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防災に備えろ! 全国52万カ所 “土砂崩れ”危険地帯マップ(1)
http://wjn.jp/article/detail/4805171/
週刊実話 2014年9月11日 特大号
死者、行方不明者合わせて88人(8月24日時点)に上った、広島市北部の土砂災害。警察や消防、自衛隊などによる懸命な救助活動が行われているが、大規模自然災害の爪痕を前に難航を極めている。
「現場周辺は風化した花崗岩が堆積した『真砂土(まさど)』と呼ばれる地層が広がり、水分を多量に含んで重くなっている。これが新たな土石流を発生させる可能性も高く、捜索は容易なことではありません」(地元記者)
8月20日に広島市安佐南区、安佐北区を襲った豪雨では、南から暖かく湿った空気が流入し、積乱雲が連続的に発達してできる『バックビルディング』と呼ばれる現象が起きたとみられている。
気象予報士の井坂綾氏が説明する。
「通常の積乱雲発生は、極めて局所的な現象で寿命は1時間ほど。その間に20〜30ミリ程度の雨を降らせるぐらいです。これに対し、一つの積乱雲が消滅しても背後に次から次へ積乱雲が発生し、100ミリ前後の膨大な雨が数時間にわたり持続的に降るのが、バックビルディング現象。風上の積乱雲が建ち並ぶビルのように見えることからこう呼ばれますが、広島上空で起きた原因は、太平洋高気圧の外側に沿って南から豊後水道を経て流れてきた湿った空気と、南西からの湿った空気が日本海に延びた前線に向かって流入し、上空でぶつかったことにあります」
地形的な要因もある。その空気が中国山地にぶつかり上昇気流が生じ、20日未明は急激に積乱雲が発達していたのだ。
「豪雨は夜間から早朝にかけて起きる割合が高いことが、多くの研究によって示されています。なぜなのかはっきりしたことはわかっていませんが、夜間は上空の気温が低く、雲ができ始める高さが低くなる。そこから雨の降りやすい状況ができ、背の高い雲ができるのです」(井坂氏)
役所の対応が後手に回っていたことも明らかになっている。
「一部ではあるが、避難勧告の基準を上回る雨量があったんですよ。しかし、結果的に担当者が躊躇している間に地滑りが起き始めてしまった」(地元記者)
今回、広島市では午前1時に土砂災害警戒情報が発表され、午前3時には安佐南区や安佐北区で地中の雨量が水防計画の基準を超えた。しかし、この計画に「今後の気象予測を勘案して対応する」という一項があるために、この時点で勧告は出されなかった。
しかし雨量は増し、午前4時には基準の倍に。ようやく最初の勧告が出たのは安佐北区で午前4時15分、安佐南区で同30分。土砂崩れや生き埋めの通報がすでに3時ごろから相次いでいたことを考えても、これらの勧告がまったく意味を成さなかったことがわかる。広島市は'99年、県内で31人の死者が出た豪雨災害時に避難勧告を出せなかった反省から、勧告を検討する基準を水防計画で定めたのだが、今回も生かすことができなかったわけだ。
防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。
「今回あれだけの犠牲者が出たのは、バックビルディング現象が発生したことや、被害地域の地盤が緩く深夜であったことなど、悪条件が重なったからです。メディアや評論家の先生方は避難指示が遅かったといろいろ語っているが、住民が撮影した映像を見る限り、あれだけの豪雨が降りしきる中で避難指示など出せない。このような異常気象が続く今は、情報を待って避難するのではなく、自分で判断する時代なんですよ。自治体のハザードマップを見るのはいいことだが、私は義務教育の中で居住する地域の地学を教えるべきだと思います。どういう地盤で、大雨が降るとどのようなリスクがあるのか頭に入っていれば、自分で考えて行動することができる」
