追記>
シャングリラ会合と並行して2014年のビルダーバーグ会議が北欧デンマーク・コペンハーゲンで1日まで開催中である。
今年のテーマは、先進国特有の悩みである「経済発展の持続性」「人口問題と年金」、スノーデン事件に端を発する「諜報情報共有の特殊性」「プライバシーは存在するのか」と言ったテーマ、それから、新興国の状況に関しては、「民主主義発展と中流階級の問題」「中国の政治経済見通し」「中東における新しい安全保障環境」「ウクライナ問題」とあり、欧州議会選挙での民族派の躍進を踏まえて「欧州の今後」などの議題が取り上げられているようである。
メンバー表によると、今年もデイヴィッド・ロックフェラーの出席はなし。ティモシー・ガイトナーも不参加であるが、91歳のキッシンジャーは出席している。
ことしはブルッキングス研究所の中国研究者のチェン・リーが参加している。欧米支配層にとって縁遠いのがこの中国問題であるようだ。また、中国からは国家発展改革委員会のメンバー、劉鶴(中央財経指導グループ弁公室副主任、部長級、党中央委員)が参加したようだ。国際機関に所属しないアジア人の参加は珍しいことだが、チェン・リーの人脈によるものだろうと思う。
いずれにせよ、今回のビルダーバーグも世界の中心から離れた所で行われているだけに具体的な内容は、よくわからないが、創始者であるロックフェラーが参加しなくなってからは世界情勢に「先んじて動く」という感じではなくなっているという感が否めない。
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