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22〜25日に、5年に1度の欧州連合(EU)の欧州議会選がおこなわれる。欧州の金融危機後初めてとなる議会選では、右翼やEU懐疑派の政党が大きく躍進し、3割の議席を獲得しそうだ。統合が深まる流れにブレーキがかかるおそれもある。欧州でいま何が起こっているのかを、上下2回の連載で読み解く。
パリ・オペラ座前の広場に1日、数千人が集まった。フランスの右翼「国民戦線(FN)」が欧州議会選を前に開いた集会だ。
オペラ座には、12の星が青地に円を描く欧州の旗がたなびいている。その玄関を覆わんばかりの巨大なポスターは、ジャンヌ・ダルクが、欧州統合の象徴である星を一息に吹き飛ばす絵柄が描かれていた。「ブリュッセルにノン」。欧州連合(EU)の本拠ブリュッセルへの反旗だ。
「EUへの不名誉な降伏に、背を向ける機会だ」
マリーヌ・ルペン党首は、ユーロ導入で暮らしが厳しくなったと説明したあと、こう声を張り上げた。拍手がわき、支持者はフランス国旗を振って応えた。
フランスではいま、従来は傍流だった右翼政党FNが、主役の座に躍り出つつある。
仏CSA社の調査では、欧州議会選で投票したい政党に、FNが24%でトップに立った。政権与党・社会党(PS)の20%も、最大野党・民衆運動連合(UMP)の22%をも上回った。
「選挙で選ばれたわけでもないブリュッセルの官僚が欧州の将来を決め、ユーロの導入で暮らしは厳しくなった」「巨大な競争力を持つ農家との競争が待ち受ける米国との貿易協定はおかしい」「大量の移民は、雇用を奪い、社会的なコストもかかる」――。FNのこんな主張は、失業率が10%超で高止まりするなかで、いらだちを強める仏国民に響いている。
前回2009年の欧州議会選でFNの得票は6%余りで、フランスに割り当てられた72議席(当時)のうち3議席にとどまった。FNは今回、15〜20議席を奪っての大躍進を見込む。
FNは1972年、ジャンマリ・ルペン氏のもとで結党された。ジャンマリ氏はかつて、ユダヤ人虐殺を「ささいなこと」とも発言し、キワモノ扱いされてきた党だった。だが11年に後継となった娘のマリーヌ氏は、自らの名前とも重なり、海の色を表す「ブルーマリン」をFNの代名詞として使い、批判をあびるような極端な発言もしない。「極右」ではない、「普通の政党」としてのイメージ戦略も奏功している。
欧州では、欧州議会でも、各国議会でも、中道右派や中道左派といった比較的穏健な政党が多数派を形成してきた。FNは、「(中道の右派・左派による)2極時代は終わった。われわれが、新たな選択肢だ」と訴える。
■各国で台頭、連携を模索 発言力拡大へ会派結成狙う
右翼やEU懐疑派の政党が支持を集めるのは、欧州各国に共通する現象だ。
オランダの「自由党」は移民排斥などを訴える右翼政党だ。今回の欧州議会選を巡る最新の世論調査では、16・5%の支持率で国内首位。オーストリアの「自由党」も、国内3位の19%の支持を集める。
ブリュッセルの世論調査機関によると、欧州議会選では、反EUや反ユーロなどEU懐疑派の政党が全751議席のうち220議席以上、全体の3割を占めるとみられている。現在の2割を大幅に上回る数字だ。
各国のEU懐疑派の勢力が連携する動きも出始めた。オランダの「自由党」のウィルダース党首は、自ら各国を訪ね、EU懐疑派勢力の結集を呼びかけた。昨年11月には仏FN、オーストリアの「自由党」との連携を発表した。
欧州議会の会派の結成は7カ国、25人以上の議員が条件だ。会派を結成できれば、議会から予算を受けたり委員会の委員になったりすることができる。欧州議会選後の発言力拡大を狙っているのだ。
