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戦後最大の被害を出した昨年の御嶽山噴火に続き、今年は蔵王山や箱根山などにも噴火の可能性が示される「火山列島」に、一層の戦略が求められている。(写真:毎日新聞社/アフロ)
口永良部島噴火、なぜ予知できなかったのか 火山列島ニッポンに必要な「戦略」
http://toyokeizai.net/articles/-/71527
2015年05月29日 関口 威人 :ジャーナリスト 東洋経済
鹿児島県の口永良部島で5月29日、爆発的な噴火があった。人的被害はけが人1人にとどまっているが、地元の屋久島町は住民の全島避難を指示、気象庁は噴火警戒レベルを運用後初の「5」まで引き上げ、最大級の警戒を呼び掛ける。戦後最大の被害を出した昨年の御嶽山噴火に続き、今年は蔵王山や箱根山などにも噴火の可能性が示される「火山列島」に、一層の戦略が求められている。
■直前予知の難しさ
口永良部島は同じ鹿児島県の桜島を中心とした九州、南西諸島の活動的な火山群の一つに数えられる。
その形は直径3キロメートルほどの島の北西側に、一回り小さな島がくっついているように見える。小さな方が古い火山体で、大きな方が新しく、今回噴火した「新岳」を含む活火山エリアだ。
1933(昭和8)年や1966(昭和41)年に大規模な噴火を観測。1980年代以降は小康状態だったが、京都大学防災研究所の井口正人教授によれば、1999年ごろからマグマの上昇を推定させる地下の温度変化などが観測されていた。火山性地震は2006年や2012年には400回を超える月も。それでも警報を出すに至る変化とは認められないまま、2014年8月3日の噴火が発生した。
井口教授は「15年間にわたる長期の準備過程があった。しかし火口が隆起するような明らかな兆候は、噴火の1時間前ぐらいからしか分からなかった」と、昨年10月に名古屋大学であった研究集会で報告していた。
昨年の噴火以降は火山ガスの放出量が多い状態が続き、今年3月には赤熱した溶岩や高温のガスが噴煙などに映って明るく見える「火映」を観測。5月に入ると震度3の有感地震が発生するなど明らかな変化はあり、警戒が強められていた。
口永良部島(写真:毎日新聞社/アフロ)
一方で、今回の噴火直前の火山性地震は29日午前9時台にわずか1回。10時台に77回と急増しているが、この間の9時59分に噴火が起きている。気象庁によれば「10分前にも明らかな変化は観測されなかった」という。
口永良部島は直前の予知が極めて難しい火山であると、あらためて示されたと言えるのだろう。
御嶽山では、昨年9月27日の2週間ほど前から火山性地震の「やや多い」状態が続き、噴火10分前にはマグマの動きを示す火山性微動も観測されていた。「御嶽ではその情報の伝え方が不十分だった」と名古屋大学地震火山研究センターの山岡耕春教授は認める。
■火山はそれぞれに個性がある
火山はそれぞれに「個性」があり、避難誘導や地域の対応も個々に考えられなければならない。例えば富士山は知られている限り、山頂からよりもむしろ山腹(側火口)から噴火する。ならば山頂にいる登山者と麓にいる人たちでは、避難の仕方がまったく違ってくる。こうしたきめ細かな対応を地元や登山者、観光客を巻き込んで詰めていかなければならない。
御嶽山の噴火被害を受け、国は法改正で「常時監視火山」を現行の47から50に拡大、合わせて火山周辺約130の市町村に関係機関と対策を協議する「火山防災協議会」の設置を求める。ちょうど今国会での成立を目指し、改正案が閣議決定された29日に口永良部島が噴火したというタイミングだ。
すでに協議会がある自治体でも防災体制の見直しは進んでおり、箱根山の地元は「昨年末に避難誘導マニュアルを作っていたため、迅速な対応ができた」と山岡教授は評価する。しかし、問題はその「戦略性」だ。ただ協議会を立ち上げ、画一的なマニュアルを作っていても仕方ない。
「今は個々の火山の地元で戦略的な防災体制を推進したくても、予算も人材もない。国として火山防災を戦略的に進める組織や、調査研究から監視、防災までの全体を見渡した戦略的なコーディネート機能、長期的な人材育成が必要だ」と山岡教授。火山との戦いは長く、誰も避けられない課題として国全体で考えていくしかないだろう。
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