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2014年05月26日
古村治彦です。
本日は、今回のインドの総選挙で次期首相になることが決まった、インド人民党のナレンドラ・モディ(1950年〜)に関する論稿(ウェブサイト「ザ・ディプロマット」に2014年5月16日付で掲載)のポイントをご紹介します(http://thediplomat.com/2014/05/narendra-modi-indias-shinzo-abe/?utm_content=bufferb8728&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer)。この論稿のタイトルは、Narendra Modi: India's Shinzo Abe India’s next prime minister has much in common with Japan’s nationalistic incumbent」というもので、訳しますと、「ナレンドラ・モディ:インドの安倍晋三 インドの次期首相は日本のナショナリステイックな現職首相と多くの共通点を持っている」となります。
著者のブラウマ・チェラニー(Brahma Chellaney)氏はインドのニューデリーにある政策研究センターで戦略研究を専門とする教授を務めている人物だそうです。
アメリカの戦略はどうもアジアにおける中国封じ込め、地域大国としての台頭を阻止するもしくは遅らせるということで、対中シフトとも言うべきシステムを構築しようとしています。日本、フィリピン、ヴェトナムに加えてインドもそのシステムの中に入ってきそうです。ナレンドラ・モディという人物もそのために育てられていた人物のようです。安倍首相と同じように。ナショナリスティックな人物たちがアメリカの利益のために対中強硬姿勢を取る、そして、中国を除いた新しいアジア地域システムを作るというのは、大変危険な動きであると思います。また、このような人物たちの動きは、なにか「大東亜共栄圏(Great East Asia Co-Prosperity Sphere)」の幻影を見ているかのようです。
ですから、以下のような、「モディは、インド版の安倍晋三だ」という論稿が出るのだと思います。ただ、インドは日本などよりも人口が多く、位置的にも重要なところを占めているために、アメリカに大事にされるだろうとは思われます。
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@インドのナレンドラ・モディ新首相は安倍晋三首相と似ている。経済成長(国内、国外の投資を促進する)に注力しながら、中国中心のアジアの出現を阻止するために、同じ目標を持つ国々との協力関係を強化することが期待されている。
Aモディと安倍の共通点は、ソフトなナショナリズム、市場志向の経済政策、新しいアジア主義(アジアの民主諸国家との関係を強化し、戦略的なパートナーシップを構築する)である。
Bモディは1947年のインド独立後に生まれた人物で初めて首相になった。安倍は第二次世界大戦後に生まれた人物で初めて首相になった。
Cモディは貧しい家の出身であるが、安倍首相は華麗な政治一族の出身である。
Dインドは世界の人口の6分の1強を抱える大国であるが存在感が薄い。モディは外交面で多くの課題に直面することになるだろう。この点は安倍首相と共通している。
E国際的な地位の面でインドは中国に大きく引き離されている。インド国民の多くはモディに新しい方向性を示してほしいと願っている。インドは「裏庭」である、ネパール、スリランカ、モルディヴに対する影響力を低下させている。ブータンが唯一インドに南アジアにおける戦略拠点となっている。
Fインドは、共に核兵器を保有している中国とパキスタンの協力関係と対峙しなければならない。モディ新政権はムンバイで起きたテロ攻撃のようなパキスタンが絡むような事件が起きた場合には、軍事的な報復などを行う可能性もある。
G米印関係は外交上の緊張や貿易関係の紛争でギクシャクしている。モディはこの問題にも直面することになる。モディは市場志向の経済政策と軍の近代化を主張している。これはアメリカのビジネスにとって新しい機会となるだろう。そして、米印関係を新しいステージにまで引き上げることになるだろう。
Hアメリカの戦略的な利益は、アメリカの武器セールスを促進することになり、軍事力の共同運用の道筋を作ることにもつながる新しい防衛関係と貿易関係の促進によって、増進される。アメリカは他のどの国よりも、インドとの軍事演習を緊密化させている。
Iモディは米印関係を正常化させることになるだろうが、最初はビジネスライクなものとならざるを得ないだろう。アメリカは2005年にモディ(当時はグジャラート州首相)がヒンズー教徒とイスラム教徒との間で起きた暴動に絡んだとしてヴィザを出さなかったことがある。
J対照的に、モディは日本とイスラエルからはい扱いを受けた。モディは2007年と2012年に日本を訪問した。この時、ビジネスを歓迎するグジャラート州に対する日本からの投資を呼び込む道筋を作った。
Kモディの勝利でインドは日本との関係をより重視するようになる。これはアメリカの勧めもある。インドは東アジアと東南アジアのアメリカ同盟諸国との関係を強化するだろう。安倍首相は、「日印関係は世界に存在する他のどの二国関係よりも大きな可能性を秘めている」と主張している。
L日印協商(Japan-India entente)はアジアの戦略的な地図を変更させる。モディの勝利は安倍の勝利に起因している。
(終わり)
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