ウィルダース氏はスウェーデン、ベルギー、イタリア、デンマーク、英国の政党にも声をかける。「大きいグループになれば、各国がEUから主権を取り戻す歴史的な役割を果たせる」
今回の欧州議会選は、特に重要な意味を持っているといえそうだ。
欧州議会は、EUの新しい基本条約「リスボン条約」(2009年発効)で今回から権限が大幅に拡大された。予算案のほか、移民や安全保障などほぼ全ての法案を審議する。加盟国の閣僚で構成する理事会と同じ強い権限を持つようになった。そこに右翼やEU懐疑派が大勢入り込むことになれば、移民規制を強化したり、統合の深化に逆行したりする政策が推進されるおそれがある。
シンクタンク「我らのヨーロッパ」のイブ・ベルトンチーニ所長は「彼らの発言力が増すと、中道政党が大衆迎合的な政策を導入することが想定される」と懸念する。
右翼やEU懐疑派の勢力はすでにウクライナ問題で、ロシアに協力。EUとは異なる動きをみせている。
仏FNのルペン党首と共に1日、壇上にのぼった欧州議会選候補者のエメリック・ショウプラド氏。同氏は2カ月前、ウクライナ南部クリミア自治共和国にいた。地政学の学者として、ロシア編入の是非を問う住民投票を監視する「国際監視団」(23カ国、135人)に参加していた。欧州各国から右翼や極左政党関係者が集結し、用意された車と通訳を使って各地の投票所を視察。「投票は公正が保たれていた」とお墨付きを与えた。
反EUという点で、こうした政党と、ロシアは「呉越同舟」だ。右翼・EU懐疑派勢力の台頭は、欧州統合の深化にブレーキをかけかねない。(パリ=青田秀樹、シンフェロポリ=石田博士、ハーグ=吉田美智子)
■広がる「敵を作る政治」 お手本は日本?
高止まりする失業や、もたつく経済に妙手が見いだせない欧州で、「敵をつくる政治」が広がっている。市民の間のいらだちを「EU」や「移民」に向けるやり方だ。そうした右翼政党はしばしば、お手本として「日本」を口にする。
オランダ自由党のウィルダース党首は朝日新聞の取材に「移民規制は必要だ、日本のように。国境も予算も自分たちだけで決めたい」などと話した。
日本は、外国人労働者を研修や技能実習の制度で活用しているだけで、移民は受け入れていない。移民規制が強い日本を、まねるかのような動きだ。
「古代以来の偉大なギリシャの復活」を掲げる極右政党の幹部は「民族で団結している日本を尊敬している」と語った。移民へのヘイトスピーチや暴力事件を繰り返し、党首ら国会議員が逮捕された党だ。
敵を明確にする主張は、「左」にもある。
国家破綻(はたん)の手前までいったギリシャは4人に1人が失業中。EUなどの巨額支援で強いられた緊縮財政に猛烈な反発が続く。EUに矛先を向ける「急進左翼進歩連合」の人気は高い。欧州議会選では2割を超す得票が見込まれ、首位をうかがう勢いだ。
ヘイトスピーチや、サッカー場での差別的横断幕が問題になった日本と同様、内向きな視線や、「排外」が欧州でも支持を集める。
■欧州議会選では右翼も左翼も議席を伸ばしそうだ(最新の世論調査による)
●右翼やEU懐疑派の政党
★ECR(欧州保守改革グループ)
現在は57議席→39議席の見通し
★EFD(自由と民主主義のヨーロッパ)
現在は31議席→39議席の見通し
★無所属
現在は33議席→99議席の見通し
計 現在は121議席→177議席の見通し
●左翼系
★GUE−NGL(欧州統一左派・北方緑の左派同盟グループ)
現在は35議席→49議席の見通し
http://www.asahi.com/articles/DA3S11131785.html
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