★阿修羅♪ > 国際8 > 512.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
飛幡祐規 パリの窓から〜フランスの市町村選挙から民主主義について考える(レイバーネット日本)
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/512.html
投稿者 gataro 日時 2014 年 4 月 20 日 21:13:21: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.labornetjp.org/image/2009/takahatalogo/

第27回・2014年4月20日掲載

フランスの市町村選挙から民主主義について考える
http://www.labornetjp.org/news/2014/0420pari

http://www.labornetjp.org/news/2014/0420pari

 フランスでは3月の第3、第4日曜に行われた市町村選挙で、与党の社会党が大敗した。社会党にかぎらず、2008年以降1万人以上の市のうち
509が左翼(緑の党を含む)の市長、433が保守の市長だったが、今回の選挙後は左翼349、保守572、極右11という記録的な左翼の敗北である。パ
リとリヨンは左にとどまったが、10万人以上の都市のうちわけも左翼19に対して保守23(これまでは29、13)になった。1912年以来ずっと左翼の
市長を選んできたリモージュ(島崎藤村が滞在したときも!)やパリ郊外のボビニーなど、いくつもの歴史的な左翼の市で保守が勝利したほど、地方政治の地図
が書き換えられた。


 この結果には明らかに、世論調査の支持率が18%しかないオランド大統領と、現政権への不満が表れている。社会党と連合せずに緑の党や左の党が独
立のリストを掲げたところでは、かなり得票できた例もあった(グルノーブルでは、緑の党と左の戦線の統一候補が社会党の前市長を破った)。しかし、国民戦
線など極右の候補が第一次投票で17の市でトップになり、最終的に11の市長に当選するほど躍進し、保守・反動勢力は予想を上回る勝利をおさめた。地方選
挙ではローカルな争点が重要で、必ずしも国政の影響を受けないが、政権にある党が制裁されることも多い(1983年と2001年、そして今回は左翼政府の
もとで保守が勝利、1977年と2008年は保守政府のもとで左翼の勝利)。棄権率は1995年から毎回上昇しているが、今回は第五共和政で最高の
35〜36%に達した。「右も左も同じ、誰がなっても生活はよくならない」という既成政党に対する不信感が高まっているのだ。


http://www.labornetjp.org/news/2014/0420pari


 これまでそうした不満票を集めてきた国民戦線は、南東部や北東部で地盤を固め、国土全域に支持層を広げたように見える。この傾向はすでに2012
年、大統領選挙における党首マリンヌ・ル・ペン(創設者の娘)が第一次投票で17,9%も得票したことにあらわれていた(2012年5月のコラム参照)。
サルコジ大統領時代(2007〜12年)、大統領と保守の一部の政治家が国民戦線の反移民・反イスラム主義と同様の言説を頻繁に使ったため、国民戦線と国
民運動連合(UMP)の境界線は曖昧になり、反イスラム感情や排外主義が高まる結果をよんだ。


 マリンヌ・ル・ペンは「共和国」を強調して二大政党と官僚などエリートの腐敗を摘発するだけでなく、父親とちがって社会政策を強調する左翼的な論
調も取り入れたため、庶民層で人気が上がった。モダンなナショナリズムへの変身によって、「ふつうの」政党として国政参加を狙う国民戦線の新しい幹部は、
極右のイメージを消し、差別的なポピュリズムをモダンな衣で覆うことに成功している(メディアもマリンヌ・ル・ペンを頻繁にとりあげ、国民戦線の言葉づか
いをそのまま用いるなどして、イメージチェンジに加担した)。今のところまだ人材不足で候補者を立てられない地域もあるが、今回当選した市長の平均年齢は
40歳と若い。若い層をひきつけて、国政選挙に向けてますます地盤を固めていく危険性は強く、5月に行われる欧州議会選挙でも高い得票率が予測されてい
る。


http://www.labornetjp.org/news/2014/0420pari


 しかし、政権に対して不満が高まるのも無理はない。経済不振がつづく中、オランド大統領は公約をつぎつぎと放棄あるいは骨抜きにし、付加価値税
(消費税)の増加をはじめ、低所得者や中産階級に負担がかかる緊縮政策を強めている。また、移民に市町村選挙権を与える法案が断念され、警察が身分証
チェックを行った場合に証書を発行する(差別的な乱用を防ぐため)という公約も却下されたことは、高い比率でオランドに投票した移民二世・三世たちの幻滅
を招いた。