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防災に備えろ! 全国52万カ所 “土砂崩れ”危険地帯マップ(2)
http://wjn.jp/article/detail/2368242/
週刊実話 2014年9月11日 特大号
9月は台風と秋雨前線が襲う
国土交通省によれば、『対策が必要な土砂災害危険箇所』は全国で52万5307カ所。過去10年間の土砂災害発生件数をみると、平均して1年間におよそ1000件もの土砂災害が発生している。昨年1年間の土砂災害の発生件数は941件で、各都道府県別の災害を見ても、いかに全国各地で起きているかがわかる。
しかし、昨年のデータが今年に当てはまるとも限らないという。
「自然災害の中でも土砂災害はエリアごとの平均値がわかりづらい。何年も被害の少なかったエリアでいきなり数値が跳ね上がることも珍しくない。特に異常気象が注目され始めたここ8年間の発生件数データと、昨年だけのデータを比べてもその違いは大きい。8年間の発生件数全国5位の熊本が、昨年のデータだけを見ると比較的安全なエリアとなってしまうのです。ただし、島根から岡山、山口、そして今回甚大な被害に襲われた広島を含む中国地方は、広範囲にわたって発生件数が突出している。今後、異常気象がさらに深刻化するようなら、抜本的な防災対策は不可欠になってくるでしょう」(サイエンスライター)
しかも、土砂災害危険カ所の約52万件のうち、警戒区域に指定されているのは35万カ所に留まっている。
「警戒区域の中でもさらに危険性の高い区域は特別警戒区域に指定され、場合によっては建物の移転勧告も出されるのですが、行政側の予算や人手不足によりこの切り替えが遅れている地域もある。今回被害に遭った広島市安佐南区の八木や緑井地区なども同様で、処理が遅れ警戒区域にさえ指定されず、住民への説明がなかった。このようなケースは全国各地にあるのです」(同)
地質に関しては、前述の「真砂土」が広がる土地は広島市に限らず、岡山県全域や兵庫県神戸市などにも多いという。
「これらの土地は、集中豪雨に限らず、度重なる長雨によっても簡単に崩壊する場合がある。さらに、宅地開発によって土砂災害の発生する確率が高い場所も増加傾向にある。平地に土地がなくなり山際の斜面に住宅を建てる流れは仕方のない部分がありますが、危険と隣合わせであることは意識しなければなりません」(同)
広島での土砂災害後も、集中豪雨は全国各地で発生した。24日、前線の影響で大気の状態が不安定になり、北海道の礼文島、京都府福知山市、大阪府池田市などで記録的な大雨となり、礼文島で土砂崩れが発生して住宅1棟が全壊し、住人の女性2人が死亡した。
9月いっぱいまでは台風シーズンが続く。温暖化などの影響によりそのスケールは大きくなるばかりだ。前出の井坂氏は、「台風も心配ですが、今後は秋雨前線と台風がセットで襲うので注意が必要です」と言う。
前線が停滞して大雨になっているところへ台風が接近してくると、台風の周囲に吹き荒れる強風によって暖かく湿った空気が運ばれてくる。当然、前線は刺激され、積乱雲が発達するのだ。
「竜巻も発生しやすい栃木県などは、9月でも30℃に達する日が多い。水分をたっぷり含んだ風は上昇しながら冷やされて雲粒になり、積乱雲を作り出す。これが南から入った風が北関東の山岳部にぶつかって発生する上昇気流に乗り、高度1万5000メートル前後にまで達して『スーパーセル』と呼ばれる巨大積乱雲ができることもある。これが超集中豪雨をもたらし、一気に地盤を緩めるのです」(前出・サイエンスライター)
最後に井坂氏も警鐘を鳴らす。
「今のコンピューターでは台風のようなスケールの大きなものは予測できても、積乱雲のようなスケールの小さいものは計算できない。都市部ではヒートアイランド現象もあるし、日本中、ここなら安全というような地域はないのではないでしょうか」
自分の命は自分で守るしかない。
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