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静岡県側から見た富士山。大きなくぼみが「宝永火口」、その右側にある小山が「宝永山」(2014年に旅客機より筆者撮影)
富士山、2001年に活発化するも「いまは平常」 富士山科学研究所・火山学者の声を聞く(前篇)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44082
2015.6.19 堀川 晃菜 JBpress
6月16日、浅間山が小噴火したとのニュースで、お昼のワイドショーは持ちきりだ。昼食時にビジネスマン同士の会話を聞いていると、「次はいよいよ富士山か」と呟く人もいれば、「まだ大丈夫だろ」と楽観的な人もいた。
2014年9月に御嶽山が噴火、2015年5月には箱根山の噴火警戒レベルが2に引き上げられ、口永良部島の新岳が噴火。連日のように、火山活動に関するニュースが飛び交う。これだけ火山活動のニュースを見聞きすれば、「これも、あれも関係があるのでは」と過敏になる人もいるだろう。
日本の地下でいま、何が起こっているのか? 地震との噴火の関係は? 富士山は大丈夫なのか? 富士山のことは、どこまで分かっているのか・・・。
富士山を多角的に研究している山梨県富士山科学研究所 火山防災研究部部長の内山高主幹研究員と常松佳恵研究員の2人に話を聞いた。
地震波のモニターを確認する内山主幹研究員(右)と常松研究員
■富士山はいま
火山防災研究部が重点的に行っている研究が「富士山火山防災のための火山学的研究 ―噴火履歴とそのシミュレーション」である。火山噴火の兆候を捉えるべく、様々な事象をモニタリングしている。その1つが、低周波地震の観測だ。
最近よく耳にする「火山性微動」は、P波とS波が明瞭に見られる「地震」とは区別される。火山性微動のうち、低周波地震(長周期地震)は、マグマや熱水の動きに関連があると考えられており、火山活動の状況を知る手がかりの1つとなっている。低周波地震は、1秒前後のゆっくりとした周期を特徴とし、連発・群発する傾向が高い。
富士山の周辺では、富士山科学研究所のほか、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、気象庁が地震計、広帯域地震計(測定可能な周波数の範囲が広く、微弱な地震も捉える)、傾斜計、GPS、温度計などの計測器を設置している。
画面に表示される地震波形のタイムラグは3〜10秒ほどで、ほぼリアルタイムで観測され、長期的な推移が記録される。
通常、観測される低周波地震の数は、1カ月間で多くても50回程度だが、2000年末〜2001年にかけては、月に100〜200回ほど観測され、その時は「富士山が活発化した状態」だったという。ただし現在は、通常状態の頻度だそうだ。各種観測データは、防災科学技術研究所 火山活動連続観測網 VIVA ver.2で見ることができる。
また、地下水の変動も重要な手がかりになるという。「1986年の三原山(伊豆大島)、2000年の有珠山(北海道)の噴火の前には、井戸が涸れるといった水位の変化や、pHなど水質の変化があったことが分かっています。地下水は、地震だけでなく、火山を知るための手がかりにもなります。本当は温泉を調べられたら、一番良いのですが・・・」と内山氏。
山が伸縮すれば、入れ物(山)の大きさに合わせて水の水位も変動する。さらに、高温のガスが生じていれば水温の上昇や、ガスの成分によってはpHや電気伝導度といった水質に変化が見られる。ガスが生じても、山体が膨張するような表立った変化が見られないこともある。そのため、地下水はそれより先に兆候をつかむ手がかりとなるのだ。
予算の都合上、低周波地震のように常時モニタリングすることはできていないが、1日1回、地下水の水位・水温・水質等のデータが送られてくるという。pHが急激に酸性もしくはアルカリ性に傾いたり、水温が急激に上昇したりした場合は、閾値を超えると警報が鳴るようになっている。設置して10年ほど経過するが、これまでに警報が鳴ったことはないという。
2011年3月11日の東日本大震災から、現在までの富士山の状況を聞いた。
