03. 2014年5月21日 13:42:59
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今の論調の基本は、まだEUは低迷、上下から解体に向かうリスクは大きいかな http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40740 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] 近隣諸国を方向付ける力を失ったEU 欧州の理想主義者がアラブの春を歓迎した時代は遠い過去 2014年05月21日(Wed) Financial Times (2014年5月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) EUのCO2排出権取引サイトにフィッシング攻撃 EUの議会組織である欧州議会の選挙は22〜25日に実施されるが、大多数の加盟国の投票日は25日の日曜日に集中する〔AFPBB News〕 米国には「スーパーチューズデー*1」がある。欧州は間もなく「スーパーサンデー」を迎える。欧州連合(EU)加盟28カ国で相次ぎ欧州議会選挙が行われ、5月25日の日曜日に終わるからだ。また、同じ日曜日にはウクライナで大統領選挙が実施され、その翌日にはエジプトで大統領選挙の投票が行われる。 そして同じ週の5月29日にはロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3国による調印式が行われ、ウラジーミル・プーチン大統領肝いりのプロジェクト――ユーラシア連合なるものの創設――に正式なゴーサインが出される見通しだ。 このように一斉に行われる選挙や外交活動の間には、何らかの関係があるのだろうか? 答えはイエスだ。なぜなら、不安定で比較的貧しい近隣諸国を安定と繁栄に導く標識としてEUが機能できるか否かについて、この5月末までにいろいろなことが分かってくる可能性が高いからだ。 かつては近隣諸国を安定と繁栄に導く標識だったEU EUは、平和、繁栄、優れた政府といったものを近隣諸国に広めるにあたって極めて重要な役割を担いたいと考えている。そうした取り組みのうち、これまでで最も成功したのは「ビッグバン」と称される2004年のEU拡大だった。これによりEUは加盟国数を15から25に増やし、旧ソ連ブロックの国々の大半を飲み込んだ。 新たに加盟した国々は、ブリュッセルのきらめく門をくぐるために、厳格な政治経済改革プログラムをあらかじめ受け入れていた。このEU拡大は、欧州の理想が持つ力を誇示する出来事だった。 当時は、EU拡大が将来にわたって強い威力を発揮し続けることも十分にあり得るように思われた。バルカン半島を経てトルコやウクライナにも広がり、いずれは北アフリカやロシアにまで及ぶのではとも思われた。 実際にEUに加盟する公算はまだ小さい国もあるが、たとえそうだとしても、政治・経済改革の実行と引き換えに市場へのアクセスや援助、技術支援などを提供することにより近隣諸国の方向付けをしたい、と欧州は考えていた。実際、それは妥当な取引であるように思われた。 だが、残念ながら、欧州のスーパーサンデーでは、現状はこの理想主義的なビジョンにはほど遠いことが明らかになるだろう。 *1=大統領選挙の候補者を決めるためにあちこちの州で一斉に予備選挙や党員集会が開催される火曜日のこと 欧州議会選挙で予想される極右・極左勢力の躍進 インターネットは「CIAのプロジェクト」、露大統領が警告 欧州議会での極右、極左政党の躍進は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にとっては都合がいい〔AFPBB News〕 欧州議会選挙では、極右政党と極左政党が合わせて最大で30%の議席を得る公算が大きい。その程度の議席では、EUの政治課題をコントロールすることはできないだろう。 しかし、そこまで勢力を伸ばせば各国政府は動揺するだろうし、EU域外に非常に否定的なメッセージを発信することになるだろう。 欧州の極右・極左政党の多く――とりわけフランスのマリーヌ・ル・ペン氏率いる国民戦線(FN)とドイツの極左政党、左派党――は、プーチン氏を公然と称賛している。極右政党がプーチン氏を好んでいるのは、同氏がナショナリストであると同時に社会的保守派であり、自分たちと同様にEUを見下しているからだ。 また、欧州の極左政党がプーチン氏を好ましく思っているのは、同氏が米国を苦しめているからだ。こうした極右・極左の政党が欧州議会で強い存在感を示すことは、クレムリンにしてみれば大歓迎だろうが、EUや欧州議会の支援を得たいと思っている近隣諸国のリベラル派勢力は当惑することになるだろう。 欧州の極右・極左政党には、EU拡大への反発の高まりに乗じて勢力を伸ばしてきた面がある。EUの近隣諸国を安定化する必要があるという抽象的な議論は、景気後退やユーロ危機で痛手を負った大陸西部の有権者たちの心に響いていないようだ。有権者たちはむしろ、低賃金で働く労働者が新たに加盟した国々から大量に流入することを恐れている。 もし、EUの近隣諸国を援助したいと考える政治家たちが、大規模に見える支援パッケージを北アフリカに提供したりウクライナなどの国々へのビザ(査証)発給要件を緩和したりすれば、既に欧州の非主流派政治勢力に引き寄せられている有権者をさらに怒らせることになりかねない。 ウクライナ大統領選挙の虚しい象徴性 ウクライナが自国の大統領選挙を欧州議会選挙と同じ日に実施することにしたのは、偶然ではない。この国がモスクワではなくブリュッセルを向いているということをアピールするのに、これ以上いい方法があるだろうか? だが、その象徴性は虚しく見える。というのも、ウクライナ情勢全体の皮肉の1つは、ロシアは容赦なくウクライナのEU加盟への道を阻止しようとしたが、EU自体は決してウクライナを歓迎するマットを敷いてはいなかった、ということだからだ。 さらなる東方拡大に対して西欧の有権者が抱く敵意を認識し、EUは意図的に、ブリュッセルに至るまでの道を、長く威圧的な障害物コースにした。ウクライナの絶望的な窮状と同国のロシアとの争いは、そうした障害物の一部を取り除く時だということを示唆しているのかもしれない。 だが、欧州議会選挙は恐らく、それとは大きく異なるメッセージを発信することになるだろう。一方、プーチン氏は遠く離れた暗いカザフスタンの首都アスタナで調印式典を開き、ユーラシア構想を生かし続けようとする。 エジプト大統領選で暗い雰囲気に拍車 欧州議会選挙の翌日から実施されるエジプト大統領選挙は、暗い雰囲気に拍車をかける。クーデターと、民主的に選出されたムスリム同胞団の転覆に続くアブデル・ファタフ・アル・シシ将軍の勝利はブリュッセルで、決まりの悪い沈黙状態で受け止められるはずだ。 欧州の理想主義者たちがアラブ世界の革命を、北アフリカが近く民主主義国と市場経済国から成るコミュニティーの一部として欧州の仲間入りをする兆候として歓迎した2011年の高揚した日々は、もう過ぎ去って久しい。 最近の欧州は、エジプトの平和を保ち、テロを弾圧し、大量移住を防ぐと約束するシシ将軍のようなアラブの政治指導者を、恥じ入った様子で歓迎する。こうした指導者をどうにかして「改革者」に見せられるなら、それに越したことはない。 これは暗く、薄汚い展望だ。だが、EUが自信を持って自らを、近隣地域、そして世界の模範と称することができた時代は過去に遠ざかりつつある。最近、EUは自分たちの問題で手一杯なのだ。 By Gideon Rachman
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