01. 2014年4月23日 13:34:14
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ウクライナ問題も、今後、数十年は揉めそうだが、欧米日が衰退し続け、世界中のチャレンジャーが力を増しつつある現状では、当然、トラブルは増え続ける http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40504 ロシアによるクリミア併合が日本にもたらす危機 怪しくなってきた日米同盟、日本有事に米国は出動できるのか 2014年04月23日(Wed) 山下 輝男 1 はじめに 新冷戦の再来かとも思われるようなロシアによるクリミア併合への米欧の対応を見ていると、我が国の防衛は果たして大丈夫だろうかと疑念を感じざるを得ない。いざという場合に日米同盟は真に機能するのか、米国政府首脳の度重なる表明にもかかわらず、日本は疑心暗鬼に陥っていると言えよう。 今また、ウクライナ東部を巡る情勢も緊迫しつつあり、予断を許さない。ロシアが力を背景に影響力を行使し現状変更を強要するならば、欧米とロシアの対立は決定的となろう。現時点ではロシアも自制するのだろうと思いたいが・・・。 本稿は、クリミア併合への欧米特に米国の対応などを管見し、日米同盟が実効的に機能するのかどうかを検討し、我が国今後の対応の方向を論じんとするものである。ロシアの脅威については論考外である。 もちろん、日米同盟が機能しないという事態は考えたくもないし、それが単なる杞憂に終わってほしいと願ってはいるが、それでも気になって仕方ない。 4月下旬には、バラク・オバマ米国大統領が国賓として来日し、その際に何をどのように表明するのかが現時点での最大の関心事項であり、国民はその言動を、固唾を呑んで注視している。 2 ロシアのクリミア併合をどう考えるべきか? (1)経緯 中国の防空識別圏は「日本がターゲット」、中国国営紙 朝日を受ける尖閣諸島〔AFPBB News〕 クリミア半島は、旧ソ連時代の1954年、ロシアからウクライナに編入された。ウクライナでは昨秋以降、欧州連合(EU)との統合を進める協定締結を断念したビクトル・ヤヌコービヴッチ親ロシア政権への反発が広がり、今年2月には政権が崩壊した。 ロシア系住民保護を名目にロシア軍がクリミアに展開し、その影響もあり、クリミア自治共和国議会は3月11日ウクライナからの独立を宣言した。 同国最高評議会は、3月16日の住民投票によるロシア編入承認に基づき、セヴァストポリを特別市として包括する独立国「クリミア共和国」として主権を宣言し、ロシアへの編入を求める決議を行った。ロシアは即日、これを承認した。なお、16日の住民投票ではロシア編入への賛成票が95%を超えた。 地図データ ©2014 Basarsoft, Google 利用規約
地図 航空写真 ロシアは、「ブタベスト覚書」を米国のビル・クリントン元大統領と結んでいたが、これを反故にしたのであり、米国の楽観主義を打ち砕いたと言えよう。 米欧は軍事的脅威を背景にした領土略奪であると批判を強め、G8(主要8カ国)からロシアを排除した。 今般のロシアの動きを、クリミア特にセバストポリの戦略的重要性に鑑み、ロシアによる新南下政策だと論じる向きもある。 (2)欧米の対応 国際連合やウクライナ、そして西側諸国などは主権・領土の一体性やウクライナ憲法違反などを理由として、クリミア併合を認めておらず、編入は国際的な支持は得られていない。 欧州連合は3月17日、ロシア政府関係者ら計21人に対し、域内の資産凍結や渡航禁止を発表し、米国も同じく11人に対する資産凍結を発動した。 米国は、ロシアがさらにウクライナの主権を侵害した場合には、欧州各国と共に、エネルギーなどロシアの基幹産業を標的とした新たな制裁を発動させることになると警告した。 