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(回答先: G8からG7に逆戻り、西側の保守化が進行:ロシア追放もポーズだけだが、G9(G8+中国)への改編契機となる可能性 投稿者 あっしら 日時 2014 年 3 月 27 日 14:24:08)
NHK解説委員のブログにある「ロシア軍に入隊を希望するウクライナ兵も多くいた」については、ロシア側の報道によると、クリミア駐屯の1万9千人のウクライナ兵のうち7千人がウクライナに忠誠を誓い、残る1万2千人がロシアに忠誠を誓いロシア軍に編入されたという。
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時論公論 「G8"崩壊"どうなる国際秩序」2014年03月26日 (水) 午前0時〜
高橋 弘行 解説委員
ウクライナ情勢をめぐって、アメリカや日本など先進7カ国の首脳が、ロシアのG8・主要国首脳会議への参加を停止すると発表しました。しかしこれに対してロシアは今のところ動じる様子を見せていません。今夜はG7首脳会議を受けて今後の国際社会の展開について考えます。
(ハーグ宣言)
核セキュリティサミットの会場となったオランダのハーグで、G7がまとめた声明は、ウクライナのクリミア半島を、自国に編入させようというロシアを国際的に孤立させるためとして、
○まず今年6月にロシアが主催するソチのG8に、G7メンバーは参加せず、代わりに自分たちだけでブリュッセルで同じ時期に会合を開くとしました。その上で、
○G8で“意味のある議論を行う環境に戻るまで”、という言い方でロシアのG8参加を停止しました。
○そして、“今後ロシアが現状をエスカレートさせる場合”制裁を含む行動を強化する用意があるとも述べ、アメリカが準備しているロシア企業への幅広い経済制裁・金融制裁が行われる可能性に触れ、ロシア側に警告しています。
宣言作成にあたって主導的な役割を果たしたアメリカ政府は今回の宣言を、「ロシアの孤立化を進める、非常に力強い声明」と高く評価していますが、やはり核セキュリティサミットに出席するためハーグ入りしていた当のロシア・ラブロフ外相は、
『G8は非公式なクラブ 会員証が発行されるでもない 追放の規定もない』
『G8の形式にこだわりなく 開かれなくてもかまわない』と述べました。
要するに、痛くも痒くもない、という姿勢を強調しています。また、G7側も、ロシアへの対決姿勢に差があることから、7カ国で合意できた最大のものが、G8からの締め出しだった、という事情もあるようです。
(進むクリミアのロシア化)
一方でクリミアはこうしている間にも着々とロシアへの編入のための措置が進んでいます。
▼まずウクライナ軍のクリミアからの撤退が進み、大きな抵抗もなくほぼ完了しました。
ロシア軍に入隊を希望するウクライナ兵も多くいたといわれています。
▼またクリミアでのロシアの通貨ルーブルの使用も始まるなどクリミアの「ロシア化」は急速に既成事実化しています。
ロシアの強気の姿勢もこうした状況が背景にあるとみられます。
さて、今回事実上の崩壊の危機を迎えているG8は、そもそもどのような経緯で生まれたのでしょうか。
もともとG8は当初、6か国から始まりました。西側のオイルショック後の不況をどうしようかという経済サミットの色合いが濃いものでした。(日米英仏伊西独)
その後、G7となり、冷戦終結後、ソビエト連邦が崩壊したのが1991年。
その後、ロシアをG7に取り込もうという動きが出て会議に少しずつ参加、2003年には完全参加を果たします。
ただ、実は西側諸国はこの時、こうしたロシアの経済的な取り込みだけではなく、旧東側の国々を、NATO・北大西洋条約機構という、西側の軍事機構に入れようという動きにもつながります。
いわゆる、NATOの東方拡大です。
98年にはポーランド、ハンガリー、チェコの3か国が手初めでNATO に入ります。
アメリカの専門家の中には、そこうした、西側の長年の取り込みが、今回のウクライナ問題で、ロシアがなぜこんなに強硬なのかの背景だという指摘もあります。つまり自分の領域に手を突っ込まれ続けたことへのロシアの対抗策だというわけです。
