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スクープ これは大噴火の前兆なのか 箱根山から「不気味な煙」が噴き出した!本誌記者が目撃、専門家も驚いた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41336
2014年12月08日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
東日本大震災後、体に感じる地震の回数も減り、落ち着いたかに思えた日本列島。だが、長野での地震、御嶽山・阿蘇山の噴火など、大地の動きはつづいていた。そしていま、さらなる地殻変動が—。
■70年近くいて初めて見た
「なんだ、あれは……」
11月下旬、神奈川県と静岡県の県境にまたがる金時山でのことだ。ここは、富士山麓に連なる箱根山のすぐ近くに位置する。「金太郎」こと、「坂田の金時」伝説ゆかりの地でもある。
登山が趣味の本誌記者は、この山に100回以上登っている。麓の町から山道を歩くこと1時間半ほど。山頂付近にある山小屋の人々もすっかり顔なじみだ。
しかしこの日、見慣れたはずの風景を何気なく眺めていると、奇妙なものが目に飛び込んできたのだった。
「箱根山から、煙が……出てる?」
あいにくの天気で雲も低く垂れこめているが、丸で囲んだ部分、中腹の山並みの間から白い煙があがっている。
箱根の山は、言わずと知れた温泉観光地だ。地中に溜まったマグマの熱で地下水が温められ、温泉として噴き出している。
常に活発に噴気をあげている大涌谷は温泉たまごなども有名で、ピーク時には一日約2000人の観光客が詰めかけ、火山の生み出す特徴的な風景を楽しんでいるという。ちなみに大涌谷に向かうロープウェイの年間乗客数は世界一であり、昨年度は220万人。ギネスブックにも載っている。
世界で一番、身近な火山とも言える箱根山。そこで噴気があがったと聞いても、
「箱根ではいつでも噴気が出ているんじゃないの?」
と思われるかもしれない。
しかし今回発見したのは、大涌谷から尾根ひとつ越えた、北西側の斜面だ。しかも、その噴気は大量で、離れた場所からもはっきり目視できるものだった。
この金時山頂上の山小屋で1947年、14歳のときから働いている「金時娘」こと、小見山妙子さん(81歳)に訊ねてみた。
「あの噴気のこと?あれは私も驚いてんのよ。噴気なんか出るようなところじゃないと思ってたから。最初は誰かゴミでも焼いてるのかと思ったの。はじめは細い煙みたいに見えたけど、日が経つにつれてだんだん大きくなってきた」
67年間、日々向かいの箱根山を見つめて生きてきた「金時娘」も、今回の噴気には驚いたというのだ。
「ここには長くいるけど、あんなところから噴気が出たのは初めて。だから心配で(箱根)町役場に知らせたんですよ。そしたら、『噴煙が200mくらいになったら、また知らせてください』って言う。箱根は温泉観光で食べてるから、ちょっとのことで大げさになるのはイヤなんだろうね。それでも、だんだん煙の幅は広がっているし、もう200mくらいになったんじゃないかな。
あんまり噴気があがってくるもんだから、近くにあった老舗の旅館が営業できなくて、閉めたりしているらしいですよ」(小見山さん)
いったい、何事が起きているのか。この新たな噴気の上昇が細々とはじまったのは、'11年3月の東日本大震災のあとだというが、いまではまさに、もくもくと立ち上っている。
本紙記者は早速、現場近くに向かった。
いったん麓の町に降り、車で別荘地がつづく山道を箱根山に向かう。「金時娘」に教えてもらった噴気孔の場所は、別荘や美術館などの施設にも近かった。
地図上では、道路が噴気孔にもっとも近くなる場所にたどりつく。うっそうとした薮と木立に遮られて、噴気そのものが立ち上る現場を見ることはできない。またそこから直接、噴気孔のあるあたりに近づくルートも見当たらない。
車を停めて窓を開けると、温泉独特の卵の腐ったような臭い、つまり硫化水素の臭いが感じられる。温泉場なら当たり前だろう、と感じる方もいるだろう。だが、麓の町や、この付近以外の山道では感じなかったものだ。
■噴出の現場に到達した
入り組んだ山道を抜け、別ルートでの現場への接近を試みた。いったん、上湯場と呼ばれる、温泉場に近い場所まで車で登り、徒歩で現場近くに向かう。途中、
〈火山ガス 危険 立ち入るな〉
という看板が立ち、
〈噴気に手を触れないでください。高温で火傷をする恐れがあります〉
と記されている場所もあった。だが今回、噴気があがっている方面には、とくに注意書きは見当たらない。噴気孔がまだ新しいためか。
