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「地下鉄水没」の現実味 豪雨が首都圏を襲っていたら…〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150923-00000000-sasahi-soci
週刊朝日 2015年10月2日号
関東・東北地方を突如襲った記録的豪雨。10日に鬼怒川の堤防が決壊し、茨城、栃木、宮城の3県で計8人の死者を出す惨事となった。
今回、被害をもたらしたのは、南北500キロ、東西200キロという広範囲で、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」だ。長時間にわたって大雨を降らせた。これは首都圏の住人にとってもひとごとではない、と指摘するのは、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏だ。
「今回の雲がもう少し南にずれていたら、首都圏も被害に遭っていたかもしれない。昨今の気候の変動で、昔では考えられなかった大水害が、高い確率で起きるようになってきている」
実際、内閣府の中央防災会議が2010年にまとめた報告書「首都圏水没」には、恐るべきシミュレーションが示されている。首都圏を流れる利根川、江戸川、荒川の3川の堤防がすべて決壊した場合、浸水区域内人口は実に約663万人。浸水深は最大5メートル以上で、死者数は利根川氾濫(はんらん)の場合、最大で約6300人、荒川氾濫では、墨田区、江東区などを中心に最大約3500人にのぼると想定されているのだ。
荒川の堤防が決壊すると、周辺の家屋が流されるのに加え、都心ならではの被害が想定される。前出の渡辺氏がこう語る。
「荒川が氾濫すると、地下鉄などのトンネルを伝って銀座など都心にも水があふれることになります。駅地下の商店街も水没するでしょう。また、荒川沿いに多いタワーマンションは下層階が浸水すると、エレベーターが動かなくなる。水が引くまで1週間ほど、孤立する可能性があります」
住民の避難は、難航を極めそうだ。群馬大学大学院教授の片田敏孝氏(災害社会工学)がこう指摘する。
「東京都内の数百万人が一斉に避難を始めたら、ただちに大渋滞が発生し、道路交通はマヒ。そこに水が来たら、ますます被害が拡大する。本来は避難の時間を地域ごとにずらしたり、避難場所を分散させたりといった広域的な避難計画が必要なのですが、現在の制度は各市区町村の首長が防災に責任を持つことになっていて、統一的な指揮が機能しないのです」
大渋滞の車列を濁流が押し流す悪夢が、現実のものとなりかねない。こうなると、自分の身は自分で守るしかない。
「遠くに逃げようとすると、かえって危険。近くの鉄筋コンクリートの高い建物に避難したほうがいい。孤立に備え、1週間分の水と食料を普段から備蓄しておくべきです」(前出の渡辺氏)
「大雨が来る前の早い段階なら、避難の選択肢もあります。自治体の『避難勧告』などをあてにして待つのではなく、自分で気象情報を集めて判断し、早めに行動を起こすべきです」(前出の片田氏)
自然の脅威が首都をものみこむ時代が、すぐそこまで来ている。
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