 2012年の総選挙、そして今回の市町村選挙でもマグレブ系フランス人がたくさん出馬したが、政党に入らず独自のリストをつくった例も多い。今回
の選挙では、移民系の候補者や団体が保守のリストを支持した市もあった。移民二世、三世が政治に積極的に関わり始めたのは、2007年の大統領選と前回
2008年の市町村選挙以降だ。背景には、市民団体「アセルフACLEFEU」の働きがある。この団体は2005年の晩秋、パリ郊外から全国に広がった若
者たちの「暴動」の後に発足した。「民主主義のしくみの中で郊外の声を届けよう」と全国を回って「陳情書」を集め、選挙人名簿への登録を呼びかけた。失業
率の高い恵まれない郊外地区では棄権率が高く、選挙人の登録をしない若者も多い。社会から排除されているという思いから、政治など自分とは関係ないと感じ
ているのだ。


http://www.labornetjp.org/news/2014/0420pari


 しかし、かつて「政治好き」と言われていたフランスで棄権率が上がった(大統領選挙は例外)のは、この疎外感と政治不信が社会から最も疎外された
人々だけでなく、多くの市民に広がっている状況をあらわしている。大規模な工場閉鎖が騒がれるたびに、政治家は救済を約束するが、結局工場は閉鎖されてし
まう(フロランジュの鐵鋼工場、オルネー・ス−・ボワのプジョーの自動車工場など)。一般市民の賃金は上がらないのに、大企業の社長の報酬が大幅に増した
というニュースが流れる。さらに、タピ事件やカユザック事件など、政治家や高級官僚、判事など共和国の重要な地位にある人たちの収賄や汚職疑惑がつぎつぎ
と暴かれた(これを書いている最中にも、大統領の顧問が過去の不正疑惑をインターネット新聞「メディアパルト」に暴かれて、辞職した)。庶民は生活難や増
税に苦しんでいるのに、地位のある者たちは特権を悪用して暴利を貪る、と市民が怒るのは当然である。こんな状況で、オランド大統領の掲げた「非の打ちどこ
ろのない共和国」を誰が信じられるだろうか? 


 したがって、政治家や指導層、ジャーナリストなども含めた社会のエリートすべてを「システム」として弾劾するポピュリズムが広がる。グローバリ
ゼーションによって貧富の差が増大する中、ヨーロッパ各地で反システムを唱えるポピュリズムが支持を集めている。代表民主制は今、弊害ばかりが目立つ息切
れ状態にあるといえるだろう。市民が真に参加できる民主主義をめざす提案が出てきているが、民主主義の活性化は緊急の課題である。


 さて、オランド政権に幻滅した左派の市民は4月12日、左の戦線や労働組合、市民団体の呼びかけのもと、パリでデモを行った。「緊縮財政政策反
対」を掲げて数万人(警察発表2万5000、主催者10万人)が参加した(写真)。しかし、選挙後ヴァルス首相(前内務大臣)のもとに組まれた新内閣(緑
の党は入閣を拒否した)は、その後さらなる緊縮政策案を発表した。企業の社会保障分担金を減らして競争力を高め、雇用を増やす目的の「責任協定」にかかる
費用をひねり出し、国政赤字を減らすために、公務員の給料や生活援助金の据え置き、社会保険部門における節約など、低所得者や中産階級に再び負担がかかる
政策である。


 当然、労働組合や左の戦線は激しく反発し、社会党議員からも反対意見が出ている。緊縮を行っても失業率が改善されないスペインの例をあげて、一部
の経済学者からも批判がある。EUによる足かせ(財政赤字を国内総生産の3%におさえるなど)や高いユーロを批判すると、これまですぐさま、国民戦線など
極右と同じだと切り捨てられてきたが、経済学者、哲学者、社会学者によるEUのネオリベラリズムに対する興味深い批判も存在する(「愕然とした経済学者の
グループ」、フレデリック・ロルドン、ピエール・ダルドとクリスチャン・ラヴァルなど)。


 ネオリベラリズムは「競争」を原理とし、個人が制約を受けるのではなく「ひとりでに」、最大限に収益をあげようと振る舞うようにしむける「合理
性」である、とダルドとラヴァルは述べる。この原理からは、コミューン(自由都市、自治体)という言葉が生まれたcommun(公共、共同)という概念を
築くことはできない。しかし、人間は「共同体」なしに生きることはできないのではないだろうか?