「東北地方太平洋沖地震の4日後、3月15日の午後10時半頃に、静岡県東部(富士山の南西部付近)でマグニチュード6.4の地震がありました。この時は、富士山の直下で深さも15キロと浅かったので、富士山が崩れたか噴火したのではないかと心配しました。しかし、その後は地震活動も低下し、噴火の兆候も見られていません。低周波地震の頻度や、地下水の状況などから見ても、今のところ平常状態と言えると思います」と内田氏は話す。
■地震と噴火、プレートとの関係
地球の表面は十数枚のプレートで覆われている。日本列島は、そのうち4つのプレートの上に乗っている。「糸魚川―静岡構造線」と呼ばれるプレートの境界では、北米プレートとユーラシアプレートが押し合っている。日本海溝、相模トラフ、南海トラフ(トラフとは海溝よりも浅く、幅広い海底の溝を指す)では、一方のプレートがもう一方の下に沈み込んでいる。
日本付近のプレートの模式図(気象庁ホームページより)
こうしたプレートテクトニクスの文脈で言えば、地震と火山は当然、無関係ではない。沈み込み帯でマグマが作られる1つの理由は、地殻部分が沈み込む際に、海水などの水分を含んで沈むためだ。この水が絞り出されて、岩石が溶けやすくなり、マグマができる。こうして、プレートの沈み込み帯でマグマができると、地殻内でマグマが溜まり、地上に現れると噴火となる。巨大な地震が、この「マグマ溜まり」に影響すると、噴火を誘発すると考えられている。
ただし、「地震によって直接的に噴火に至るかというと、その明瞭なメカニズムは、まだよく分かっていません」と常松氏は言う。
富士山では、江戸時代中期、1707(宝永4)年に起きた「宝永大噴火」が、直近かつ最大の噴火となっている。その火山灰は江戸にまで及んだ。この時は、噴火の49日前に推定マグニチュード8.6の宝永地震が起きていた。
さらに時代を遡ると、平安時代初期の864〜866(貞観6〜8)年、「貞観大噴火」が起き、その後、869(貞観11)年に、推定マグニチュード8以上の大地震が起きた。同研究所所長の藤井敏嗣氏(火山噴火予知連絡会会長、東京大学名誉教授)は「現在の状況は貞観地震の時に似ている」との見方を示している。
これについて、内山氏は次のように話す。
「貞観地震のときは、数年前から現在の新潟にあたる場所や、内陸部でいくつかの地震が起こっていて、その後に、大噴火と大地震(貞観地震)が起こりました。近年は、2011年に東北沖、2007年に中越沖、2004年に中越といったように、いくつか同じ場所で地震が続いている点と、活断層の周期が1000年スパンであることを含めて考えると“似たような状況”とも見られます」
直近10年間で震度6弱以上の地震(気象庁・震度データベース検索より)
■もし富士山が噴火したら?
日本最大の玄武岩質成層火山である富士山。安山岩質の成層火山が多い日本では、やや珍しい火山だ。
基本的には、玄武岩はサラサラしていて、流れやすいマグマで、粘性が低く、ガスが抜けやすいため爆発的な噴火は起こりにくいという。一方で、溶岩流のスピードは速くなる。
ただし、宝永大噴火がそうだったように、1回の噴火で、玄武岩だけでなく、安山岩が出ることもある。富士山では、火山灰を降らすような爆発的な噴火、溶岩流を流すような噴火など、様々なタイプの噴火が起こりうるという。
また、常松氏が一番懸念しているのは「融雪型火山泥流」だという。富士山に雪が積もっている季節に噴火すれば、とたんに雪は溶け、雪崩が起こり、土石流を引き起こす可能性が高い。
かといって、雪のない夏の時期なら心配無用というわけではない。夏には、多くの観光客が登山しているため、人災のリスクが高まる。
どのような噴火が、どんな気象条件で、どれほどの人が近くにいるときに起こるのか。その極めて複雑な状況で、仮定が及ばないところに自然現象を捉える難しさがある。後編では「なぜ富士山の噴火とその被害の予測が難しいのか」といった点から、観測とシミュレーションの重要性について紹介したい。
【取材協力・参考】
山梨県富士山科学研究所(同研究所の公式Facebookでは、多岐にわたる富士山研究の活動をタイムリーに紹介している)
http://www.mfri.pref.yamanashi.jp/index.html
https://www.facebook.com/Mt.FUJI.research.institute
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