林の向こうでは、白い湯気のような噴気がもくもくとあがっている。噴気は強くなったり、弱くなったりを繰り返しているが、決して止まることなく噴き出しつづけている。
周囲を観察すると、地面から小さく蒸気が立ち上っている場所で、木々が立ち枯れしている様子も見られた。先ほどの噴気が盛んな場所では、まだ木が枯れていないところを見ると、やはり噴出が始まったのは比較的最近のことと思われた。
本誌記者は、さらに活発な噴気孔がある斜面に近づく。先ほど聞いた「金時娘」の言葉が頭をよぎる。
「ガスマスク持ってきたの?あそこに行くなら、マスクがないと危ないよ」
9月27日の木曽御嶽山の噴火後、行方不明者を捜索する自衛隊員たちも身に着けていたガスマスク。火山では二酸化硫黄など、吸えば即刻、命にかかわる危険なガスが至る所から噴出する。山道からあまり離れてはいけない—。おそるおそる進んだそのとき、林のなかに真っ白な噴気が立ち上る場所が、目の前に現れた(左の写真)。噴気は1ヵ所ではなく、大小さまざまな穴から噴き出している。火山ガスの危険を考え、それ以上、近づくことはしなかったが、活発な噴出の、まさに現場に到達することができた。
11月22日の長野県北部での最大震度6弱の地震。そして御嶽山につづき、25日に噴火した九州・阿蘇山。
東日本大震災からまもなく4年になろうとしているが、いまだに日本列島の地殻変動は止んでいない。
新たな噴気は、大噴火の予兆と言える現象なのか。箱根山を中心に火山活動の研究を行っている神奈川県温泉地学研究所の竹中潤研究課長に、今回の噴気について問い合わせてみた。
—最近、箱根の火山活動は活発なのでしょうか?
「箱根では数年おきに群発地震が起きています。最近では昨年の1~3月で、体に感じない地震を含めて合計2000回もの地震がありました」
—新しい噴気孔ができて、噴気がかなり活発になっているようですが……。
「ここ数週間から1ヵ月の間に新しい動きがあったとは把握していないのですが……そうですか。近隣住民の方には、何かいつもと違うと感じたら、ぜひ遠慮なく連絡いただきたいです。
噴気が活発に出る場所が、有名な大涌谷ではなく、その北側の斜面にできて、さらにそれが移動していることは確認しています。『上湯場』という場所の近くですが、噴気の出る位置が、次第に西側に移動しています」
上湯場の近く、西側—。まさに今回の噴気孔に一致している場所だ。移動をつづけた噴気孔が、ついに、70年間近く箱根山を見つめつづけてきた人をも驚かす意外な場所に到達したということなのか。
—噴気が活発に出ている場所では、具体的に何が起こっているのでしょうか。
「地面が温められて、湯気のようなものがモワーッと出ていることが多いですが、岩の割れ目から直接、シューッと火山ガスが出ている場合もあります」
温泉地学研究所では、地震波を利用して地中の構造を探る研究を行っており、箱根山の地下10qあたりに、マグマだまりらしきものがあることを確認している。群発地震が起こるたびに、そのマグマに起因すると考えられる山体膨張が発生しているという。
要はマグマが昇ってくる圧力で、山全体が膨らんできているということだ。
■富士山と連動も
竹中氏は、噴気の噴出自体は、マグマとの直接の関係はなく、より浅いところで起きる現象だとして、マグマの活動の活発化と、今回の噴気は無関係ではないかという見解だった。
しかし、異なる意見もある。日本列島の地殻変動を研究してきた武蔵野学院大学の島村英紀特任教授は、
「富士山もいつ噴火してもおかしくない状態にあると地震学者・火山学者の意見はほぼ一致しているが、その富士山より箱根山のほうが危ない、とする研究者は、自分を含めて、かなり多い」
と指摘した。
「箱根は一大観光地ですから、地元ではなかなかはっきりと危ないとは言いにくいでしょうが……。日本の地震・噴火活動というのは、我々の知る20世紀はなぜか、特別静かすぎる時期でした。歴史的に見ると、1世紀の間に大噴火が3~5回起こってきたけれども、1914年の桜島、1929年の北海道・駒ヶ岳の噴火でパタリと止まってしまった。ですから21世紀には大噴火が4~5回あってもおかしくないのです」
ちなみに57人が死亡、6人が行方不明となった御嶽山の噴火も、火山学的には「規模の小さな噴火」だという。「大噴火」の定義は東京ドームの容積の約250倍、3億〓以上の噴出物が噴き出すレベルの噴火を指し、スケールの違う巨大災害を引き起こすのだ。
島村氏は、過去に起こった箱根山の噴火も、想像以上に大規模なものだったと話す。