2014年年4月19日  飛幡祐規(たかはたゆうき)


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2014年4月21日 23:49:09 : PzlJ2OLW4U
上の文章に、このような部分がある。

●オルネー・ス−・ボワのプジョーの自動車工場など

パリ北東にある、巨大なフランス国鉄貨物操車場に隣接しているオルネー・スー・ボワ工場だが、ここは1973年に操業を開始したアンドレ・シトロエン自動車会社の工場である。シトロエン社が1974年4月に倒産し、同年6月にフランス政府の仲介によりプジョーの傘下に入った。1973年操業当初はシトロエンDSを生産した。生産第一号車の写真を、英語圏のシトロエン愛好家サイト、Citroenetから紹介する。

http://www.citroenet.org.uk/passenger-cars/michelin/ds/usine/11.jpg

オルネー・スー・ボワ工場は、当時西欧で最先端の自動車工場であった。1974年にシトロエンDSの後継車種CXが発表されると、そちらの生産に移った。蛇足ながら、当方がオーストラリアで乗っているシトロエンCX2400Pallasは、ここで製造された自動車だ。Youtube動画に、工場内の写真が掲載されているので紹介する。

L'histoire de la Citroën CX
http://www.youtube.com/watch?v=RG5MFpz2swo

生産工程をCitroenetから紹介する。

Citroën's CX factory
http://www.citroenet.org.uk/miscellaneous/cx-factory/autocar.html
http://www.citroenet.org.uk/miscellaneous/cx-factory/cx-usine.html

動画をYoutubeから紹介する。

Produktion des Citroën CX ---Teil1---
http://www.youtube.com/watch?v=gGce5hbJflQ

Produktion des Citroën CX ---Teil2---
http://www.youtube.com/watch?v=otuKi0HmtKE

●親会社プジョーによるブラットフォーム統合やエンジン統合など、合理化が断行されてシトロエンCXの生産は1991年で停止された。しかし後継車種のXMは、シトロエンらしくないと長年シトロエンを乗り継いできた顧客から不評で、全く売れずに1999年を持って生産停止に追い込まれた。それ以降、このオルネー・スー・ボワ工場の操業率は低迷していたと言う。

オルネー・スー・ボワ工場は、シトロエンが社運を賭けて建設した巨大な工場であったが、CX生産手停止以降は生産能力をフルに活かせる車種がなく、採算分岐点を大幅に割り込んでいたと言う。やはりプジョーの経営者が、シトロエンの独自性を無視して無理やりな技術面の統合をしたツケが廻ってきたのである。我々のような、寝ても起きてもシトロエンのような愛好家でも、今のプジョー化したシトロエンには魅力を感じないし、買う気にならない。

シトロエンの悲劇だが、日産をダメにしつつあるルノーのゴーンも同じである。本当に自動車が好きだった、シトロエン社の技術者だったアンドレ・ルフェーブル氏やデザイナーのフラミニオ・ベルトーニ氏と違い、官僚ならぬ「民僚」が支配する自動車メーカーである、今のフランスのルノーやプジョーに未来はないと断言していい。


02. 2014年4月23日 22:27:55 : PzlJ2OLW4U
01です。皆様はご存知か分かりませんが、こちらオーストラリア・ニュージーランド向けに日本時間で朝5時から6時まで短波9525kHzで日本語放送が行われています。国内向けラジオ第一放送の中継を行っていますが、5時55分から5分間、日本外務省の出している海外安全情報が放送されています。本日4月23日(水)は、ウクライナとフランスの情報が放送されていました。

フランスではスリや置き引きが多く、とにかく治安が悪い。3月に日本大使館に届出があった事件が58件あったそうです。地下鉄の利用には気をつけてくださいと。このような犯罪の多さは、社会が病んでいるからです。まだオーストラリアの方がマシか ?


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際8掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