ウクライナ東部までをも併合することは、クリミア併合とは比較にならないような重大な事態が出来しよう。それは、欧米の宥和の閾・レベルを明らかに超えてしまうと思われる。 日本政府は翌18日、ロシアの覇権主義、領土拡張主義に対するロシアへの制裁として、ビザ緩和の協議停止などの措置を決めた。外相が同日の閣議後会見で明らかにした。 なお、中国は、各国の主権と領土保全を尊重するとし、対立を激化させる行動は避けるべきだとして米国による制裁強化を暗に批判した。 (3)中国は欧米特に米国の対応を注目 中国は、チベットやウィグルの分離・独立運動に過敏になっており、領土的一体性を損なうクリミアの分離・独立そして併合問題がどのように推移するか、そしてそれが自国の分離・独立運動にどのように波及するのかを注視している。 また東シナ海や南シナ海における中国による核心的利益追求に対して、米国がどのように対応するのかを息を凝らして見守っていると思われる。 住民投票により地域が独立し、他国への編入を可能とするような状況を作為することが可能ならば、これを中国が他国領土を自国に編入する際の格好の先例として悪用するかもしれない。 (4)ロシアのクリミア併合への米・欧の対応の問題点は ●米欧の経済制裁やG8除名にロシアは大して痛痒を感じていないよう見える。EUは天然ガスの3分の1をロシアに依存し、また経済的関係も密になっており、制裁に慎重にならざるを得ないのだろう。グローバル化した世界の難しさである。 ●米国も早々と軍事的オプションを放棄し、対して効果的とも思えぬ制裁しかとり得なかった。ウクライナへの軍事支援にも踏み切っていない。 ●言い過ぎかもしれないが、大した制裁を受けることもなく既成事実化に成功し、結果的にはロシアの逃げ勝ちではないか? このことは、米国の世界の警察官としての地位の喪失を意味し、それは即ち米国の力の劣化の証明であった。 ●安保理でのロシアによるクリミア編入の是非を問う住民投票を無効とする決議もロシアの拒否権によって抹殺され、国連はその無力ぶりを曝け出した。国連改革の要度も高くなった。 ●国連や欧米が有効な対策を打ち出せないうちに事態は進展し、気づいたらクリミアがロシアに併合されていたと言える。欧米の対応が後手に回ったとの憾みは残る。大国間の紛争においては特に後手に回った方が必敗するのは自明だ。 ●欧米諸国のロシアの行動についての見積は狂ったのか? なぜ、至当な判断ができなかったのか? 事前の情報あるいは兆候はなかったのか? 欧米の不手際ではないのだろうか? 欧米情報機関の劣化か? といった問題点や課題があるようだ。この教訓をいかに汲み取るかが重要だ。 3 米国の度々の表明にもかかわらず残る疑念 (1)米国の対中牽制、日本への安保条約適用表明など(詳細は割愛) @4月3日:ラッセル国務次官補、米上院委員会で中国の補覇権拡大を懸念表明 A4月7日:米上院議員、中国の行動に懸念、同盟国支援決議案提出 A4月8日:米国防長官、尖閣防衛義務表明(中国の常国防相との会談時) (2)疑念! クリミア併合事案では、なぜか米国は軍事的オプションを早々に放擲したが、同盟関係にある国に対して、軍事作戦を採り得るのだろうか? 共同防衛の義務を履行するだろうか? ウクライナと日本では立場が確かに違うとはいえ、今の米国にキューバ危機のケネディのように断固たる行動を取るだけの決意があるだろうか? ダニエル・ラッセル国務次官補の3月4日(上記(1)項@)の上院における証言からは、オバマ政権が日米同盟を重視し、安倍晋三政権の集団的自衛権の解禁を歓迎する態度が鮮明ではあるが、その一方で、中国との対決をあくまで避けたいとする対中融和の傾向も顕著だといえるとも分析されている。 融和的な対中国姿勢は、「北東アジア地域での米国の同盟関係(日米同盟や米韓同盟)は、そのいずれもが中国を対象とはしていないことを明確にしたい」との発言に端的に表れている。