「箱根で大噴火があったのは、約6000年前の縄文時代です。ですから文献記録には残っていませんが、地球の歴史からすればつい最近。そのときは、火砕流で周囲の低い山地が埋められて平らな仙石原になり、芦ノ湖が形成されました。
また標高911mの長尾峠という峰を越えて、静岡県側にも火砕流が流れ出している。火砕流が乗り越えてきたわけです。神奈川県側も大部分で火砕流の跡が見られて、横浜付近まで到達していた可能性もある」
さらに、観光地化している現在の箱根で噴火が起きれば、大変な悲劇になると同氏は指摘する。
「たくさんの人が集まっているけれども、観光客が知っているような箱根に入る主要ルートは2~3本しかない。いずれも狭い山道です。ロープウェイも市街地も外輪山のなか、つまり火山のなかにある。あれだけの別荘リゾートが火山のなかにあるというのは、世界でも稀有な例です」
しかも箱根山の噴火では、富士山との連動も考えなければならないと同氏は語る。
「富士山と箱根は約25qしか離れていない。地球規模で見たら、すぐ隣です。数十万年前に、太平洋側から島が移動してきて本州にぶつかり、伊豆半島になった。その影響で富士山と箱根は、ほぼ同時期に形成されたのです。連動してもなんら不思議はありません」
■長野・阿蘇とも関係
立命館大学歴史都市防災研究所の高橋学教授は、箱根の火山活動の活発化は、長野での地震、阿蘇山の噴火とも関連して理解できると説明する。
「日本列島の地殻の動きというのは、左腕を使うとよく分かるのです。左手で握り拳を作って、力こぶを作るようにひじを曲げてみてください。握り拳が北海道、手首からひじが東日本、二の腕が西日本から九州あたりというイメージです。
東日本は、力こぶを作るときのひじから先のように、太平洋側から西日本の方向、つまり二の腕のほうに押しつけられている。ひじの先端にあたるのが関東で、富士山や箱根山も含まれます。
一方でひじから二の腕にかけての部分に、日本最大の断層、糸魚川—静岡構造線があります。その一部が動いたのが、11月22日の長野県北部での地震でした。東日本と西日本の境目、日本の折れ目にあたり、非常に力がかかっています」
東日本大震災をきっかけに、このパワーバランスに変化が起きたという。
「あの大地震で力が解放されて、力こぶを作るように押し込まれていた東日本が、少し緩んだ。少し緩むとゆとりができるので、再度グッと力こぶを作ることができますよね。それと同じで、以前は年間10p程度だった太平洋側の地殻の沈み込みの速度が、現在20~30pに加速しています。
こうして急速に沈み込んだ地殻は、地中深くで圧力を受けて融け出し、マグマになる。小笠原沖の西之島で噴火が起こり、島がどんどん拡大しているとニュースになっていますが、あれもマグマが次々と供給されて起こっている現象です。
ひじの部分にあたる富士山、箱根山周辺にはさらに複雑に力がかかり、大きな影響を受けているのです」
さらに西日本に目を転じると、長野のM6級地震前と似た地震活動が、琵琶湖周辺で始まっているという。
「京都から琵琶湖周辺、徳島から和歌山のあたり、そして愛知県を結ぶ三角形の地域での地震活動が活発になっています。これは南海トラフ巨大地震の前に活発化すると考えられる内陸地震の動きと合致します。
広島から九州南東沖、沖縄にかけての直線状の地域でも火山活動、地震活動がここ数ヵ月で活発になっていて、阿蘇山の噴火もその一環だろうと思います」
東から東日本を押しこむ3・11以降の力。そして南海トラフ巨大地震の原因となる、西日本を南から北に押し上げる力。その力がぶつかりあう「折れ目」の部分に、今回地震のあった長野や富士山、箱根山が位置する。東日本、西日本、双方の影響を受け、活動はますます活発になっていると考えられるのだ。
琉球大学の木村政昭名誉教授は、箱根の大噴火を警戒する上で次に注目すべきは、低周波地震だと話す。
「通常、岩石が割れて起こる地震の波は高周波ですが、マグマがぬるりと動くときに起こる地震は低周波です。先日の御嶽山の噴火のあとデータを確認したら、やはり低周波地震が記録されていました。富士山でもやはり低周波地震が記録されていて、私は非常に気になっている。箱根山でもマグマの活動があれば、この現象が起こってくるでしょう」
私たちは普段、地震や火山噴火につながる地殻変動を目にすることなどほとんどない。だが、いま箱根に行けば、もうもうと噴気をあげる、新しい噴気孔がある。日本列島の大変動期はまだつづいている。いざというとき、冷静に対処するためにも、この現実に目をつむってはならないだろう。
「週刊現代」2014年12月13日号より
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