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大涌谷では、いたるところで絶え間なく、噴気があがり続けていた〔PHOTO〕gettyimages
この先、何が起こるのか あちこちで煙が上がり、動物たちは逃げ出した「箱根山噴火」現地取材で分かったこと
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43325
2015年05月18日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
観光客は不安げに立ち去り、地元の住民たちは自らに言い聞かせるように「大丈夫」と繰り返す。今、箱根で、かつてない混乱が起きている。気象庁が発表しない箱根山の真実を、現地で取材した。
■マグマで山が膨張
6日早朝、箱根内輪山の最高峰・神山の中腹に位置する大涌谷周辺は、ものものしい雰囲気に包まれていた。
巡回するパトカーが、「大涌谷周辺にいる一般の方、ただちに下山してください」と大音量のスピーカーで呼びかけ、地元の職員も、観光客が残っていないか大声で確認しあっている。
指示に従い下山すると、大涌谷へと続く街道の封鎖を知らずに訪れた多くの観光客がいた。バリケード前で警察官の説明を聞いた彼らは、一様に「えー、そうなんだ」と残念そうな声を上げた。
観光客の中には、外国人の姿も少なくない。状況が飲み込めない彼らは、詰めかけたマスコミの中に英語ができる者を見つけ、「何が起きているんだ」と不安気な様子で聞いている。
運休となったロープウェイ乗り場近くのホテルからは、荷物を抱えた家族連れの姿が。父親に声をかけると、「小規模な噴火と言うけれど、どのくらい危険なのか分からない。子供もいるし不安なので、予定より一日早く旅行を切り上げることにしました」と語り、足早に去っていった—。
今、日本の一大観光地・箱根で、噴火の危険性が高まっている。
地震の活発化を受け、気象庁は4日、大涌谷へ調査チームを派遣。6日には、5日に観測された強い地震を受け、箱根山の噴火警戒レベルを1から2へと引き上げた。
噴火警戒レベルは、'07年から気象庁によって用いられる指標で、火山の状況に応じて5段階に分けられる。レベル2とは、〈火口内や火口の周辺部で、生命に危険を及ぼす火山活動=噴火が発生した、あるいはその恐れがある〉状態だ。
箱根山の研究・観測を行う神奈川県温泉地学研究所の研究課長・竹中潤氏が解説する。
「警戒レベルを引き上げた理由は、群発地震の発生と大涌谷付近の噴気が強くなったことに加え、山体膨張が見られるようになったからです」
山体膨張とは、その名のとおり、山全体が膨らんできているということ。箱根山の地下約10kmのマグマが上昇し、その圧力によって起きるとされている。マグマがさらに昇り続ければ、当然、待っているのは噴火だ。
「実際に、マグマが上がってきているのか。正直、それは分かりません。ただし、噴気が強くなったのは、マグマの熱が高くなってきているためだと考えています」(前出の竹中氏)
5日、立ち入りが禁止される前に大涌谷を訪れた本誌記者が見た噴気は確かに、これまでとまったく違うものだった。
展望台から観察していたわずか1時間程度の間に、何度もゴーッと音を立てながらあがる噴気。まるで箱根山の危険を告げる狼煙のように、長い水蒸気の白煙をたなびかせていた。
大涌谷付近の宿泊施設の職員が証言する。
「ここで10年近く働いていますが、ここ2週間で噴気は激しく、そして多くなってきました。大きな噴気のときは、約10km離れた小田原市内から噴気が見えるほどです」
■温泉の臭いが変わった
箱根山の異変は、噴気の活発化だけではない。地下の浅い部分を震源とした地震もまた、頻発している。
箱根山の有感地震が確認されるようになったのは、4月26日。以降、地震の数は日ごとに増加し、今日までに1000回をはるかに超える揺れが観測されているのだ。
大涌谷の様子を見に来ていた40代の地元の女性が、震えながら言う。
「驚いたのは、2日の地震です。ドーンと、下から突き上げるように震動が起きたんです。よく隣の御殿場で自衛隊が大砲を撃って演習していますけれど、ちょうどそれが、箱根の地下で起こったような感じ。そして翌日には、ゆらゆらっと横揺れがあった」
辺りに漂う臭気も、明らかに以前より強くなっている。
大涌谷で噴気を上げている火山ガスは、冷水と混合することによって温泉水として調整され、強羅や仙石原などの多くの別荘や旅館に供給されている。泉質に何らかの影響は出ていないのか。
強羅に別荘を持つ、50代の男性が語る。
「うちの別荘でも温泉を引いていますが、確かに刺激臭が強くなりましたね。私は毎週末のようにこの別荘で過ごしますが、変化が出てきたのは、GWの少し前くらいからです」
本誌記者はさらに噴火の前兆を探るべく、大涌谷から北北西約5kmに位置する金時山に移動。大涌谷を遠望できる山頂付近の山小屋で約70年間働いている、小見山妙子さん(82歳)を訪ねた。
「最近は、大涌谷近くの山肌が赤茶けているのがよく見えますよ。土砂崩れの影響でしょうね。これが地震のせいなのか、岩盤が緩んでいるからなのか、それは分かりませんけど、箱根山に変化が起きているのは確かです」
小見山さんは、昨年11月に本誌がスクープした「箱根山の新たな噴気孔」を教えてくれた人物でもある。
以前はまったく噴気が見られなかった大涌谷の北側の斜面から、もうもうと白煙を上がっている—。小見山さんからの情報提供を受け、本誌は現場へ急行。噴火の前兆ともいえる、新たな噴気孔の存在を目の当たりにしたのだ。