中国の対日侵攻があったとしても「日米同盟の対象ではない」というのだろうか。 防空識別圏(ADIZ)の設定も、中国による一方的な現状変更であるにもかかわらず、米国の日本に対する発言・対応と中国に対する言動では、微妙な温度差があると感じるのは小生の僻みか? 米中関係を「新型の大国関係」と称し、それを米国に認めさせようという中国首脳特に習近平主席の主張に対して、曖昧に反応していると感じる。中国を怒らせたくないとの思惑が透けて見える。オバマ政権の本音であろうか? これが中国を増長させ、米国の介入はないと誤解させる恐れもあろう。 4 米国の対応の実態・本音はどこにあるのか? (1)国防省と国務省の温度差 米国の国防省と国務省では、対日防衛コミットメントに若干の温度差があるのだろう。米国防総省や米軍関係者の発言などから見ると、軍関係のコミットメントの決意が見える。 一方、国務省は、東アジアがひたすら安定であってほしいと思っており、安倍首相の靖国参拝に失望したと表明したのも、参拝が近隣諸国との間に緊張を齎すからだとの考えから出たものであろう。上述ラッセル国務次官補の発言はそれを如実に示している。 (2)中国に対する秋波、経済的インセンティブ 米中両国間の貿易額は、2013年には5000億米ドルを超え、お互いに第2の貿易パートナーとなり、米国にとっては中国は最大の輸入相手国、中国にとって米国は最大の輸出相手国となっている。米国債の保有高で世界最大であり、海外にある米国債の約4分の1を占めている。米中間の人的往来も400万人を数えると言われる。 伝統的に国際協調を重視する民主党であるオバマ政権のみならず、ジョージ・W・ブッシュ前政権時代以来今日まで、戦略対話や戦略経済対話を重ねており、中国との関係重視は変わっていない。 このような中国に米国が強い対応に出られるのだろうか? (3)米国は世界の警察官を止めたのか、米国は憶病になったのか? 腰の定まらぬ対応ぶりである! シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして、米国は軍事介入をちらつかせたものの、ロシアの拒否もあり、イラク戦争で厭戦気分の広がった米国民の世論をも無視できず、結果的には決断も出来ずという無様な醜態を晒した。 フィリピンのベニグノ・アキノ大統領が、2月4日にニューヨーク・タイムズとのインタビューで、米国の仲介に従って比軍が引き揚げた後もスカロボー礁に居座る中国をヒトラーになぞらえて痛烈に批判した。 チェンバレンの宥和政策を挙げ、宥和政策の危険性を訴えた。米国はどのように感じているのだろうか? 米国は何ら有効な手を打っていないようだが・・・。 米国の毅然たる決断が国際場裡で発揮されていない。腰が定まっていないとも言えよう。威信の低下も著しい。 もっとも断固たる対応を取りたくともできないという国内事情を抱え込んでいる。 米軍の軍事力の低下は目を覆わんばかりである。米国防総省の発表によれば、陸軍兵力を、52万人規模から数年で44万〜45万人規模に削減する。 米軍は10年間で約1兆ドルの軍事費の削減をも求められており、陸軍の削減もその一環である。原子力空母も削減されるかもしれない。いずれにしても米国のプレゼンスが大きく低下するのは必定である。 国民の厭戦気運、軍事費の削減圧力は世界の警察官としての自らの役割を躊躇させるに十分だろう。 (4)定見なき譲歩・妥協の陥穽 仮に、ウクライナ東部までをもロシアが併合するのであれば、欧米とて、今度こそは軍事的オプションを排除しないかもしれないが、ロシアはそれに至らない程度での妥協を要求してくる可能性もある。原理・原則を無視して一端妥協・譲歩すれば次なる妥協・譲歩を迫られる。 クリミアの既成事実化ぐらいまでは容認するというのであれば、口さがない連中の言う岩礁である尖閣諸島ぐらいまでは、全般情勢上上やむを得なかったとして容認するかもしれない。