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ウクライナ緊迫 プーチンの本音と日本と市場への影響:豊島逸夫氏:コラムからはプーチン氏の本音は読み取れないが...
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/163.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 3 月 03 日 17:42:51: Mo7ApAlflbQ6s
 


豊島逸夫の金のつぶやき[日経新聞]
ウクライナ緊迫 プーチンの本音と日本と市場への影響
2014/3/3 8:39

 クリミア半島とウクライナ本土は、入り組んだ「腐海」の中の「地峡」により陸続きで結ばれる。「腐海」とは、水深1―3メートル程度の干潟で、黒海の地中海性気候ゆえ、夏になると海水が熱せられ異臭を放つ現象による呼称だ。天然の緩衝帯ともいえよう。

 その半島は、1954年に当時のフルシチョフ首相から「両国の友情のしるし」としてウクライナに譲渡された。現在は自治共和国となっているがロシア系人民が多い。プーチンの視点では、実質的にロシアの「飛び地」なのかもしれない。半島先端にはロシアがウクライナから「租借」したセバストポリ軍港があり、黒海艦隊の基地になっている。

 このクリミア半島、そしてウクライナでの出来事は日本の歴史にも影響を与えてきた。チェルノブイリはウクライナ北部に位置する。同国外相が訪日したとき「被爆体験を共有する両国」と述べている(なお、ソ連崩壊後は、世界第3位の核保有国であったが、1996年までに、自主放棄またはロシアへ移管した)。

 さらに歴史とたどると、ロシアの南下政策に、フランス・イギリス・オスマン帝国の同盟軍が対峙したクリミア戦争(1853年―1856年)の例がある。当時、日本との開国交渉のため長崎に来日中だったプチャーチン海軍中将が、対英仏とのバランス・オブ・パワーを背景に、1855年に日露和親条約の締結にこぎつけている。
 欧州列強は、対ロ戦略に没頭しているタイミングを計ったかのように、米国がペリー提督を日本に派遣した。また、クリミア半島南端のヤルタは、米ソ英首脳が第2次世界大戦後の秩序を決めたヤルタ会談で歴史上に名を残す。ここで、千島列島のソ連への引き渡しが決められ(ヤルタ協定)、今日に至る北方領土問題の端緒となった。

そして、2014年。

 日本の首相は、ロシアの大統領とはファーストネームで呼びあう親密な関係を構築中だ。一方、米国の大統領とは、隙間風が目立つ。ソチ・オリンピックには他国首脳が不参加の中、安倍首相は友情の証しとして駆けつけた。同じソチで予定されている主要8カ国(G8)首脳会議の準備会合にも、オバマ大統領は参加見合わせの方針だ。ここでも安倍首相が参加を決行すれば、日米の亀裂にほくそえむのは中国であろう。安倍首相も、日中の「不測の事態」は想定しているだろうが、ウクライナ問題で踏み絵を踏むとは「想定外」であったろう。

 一方、プーチン大統領は、まず相手の国に不安感を与え、その国の政府が強硬な対応措置を採ったところで、「混乱の収拾」という大義名分を掲げて動くのが常とう手段だ。プーチン大統領得意の柔道に例えれば、ジリジリ圧力をかけ相手方がたまらず動いたところで体勢を崩し、寝技に持ち込む試合戦略である。トラブルメーカーとなり、ピース(平和)メーカーとして登場するともいえる。

 今回は、ウクライナの親欧米暫定政権が、公用語からロシア語を外す動きや、過激な愛国主義者を警備隊幹部に登用するなどの人事は、プーチン大統領にとっては本格的軍事介入の口実になりうる。2008年のグルジア紛争のときは、当時のサーカシビリ大統領が、国内親ロ派地域のロシア系住民を弾圧したところで、「親ロ地域住民救済」がロシア軍事介入の格好の口実になった。

 なお、シリア問題に際しては、オバマ大統領が軍事介入の決断を下した直後に、親ロのアサド大統領を説得してロシア主導の外交解決という「寝技」にもちこみ、オバマ大統領の鼻をあかせた。今回も、クリミアの空港や基地に、「国籍不明」のロシア語を話す部隊を投入して、「実効支配」を狙いつつ、自ら「宣戦布告」はせず、キエフの親欧米暫定政権を揺さぶっている。現地のロシア系住民がウクライナ旗を外しロシア旗を掲げるデモの映像も、挑発的行動にみえる。

 欧米側は、各国に温度差はあるが、非難の声明を出している。特に、ケリー国務長官は侵略を意味するinvasionあるいはaggressionという強い単語を用いているが、米国の軍事介入は問題外で、経済制裁といっても特に有効な策はない。寝技に持ち込まれると、プーチン大統領のペースである。
 とはいえ、プーチン大統領も必死である。欧州との緩衝地域であるウクライナがEUと結び、ロシア圏から「駆け落ち」することだけは、断固許しがたい。裏庭に北大西洋条約機構(NATO)の影が忍び寄ることは、直接的脅威である。しかし、ウクライナの主権を侵害する行為は国際法上、許されるはずもない。ポーランドや中国でさえ、対ロ不信感を強めるだろう。国際的孤立を招くリスクは明らかである。プーチン大統領は、振りあげた拳の落としどころを模索中の様相だ。

 さて、市場の反応はどうか。2月28日のニューヨーク株式市場では、午前中は消費者態度指数の確報値が上方修正されるなど消費関連指数の改善を好感して、高値を維持していた。しかし、午後1時45分ごろに、ダウ指数がこの日の高値16398ドルをつけた直後から、「ウクライナ政府がロシアの挑発的行動を非難」などの情報が相次いで流れ、ムードは一変。午後3時10分ごろには、この日の安値16226ドルまで値を消した。一触即発の状況では、週越えのポジションをキャリーはできない。手じまいの売りや、プット・オプション購入によるヘッジが相次いだ。

 外為市場では、一時102円60銭台まで円安に振れていたが、午後に入り、ウクライナ情勢に反応して一時は101円60銭台まで円高が進行した。2月28日本欄では「イエレン議長証言とウクライナの共振で100円割れも」と題する原稿を書いた。「あくまで中期的な見方だが」と断ったうえで「ウクライナへのロシア軍事介入」とイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言から推測されるドル円金利差縮小が同時進行すれば100円割れも視野に入るとした。 しかし、週末に急速な展開のスピードは、筆者を含めほとんどの市場関係者にとってサプライズである。「ロシア軍事介入」など「仮説」扱いであったのが、今や、切迫感が増している。「あくまで中期的」などと悠長なことはいっていられない状況だ。

 黒海(black sea)がブラック・スワン化してきた。ウクライナ一国の経済規模は小さい。しかし、歴史の舞台となってきたクリミア半島の緊張化は、欧米の市場心理を揺さぶる。「米ソ冷戦以来、最大級の危機への発展」のテールリスクを絵空事と切り捨てることができない。週末の欧米メディアもウクライナ関連報道一色だ。
 市場は7日の米雇用統計待ちだが、それまでは、ウクライナ地政学的要因のめまぐるしい展開にふりまわされる地合いになりそうだ。欧米市場が最も敏感に反応するが、アジア市場でも、全人代を控えた中国昆明での無差別殺傷事件とならび、ふたつの要因が入れ替わり市場のセンチメントに影響を与える状況は避けられまい。

http://www.nikkei.com/money/gold/toshimagold.aspx?g=DGXNMSFK0300B_03032014000000


 

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