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想像の上を行く 中国の「反日」メディア工作の威力
中国人に届くのは歪んだ日本情報だけ
2014.05.27 jbpress
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40779
日本の代表団による訪中が続いている。中国メディアによれば、3月下旬から5月初旬までの約50日間に、日本の10の代表団が訪中して中国側要人と会談したという。一方、4月には胡耀邦の息子である胡徳平氏が来日、5月には与党自民党の高村正彦副総裁が「日中友好議員連盟」代表団を率いて訪中した。社民党も5月下旬に訪中する予定だ。冷え切った日中関係は改善に向かうのだろうか。
しかし、中国国内の雰囲気は相変わらずだ。CCTV(中国中央電視台)は相も変わらず日本叩きを繰り返し、その勢いはむしろ強まっている。
中国メディアが特に最近攻撃しているのは、安倍晋三首相の欧州訪問である。テレビや新聞はこの訪問を「安倍の欧州宣伝作戦」と称し、これまで以上の激しさで批判した。
「中国、韓国のトップが訪問した直後、安倍はあわてて欧州に向かった。そこでやったことは国際宣伝戦である。釣魚島争奪が激化する中、欧州各国の支持を取りつけることだった」(環球時報)
「日本の首相、安倍晋三が欧州の10日間の旅でやったことは、中国脅威論の誇張だ。中国の軍事費は不透明で、中国が東海(東シナ海)、南海(南シナ海)で実力による現状変更をし、日本周辺の安全環境を悪化させているので中日は一戦を交えることは不可避であるとし、その脅威論は扇動的で危険性の高いものだった。安倍が煽る中国脅威論は、集団的自衛権を解禁する改憲の根拠を与えるものとなっている」(解放日報)
またCCTVは「ドイツ式の謝罪はしない」という安倍首相の発言を取り上げて大々的に批判した。中国メディアによる猛烈な日本攻撃に影響を受け、国民感情はむしろ悪化している。
筆者が上海で会う中国人は、誰もが「日中関係は1年前よりもさらに悪化していると感じる」と言う。官制メディアの“絶大な発信力”のおかげで、中国人の対日感情が好転する兆しは見られない。和食ブームや訪日旅行など、日本に関心を持つ一部の中国人が存在することだけがせめてもの救いだ。
思考が柔軟なはずのA教授までもが・・・
さて今回は、筆者が上海で経験したある出来事を紹介したい。
中国の大学で日中韓の中国語教育について研究をする若い女性教授、A氏がいる。このA教授と筆者は互いに何でも「思ったことを口にできる仲」だ。
A教授の魅力は、「自分の知らないはずの情報がまだある」ことを前提にしている点だ。自分の考えや知識に固執せず、異なる見方を取り入れようとする。A教授は日本についても、こうしたアプローチを維持していた。自分が常識だと思っていた日本人像は現実とは相当かけ離れているものであり、「本当の日本人がどうであるかを知りたい」という興味を抱いていた。そして、「その日本人に映る中国人像はどんなものなのか」についても知りたがっていた。
筆者の経験からすると、こうした思考の柔軟さは中国においては大変珍しいものである。これまで多くの中国の識者と出会ったが、日中問題にかかわらず、有意義な議論ができる相手は限られていた。たいていのケースは、互いのメンツを損なわない形式的な議論で終わる。最初から議論を避ける傾向の方がむしろ強い。議論になると最後は感情的になる。そして、その後の関係の修復に相当な時間をかけなければならない。
そうした中国人の友人たちの思考の原点にあるのは、「私の知識は絶対に正しい」という自信であり、想像力の絶対的な欠如だった。刷り込まれた日本や日本人の情報が相当歪んでいても、彼らの日本人に関する情報はそれしかないのである。
そんな中で、筆者にとってA教授は唯一まともな議論ができる相手だった。だが、ある日、A教授が開口一番こう迫ってきた。
「これはほかの日本人には聞くことはできないと思うからあなたに聞くが、日本人はやはり軍国主義者なのか。安倍首相は欧州で中国批判をしたが、これをどう思うのか」
A教授のこの質問は、中国政府のメディア工作の強大な影響力を物語っている。
A教授と会ったのはちょうど5月初旬で、まさにメディア全体が安倍首相の欧州訪問を舌鋒鋭く批判していた頃だ。単純に考えても「日本人=軍国主義者であるわけはない」のだが、A教授ですら、メディア、すなわち中国政府の発信する情報を鵜呑みにしてしまっている。それほど、その“工作”は効果を発揮していた。
一般市民には日本を知るための情報が手に入らない
A教授は「中国は今、日本は改憲するなら謝罪しろという立場を強めている」とも付け加えた。しかしその一方で、A教授は村山談話も河野談話も知らなかった。日本政府が行ってきた巨額のODAすら知らなかった。
A教授は日中関係の専門家ではないので仕方がない面はある。だが、中国では一般市民の手の届くところに「日本を公正に理解するための資料」があまりに少なすぎるのだ。
中国政府が、偏った日本情報を故意に国民の頭の中に植えつけていることは言うまでもない。その結果、一般市民の間ではいまだに「日本は軍国主義であり、中国の敵だ」という認識が根強い。これが正されるどころか、どんどん“加筆”されていくのが現状だ。
そして最大の問題は、中国ではいまだに「情報は1つでしかあり得ない」という点である。「様々な角度からの解釈は許されない」のだ。ネットなどでも、目立つのはやはり「偏見」である。たとえ知日派学者がいても、日本を正しく伝えようとする情報発信は非常に限られている。
余談になるが、中国のテレビ局では、日本人の専門家を引っ張り出して「日本批判、日本政府批判」をさせることがよくある。A教授が見たのは、あまりに過激に日本を批判をする日本人専門家だったようで、「こうした人たちは日本に帰国して無事でいられるのか」と心配していた。中国人がメディアで政権を批判すれば、間違いなく“反逆罪”となるだろう。
なかなか現れない自由な思考の持ち主
さて、このA教授は後日、こんな報告をくれた。
映画「男たちの大和/YAMATO」(佐藤純彌監督)を「ダウンロードして見てみた」というのだ。この作品は太平洋戦争末期の沖縄への水上特攻を扱った映画で、水兵や下士官の視点で戦争を描いているのが特徴だ。また、当時の市民生活や世相も描写されている。A教授は「涙なしには見られなかった」と話し、また「学校で教わった日本の軍国主義とは異なるものだった」とも語った。大きな発見だったようだ。
筆者は、この地に住む人々との対話はいつも難しいと感じている。その固定観念を変えるのは容易ではない。逆に、そうした固定観念に縛られたまま一生を送る一般市民を気の毒だとも思っている。一部の外資系勤務者や海外業務従事者を除き、「上からの発信を受け入れること」に慣れてしまった人々の思考はすっかり硬直化してしまっている。
金持ちこそ現れても、“自由な思考の持ち主”はなかなか現れない。国境を越えればそこには異なる国の人々が異なる価値観で生活していることなど、想像しようともしないのだ。ましてや日本や日本人については、「過去の歴史」という角度からしか見ようとしない。
ある時期、中国で流行した映画に日本人男性の登場人物がいた。その日本人男性はいつも妻に「メシ、メシ」と迫り、亭主関白ぶりを誇張する人物設定になっていた。おそらく昭和時代の作品なのだろうが、中国の多くの一般庶民は、日本人男性はそういうものだと思い込んでしまっている。
なぜこれほど近くの国なのに日本情報がこんなに少ないのか。果たして中国に日本や日本人を正しく知ってもらう有効な手立てはあるのだろうか。いまのところ、答えは見つからない。
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