そういう意味においては、定見なき小さな譲歩が、大きな譲歩への第一歩になり得るのである。 5 宥和政策が混乱を招いた史実を忘れるべきではない ドイツのズデーデン併合を認めたミュンヘン会談(1938年9月29日〜30日)は宥和政策の典型とされる。 チェコスロバキアのズデーテン地方帰属問題を解決するためにドイツのミュンヘンにおいて、英国首相ネヴィル・チェンバレンが主導した。 ドイツ系住民が多数を占めていたズデーテンのドイツ帰属を主張したアドルフ・ヒトラーに対して、英・仏政府は、これ以上の領土要求を行わないとの約束をヒトラーと交わす代償としてヒトラーの要求を全面的に認めることになった。第2次世界大戦勃発前の宥和政策の典型とされる。 今回のクリミア併合への米欧の対応を宥和政策と見做すのは飛躍だとの誹りを受けるかもしれないが、効果的な手を打てなかった付けを払わされるかもしれない。 「国際協調主義」という美辞麗句は、宥和政策に堕落しやすい。 6 かかる状況に日本はいかに対応すべきか (1)リップサービスではない具体的な行動で米国の意思を示すべし 日本国民に広がる懸念を払拭するには、今までのような日米安保は確実に履行するなどのリップサービスだけではなく、それを明確に示す具体的な行動で証明立てなければならない。米国の本気度が試される。米国も覚醒すべきだ。 国賓として来日するオバマ大統領が日本国民に対して、その決意のほどを具体的に示してくれると大いに期待している。しかしながら、それには以下に示すような日本の努力が大前提であるのは当然だ。 (2)日本自身の防衛努力 米国が頼みにならないとなれば、日本は自主防衛の道を歩まざるを得ないだろう。核の保有も視野に入れずばなるまい。しかしながら、この道は茨の道である。米国の反発も当然に大きく、日本は東アジアで孤立するかもしれず、いわば下策であろう。 日米同盟の絆をあらゆる分野で強くし、「自らの防衛努力をさらに進めることに如かず」である。 自衛隊と在日米軍の関係は極めて良好である。中国が海軍創設65周年を記念して4月下旬行う国際観艦式(編集部注:中止が決定)への海自の招待なしに怒った(?)米海軍が艦船派遣を見送ったことにも表れていよう。 日本は日米共同のためのさらなる緊密化に努力する必要がある。集団的自衛権も容認されるべきだ。ガイドラインの見直し、辺野古移転の更なる進捗が求められる。 先般決定された25大綱・新中期防の、よりスピード感ある具体化が肝要だ。 米国が対応する前に、既成事実化が進展し、米軍の対応が後手に回ってしまっては元も子もない。少なくとも、米国・米軍の行動発揮を容易にするような防衛努力が不可欠である。機先を制せられるようなことがあってはならない。 (3)日米離反を策するであろう中国への対応 既にその兆候があると思われるが、韓国を取り込むと共に、日米同盟に亀裂を生じさせるために歴史認識などを持ち出して離反を策するものと考えられる。 我が国としては、米国とのより一層の信頼感を醸成する必要がある。政治家のレベルから各界各層のあらゆるレベル、政治、文化、学術などすべての分野における強い絆の構築が必要だ。日本が煮え湯を飲まされた第2のニクソン・ショックは回避されねばならない。 中国が甘く囁きかける「新型の大国関係」という甘言に米国が惑わされることがないように留意する必要がある。 (4)世界標準の共通的価値観を同じくする国々との同盟 東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、豪州そして欧州(EU)との更なる対話と連携は不可欠である。 7 終わりに 具体的かつ実効的な日米同盟の証が得られるかどうかが当面の関心事項ではあるが、中・長期的には、国家百年の大計としての日米同盟をいかに構築するかが肝要である。 米国に求めるだけではなく、自らの国は自らが守るとの気概を基礎とした日本自身の努力が問われる。自助の精神なきところに独立はない。 |