もちろん、だからと言って、今回のロシアの行為は国際法上、正当化されるものではありませんが、結果として迎えることになったG8体制の危機が意味するものはなんでしょうか。
今回の対立がロシア対欧米、という構図から、新たな冷戦の始まり、という指摘も一部にはあります。しかしかつてのアメリカとソビエト連邦時代の冷戦のように、経済が完全にブロック化されていた時代は終わり、世界経済の相互依存が、おそらく歴史上もっとも深まっている現代では、むしろ冷戦時代とは全く違う、新たな段階、複雑な多極化の時代に入ったことが、今回改めて示されたということではないでしょうか。
実際にウクライナを例にとっても、今後アメリカがロシアへの制裁を強めれば、それはロシアと経済的つながりの深いヨーロッパへの打撃にもなります。またこれからウクライナへの金融支援が欧米から行われれば、多額のウクライナ国債を買いこんでいるロシアも助けることにつながります。つまり制裁ひとつとっても、単純に行使できる状況ではなくなっているということです。
また、多極化を象徴する国として、今回G8の外ながら、中国も、その対応が大きな注目を集めました。
やはりハーグを訪れている習近平国家主席に対し、オバマ大統領は首脳会談で、経済制裁への協力を強く求めました。これに対して習主席は、「事態を悪化させる行動はどの国もとるべきではない」と慎重姿勢を崩しませんでした。
中国の立場に立てば、クリミアの動きは国家の分離独立の動きであり、チベットやウイグルなどの民主化の動きとは連動させたくない思いがある一方、あくまで制裁に慎重な姿勢を取ることで、ロシアを完全には孤立化させないという、いわばロシアに恩を売る戦略をとっていると言えます。
しかし、こうした慎重姿勢の中国に対しアメリカは、「ロシアへの積極的な支持を控えている」としてあえて批判を控える姿勢を見せています。アメリカとしては、今中国と対立するよりも、国際社会の足並みがそろっている部分を何とか強調したかったようです。ここにも、今回のG7側の対応が、ロシアのG8参加停止という一見厳しい姿勢を見せながらも、実質は現状を追認し、これ以上のロシアの軍事的拡大を阻止することで精いっぱい、という状況であることを如実に物語っています。
こうしたウクライナをめぐる今回の状況は、私たち日本に何を見せているのでしょう。
なによりもアメリカはいまだに、アフガニスタン、イラクという2つの大きな戦争のトラウマを引きずっている状況で、オバマ大統領は、ウクライナ問題においても軍事的オプションをはじめから外す形でひたすら外交的な努力を重ねているという点です。
そしてこれは言わずもがなですが、国連は紛争解決のための安全保障理事会が、以前からこうした問題では大国の拒否権などで全くの機能不全です。
こうした状況の中で、冷戦から20数年がたった現在の世界は、一部の経済的・軍事的に強い国が、それぞれの地域での支配を広げようとする、強国による多極化の時代に入ってきたことを今回のウクライナ情勢は改めて示しています。
日本は今回G7のメンバーとして、各国と足並みをそろえた対応をとりました。
安倍総理大臣は、先ほどハーグで行われた記者会見で、「力を背景とした現状の変更は断じて許してはならない」と力説しましたが、今後日本は、G7の中に埋没するだけではなく、例えば米ロ、あるいはヨーロッパとロシアの間を中立的に取り持って独自の外交を展開するなど、真の意味での主要国としての存在感を発揮することが、重要になってくるかもしれません。
紛争を力の論理で解決しようとする。そうした動きが、今後ウクライナ以外で、あるいは極東で、万が一にも起きることのないように、日本の努力がますます必要になっていることを、ウクライナ情勢は教えてくれている気もします。
(高橋弘行 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/183880.html
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