あの噴気は今、どうなっているのか。
「そういえば、あの噴気は金時山からは見えなくなっていますね」
その言葉を聞き、本誌記者は以前訪れた噴気孔のあった場所へ足を運んだ。尾根の斜面全体を覆うような噴気は、まだ上がり続けていた。ただ勢いは、確かに昨年ほどではない。まるで、大涌谷へとその勢いを奪われたかのようだ。
武蔵野学院大学特任教授で火山学者の島村英紀氏が解説する。
「噴気は地下水がマグマによって温められ発生するものですから、それが移動するということは、マグマも動いていると考えられます。ただ今の地震学では、噴気の場所や発生の時期を予測するのは非常に難しい」
噴気は高温なだけでなく、二酸化硫黄などの有毒なガスを含むケースが多くある。つまり現在の箱根は、毒ガスがいつどこで突如として発生しても、何らおかしくない状況なのだ。
■あの大震災の影響か
小見山さんは、さらに驚くべき箱根山の異変も教えてくれた。
何と、今まで箱根では姿を見なかったクマが目撃されるようになった、というのだ。
この証言を元に箱根の自然保護を行っている施設・箱根ビジターセンターを訪ねると、今年に入ってから少なくとも2件の目撃情報が寄せられているという。
同センターの自然公園財団主任・加藤和紀氏が語る。
「芦ノ湖の南側のあたりと、久野林道で目撃されたと報告がありました。それに、シカもここ最近、かなり目撃されるようになりましたね。クマと同様、シカも箱根での目撃情報はなかった動物だったんですが、最近は月に2~3件の報告があります。多いのは、芦ノ湖の西側・箱根スカイライン沿いです。私自身、疾走するシカを見たことがありますよ」
動物の異常行動と災害の関係を裏付ける科学的な根拠は解明されていない。しかし、大災害を予知したかのような動物たちの異常行動は、これまで何度も目撃され、記録として残っている。
たとえば、'11年8月24日にペルーで発生したマグニチュード7の大地震では、その20日ほど前から、近くの国立公園でネズミや鳥が慌ただしく移動する姿が観察された。
いたるところであがる噴気、頻発する地震、強くなった硫黄臭、マグマの上昇によって発生した山体膨張、そして噴火を逃れるように山を降ってきた動物たち……。
現地取材でわかった多くの異変。これらはやはり、箱根山が噴火する前兆なのか。
いつ大噴火が起きてもおかしくはない、と語るのは前出の島村氏だ。
「地震計が導入されて以来、マグニチュード9以上の地震は世界で7回ありました。一番古いのは、'52年に起きたカムチャッカ地震です。それらの地震は、すべて近くの火山に影響し、早いもので一日、遅くとも5年以内に噴火を誘発しています。しかも一つだけではなく、複数の火山が噴火しているのです。
'11年の東日本大震災も、マグニチュード9でした。そして、今年がその5年目。御嶽山の噴火も大震災の影響の一つですが、あれだけで済むとは考えづらい。明日にでも箱根山が噴火する可能性はあります」
では、本当に箱根山で大噴火が起きたとき、被害はどれほどになるのか。島村氏が続ける。
「直近で箱根山が大噴火したのは、3000年程前とされています。このときの火砕流が、外輪山の内側を埋め尽くし、現在の仙石原をつくり、川をせき止めて芦ノ湖もつくりました。
また、さらに甚大な被害をもたらしたと考えられるのは、箱根山が大噴火した約9万年前。このときは、約50km離れた横浜まで、火砕流が流れついた。これは、地質学的な調査で分かっています」
■富士山にも連動する
毎年多くの観光客が訪れる箱根には、旅館や別荘が無数に立ち並んでいる。火山近くに居住しているのは約1万5000人、一日に訪れる観光客の数は、およそ5万人にものぼる。
大涌谷を擁する箱根山の最高峰・神山は、'01年の群発地震以降、山腹のあちこちに新たな亀裂が走りはじめた。その亀裂は拡大し、ついには観光客を乗せた観光バスが通る県道734号脇まで達している。
しかも箱根山の火山ガスは有毒な硫化水素や二酸化硫黄を含むことで知られている。もしこのガスにまかれれば、眼や鼻の奥に激しい痛みを覚え、のどをかきむしるほどの苦しみを覚えながら呼吸困難に陥る。
それ以上に恐ろしいマグマからの噴火に襲われた場合には、時速100kmの火砕流が大観光地を走る。逃れられない速さで1000℃近くの火山灰と火山岩が、あらゆるものを溶かしながら斜面を流れてくるのだ。出入り道が少なく、道幅も狭い箱根は大混乱となり、火砕流に飲み込まれていくだろう。
さらに噴火の被害は、箱根周辺だけでは済まない可能性もある。わずか25km程度しか離れていない富士山が、箱根山に連動し、噴火するかもしれないという。
「富士山と箱根山は、数十万年前に伊豆半島が日本列島に衝突した時に同時に生まれた、兄弟のような活火山ですからね。距離が25kmということは、地下でマグマがつながっている可能性もある」(前出の島村氏)
標高3776mの富士山が噴火すれば、被害の大きさも箱根山の比ではない。二酸化硫黄と火砕流は、山梨県や静岡県といった隣接地域を一瞬にして覆うだろう。箱根山の火砕流が横浜まで届いたことから考えて、その被害は関東や中部にまで及ぶはずだ。
当然、御殿場にある自衛隊の演習場も被害を受ける。本来、即座に災害の対応にあたるべき約7000人の自衛隊員たちも機能しなくなる。
これらは確かに、万が一のケースだ。しかし箱根山のあちこちで噴気があがっているのは紛れもない事実。噴火を引き起こす可能性は、決して低くはない。
「週刊現代」2015年5月23日号より
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