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ウクライナの南部にあるオデッサで、キエフのクーデター政権に反対する住民40名以上が死亡、その大半は避難先の労働組合会館で焼き殺されたようだ。地元のサッカー・チームの「ファン」が行進を始めたのが争乱の発端だが、「ファン」の大半は右派セクターである。
つまり、サッカー・ファンという看板を掲げたネオ・ナチが示威行進を始め、広場にテントを張っていた反クーデター派のグループを襲撃、そこで数人が殺され、襲われた住民は労働組合会館へ逃げ込んだのだが、その会館へ襲撃グループが放火、逃げ道を塞いで焼き殺したようだ。この間、警官は傍観していたという。
右派セクターのようなネオ・ナチはキエフのクーデターで中心的な役割を果たしたが、そうしたグループだけでなく、今年1月にはシリアで戦っていた戦闘員約350名がウクライナへ移動、アメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター)系列のグレイストーンに所属している戦闘員(特殊部隊員)が数百名の単位で入国、その一部はオデッサへ入ったと言われている。
治安機関や軍を掌握し切れていないクーデター政権はこうしたグループを主力とせざるをえないだろう。議会が承認した6万人規模の国家警備軍もメンバーの主体はネオ・ナチのようで、ナチスの「親衛隊」に似た存在。
ところで、オデッサは黒海に面した都市で、1905年に戦艦ポチョムキンの水兵が反乱を起こした場所としても有名。この出来事をテーマにした映画をセルゲイ・エイゼンシュテインが後に作っている。
第2次世界大戦ではドイツ軍やルーマニア軍に占領され、残っていたユダヤ系住民の大半が殺された。現在でも住民の間で反ナチス感情が強く、ネオ・ナチのクーデターで登場したキエフの暫定政権を拒否している。
ところが、そのネオ・ナチを使っているネオコンはアメリカ支配層の親イスラエル派。その系譜をたどると、1925年に「修正主義シオニスト世界連合」を創設したウラジミール・ジャボチンスキーに行き着く。この人物はオデッサの生まれだ。ネオコンの思想的な支柱と言われているレオ・シュトラウスは「ユダヤ系ナチ」とも言われているが、ジャボチンスキーにも当てはまりそうだ。
ジャボチンスキーは第1次世界大戦の際にイギリス軍へ参加した。第2次世界大戦では彼の後継者たちがイギリスと手を組み、対外情報機関のMI6(SIS)や破壊工作機関のSOEから訓練を受けている。その中から生まれたのがシオニストの武装集団ハガナ。後にイスラエル軍の中核になる。
ハガナから1931年に分離したのがイルグン。そのイルグンから1940年に分かれて結成された武装集団がレヒ(通称、スターン・ギャング)。このころ、ジャボチンスキーは死亡、後継指導者のひとりであるベンシオン・ネタニヤフの子どもはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。レヒを率いていたアブラハム・スターンはイタリアのベニト・ムッソリーニと接触し、アドルフ・ヒトラーのドイツにも接近している。この事実を指摘するユダヤ系の人びとは「自虐」だとして激しく攻撃されるらしい。
第2次世界大戦後、イルグンやレヒは破壊活動を続け、1946年にはエルサレムのダビデ王ホテルを爆破、91名を殺害している。そして1948年4月4日、アラブ系住民を追い出すためにシオニストは「ダーレット作戦」を発動、9日未明にイルグンとレヒはデイル・ヤシン村を襲撃、住民を虐殺した。襲撃直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、254名が殺され、そのうち145名が女性で、35名は妊婦だった。この虐殺にハガナは関係していないことになっているのだが、4月6日にハガナの副官がイルグンとレヒの幹部とエルサレムで会い、軍事作戦への協力で合意している。
ここでイスラエル建国時の話を書いたのは、ハガナとイルグン/レヒとの関係がウクライナにおけるNATOとネオ・ナチとの関係に類似しているように思えるからだ。まずキエフ、そして今は東部や南部の諸都市で「汚い仕事」をしているのはネオ・ナチだが、その黒幕はアメリカ/NATO。とりあえずネオ・ナチを暴れさせ、状況次第では切り捨てるつもりだろう。
東部のスラビャンスクやクラマトルスクでも掃討作戦が展開されて多くの死傷者が出たようだ。スラビャンスクでの詳細は不明だが、クラマトルスクでは右派セクターが住民を銃撃、10名を射殺したと伝えられている。IMFから東部や南部を制圧するように圧力をかけられていることもあるのだろうが、これだけ犠牲者が出ると混乱は戦乱になり、戦いは長引く可能性がある。そうなると、EUにとっても深刻な事態だ。そうなることが指摘されていたにもかかわらずアメリカ支配層に追随したEUの指導層。責任が追及されることになるだろう。
国連はウクライナでも無能ぶりをさらけ出している。この国際機関へアメリカ政府が2012年に送り込んだジェフリー・フェルトマン国連事務次長はレバノン駐在米国大使を経て国務次官補に就任した人物で、 中東にアメリカが干渉することは許されるが、イランの干渉は脅威だという立場だ。
フェルトマンがレバノンにいた2007年、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌でアメリカ政府がサウジアラビアやイスラエルと共同でシリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始したと書いている。
- シオニストとナチ党の共生関係にこそ最大の歴史的疑問符(電網木村書店 Web無料公開) 五月晴郎 2014/5/05 10:59:13
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