02. 2014年4月01日 12:58:31
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JBpress>海外>USA [USA] 世界を唖然とさせたオバマ大統領の核攻撃発言 地球的視点のない日本メディアは韓国大統領との会談ばかり報道 2014年03月31日(Mon) 堀田 佳男 日本では大きく報道されていないが、オランダのハーグで先週、米バラク・オバマ大統領が周囲を驚嘆させる発言をした。それにより、米国内では新たなテロ攻撃への警戒感が増したほどだ。 第3回核安全保障サミットでのことだ。日本のメディアは、オバマ氏をはさんで安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の3者会談に主な関心を寄せた。ただ、その場で冷え込んだ日韓関係が修復されるわけもなく、両国にとっては象徴的な会談に終わった。 ロシアは米国の脅威とはなり得ない 米政府、NSAによる大規模通話データ収集の終了計画を明らかに ハーグでの核安全保障サミットに出席したオバマ大統領〔AFPBB News〕 本来、同サミットの焦点は核テロ対策であり、今回はロシアのクリミア編入問題が重要テーマだった。その席上、オバマ氏は次のように述べて物議を醸した。 「ロシアは隣国に脅威を与える特定地域の強国です。ただそれは本当の強さとは呼べず、弱点の裏返しとも言えるのです。ましてや米国にとって、ロシアは脅威と呼べるだけの国ではありません。マンハッタンが(テロリストに)核攻撃される可能性の方が今の米国にとっては脅威なのです」 オフレコ発言ではない。オバマ氏が自らの言葉で公式に語った内容だ。マンハッタンという地名まで出している。 そこまで踏み込むと、米諜報機関がニューヨークへのテロ攻撃の情報をつかんでいるかに思える。だがすぐに、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のケイトリン・ヘイデン報道官が、「機密情報をもとにした話ではなかった」と大統領の言説には裏が取れていないと述べた。 しかし2001年9月11日以来、米国内には国際テロ組織によるニューヨーク再攻撃の脅威論が消えていない。しかもオバマ大統領は丁寧にも、「核兵器が爆発(nuclear weapon going off)」という表現まで使っている。 報道官は米諜報機関のデータではないと述べるが、中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)などが入手する通信内容にはそうしたくだりがあっても不思議ではない。問題はその信憑性である。 国際テロ組織アルカイダの元首領ウサマ・ビンラディンが2011年5月に殺害された後、アルカイダの脅威は確かに低下したが、米国の大都市、特にニューヨークがテロ攻撃の脅威にさらされていることに変わりはない。 発言に敏感に反応したのは地元ニューヨークのタブロイド紙、ニューヨーク・デイリーニュースとニューヨーク・ポストだった。 デイリーニュース紙は1面で、核爆弾が爆発した時のキノコ雲の写真を載せ、「ニューヨーク市で核爆弾ですよね、大統領?」と問うた。 米国最大の関心事はマンハッタンへのテロ 9.11から10年、いまだ根強い「米政府陰謀説」 2機の旅客機が衝突した世界貿易センタービル(2001年9月11日)〔AFPBB News〕 ポスト紙は「オバマ大統領の最大の憂慮はマンハッタン核攻撃」というタイトルを打った。タブロイド紙らしく、おどろおどろしい紙面づくりで、読者の関心を煽った。 しかしニューヨーク市警察はホワイトハウス同様、冷静にオバマ大統領の発言を否定してみせた。現在、核兵器によるテロ攻撃の予告や脅威は察知していないという。 仮に核テロの予兆をつかんでいたとしても、政府は簡単に発表するわけにはいかない。人口800万強のニューヨーク市で、核兵器のテロ攻撃の情報を発表したらパニックは避けられない。それが正確であれ不正確であれ、市民に与えるインパクトはとてつもなく大きい。 ただニューヨークが核テロに警戒の手を緩めるべきでないことは、ビル・デブラシオ市長が十分に了解している。大統領の「核攻撃の可能性」は冗談と受け流せないとし、声明を出した。 「オバマ大統領の発言は、ニューヨークが相変わらずテロ攻撃の最初の標的になっていることを再認識させるものです。常に脅威に直面している事実を厳粛に受け止めて、今後も警戒に努めます」 核テロ対策に尽力することに異論を挟む人はいないだろう。すべての国際テロ組織が活動を停止する可能性はないと言わざるを得ない以上、政府が防止策に努めるのは当然である。 ハーグでの核安全保障サミットを前に、首都ワシントンで世界核安全保障政策サミットが開かれていた。その席で、ハーバード大学JFケネディ行政大学院科学・国際関係ベルファー・センターのビル・トビー上級研究員は核テロの脅威について述べている。 「ビンラディンが殺害されて、確かにアルカイダの脅威は低下しています。けれども残存するアルカイダのテロリストたちによる核兵器入手の野望は依然として衰えていません。同時に、核兵器開発の基本的技術は70年前にできており、世界中のさまざまなルートから入手が可能になっています」 小型核兵器はテロリストも入手可能 日米韓首脳会談、オバマ米大統領の仲介で実現 日米韓首脳会談で日本のメディアは大騒ぎだったが・・・〔AFPBB News〕 その会合で話し合われた脅威は、小型核兵器が売られている事実だ。 しかも1個や2個ではない。国際テロ組織が入手できる素地がすでに作られており、闇市場では告知が出されてさえいるという。核兵器の安全性が確実に保たれているわけではないため、危険度は高い。 つまり実際の核テロの脅威はゼロに近づくどころか、暴発する可能性をはらんだままなのだ。 核保有国による核兵器の保有システムや安全性確保には国際的なルールができていないと、同サミットに参加したサム・ナム元上院議員は述べている。タイム誌も今月、「将来、核兵器による攻撃がある可能性は30%から50%の確率で起こりうると専門家が推測している」と書いてもいる。 オバマ大統領の発言を契機に、こうした警戒論をメディアが伝えることには意義がある。だがむやみに核テロ攻撃の脅威を煽ることは慎重でなくてはいけない。 少なくとも米ロ両国による核兵器管理は、前回の核安全保障サミット以降も向上しているとの報告が出ている。それによって、米連邦政府は核テロ対策の予算を減らしてさえいる。 核テロに対する警戒は解くべきでないが、冒頭のオバマ発言によって、オバマ大統領は米国内からの反発も招いている。ワシントン・ポスト紙コラムニストのジェニファー・ルービン氏が書いた。 「オバマ氏はあの発言でウラジーミル・プーチン大統領を侮辱した。ロシアが単なる特定地域の強国とはいったいどういうことか。それは自分が最強国のリーダーと定義したいからなのではないか。自身への慰めでしかない。ニューヨークが核テロの脅威に晒されているというのは、直近の課題に目を背けているからにほかならない」 この論評が当を得ているのであれば、オバマ大統領は米メディアと国民を翻弄したことになる。 ホワイトハウス報道官の否定が本当であるのか、それともオバマ氏が口にした核テロ脅威論に現実性があり、計算したうえでの発言だったのか、大統領本人しか知り得ないことかもしれない。 |