http://www.asyura2.com/14/jisin20/msg/140.html
Tweet |
「記録的」がもたらす災害(1) 大げさで抽象的な表現が災害を生む
http://takedanet.com/2014/08/post_6f78.html
平成26年8月20日 武田邦彦(中部大学)
このところ、気象の変化で起こる災害が続いている。8月18日には大雨で岐阜・高山の橋が流され、8月20日(今日)は広島で土砂崩れの被害が報じられている。そのたびに、気象庁は「記録的」とか「観測史上最大」という表現を使っているが、この表現では「備え」もできず、「原因」もわからず、「対策」も適切に採ることができない。
数年前から気象庁の表現は大げさで抽象的になり、生活をしている方としてはなにをどうすれば良いかわからない。たとえば「今までに経験したことがない」という表現が出てきたのも数年前だが、「今までに経験したことがない」というのはあまりに「個人的」で、80歳の人で日本のあちこちに転勤した人のことを言っているのか、それとも10歳ぐらいの少年を念頭に置いているのか判らない。
もし、80歳の経験豊かな人のことなら、「日本の気象変化のうち、かなり珍しい」と言うことになるので、避難したり、何かの対策が必要だ。でも10歳ぐらいの人が経験していないということになると、日本ではほぼ毎年、どこかで起こることになるので、避難したりする必要がない。
だから「今までに経験したことがない」という表現は、その表現が不適切であることによってかなりの犠牲者を出した原因となっていると思う。
台風11号で避難命令がでた四日市市で、約30万人が避難対象だったのに、180人しか避難しなかったということが「大げさな表現がもたらす典型的な現象」ということができるだろう。この時、気象庁は「直ちに命を守る行動を取ってください」と言っていた。そしてそれを受けて自治体が避難命令(正しくは避難指示・・・判りにくい言葉で、避難勧告より強い)を出しても住民はそれを完全に無視した(桑名市では20万人に命令がでて、避難した人は80人)。
「これまでに経験の無い」のだから「直ちに命を守る行動」といっても、全く判らない。一方では、テレビで台風の規模や最大風速、予想雨量を伝えているが、気圧は935ヘクトパスカルで普通の台風、最大風速は35メートルで台風としてはやや小さめ、それにすでに高知県で降り始めからの雨量が1000ミリを超えているのに、三重県の予想雨量はそれより下回っている。
でも「三重県は脆弱だから」とも発表されない。しかも四日市市では風はそれほど強くなく、雨が問題だったが、川の周辺に避難指示がでたのではなく、四日市市全体に発令される。でも住民は「人間」だから、あまりにも不合理なことはできない。川が氾濫すると言っても堤防が結果してい浸水する地域は決まっている。それから遠く数メートル以上の高い地域の人がわざわざより危険なところに避難することなどありえない。
このことをテレビでは「安全を最優先」とか「空振りを恐れない」と見当外れの解説をしているが、そんなことではなく、「説明や発令が合理的ではない」ということであり、注意はするに越したことはないが、三重県に雨が降るから東京の人に避難命令が出るようなものだ。現地に行ってみると、台風の規模と地形から見て「命を守る行動」がなんなのか全く判らないことが理解される。
広島の土砂崩れでも、「記録的」といい「観測史上最大」と言っていた。でも、雨量を見ると前線が中国山脈の北にあるときの7月などに降る九州から中国地方の雨(湿舌による豪雨)は普通のことで、たとえば「広島の住宅地に10年前に設置されたアメダスでは初めてで、九州から中国地方に夏に降る雨としては毎年、降る程度のもの」と思う。
テレビが住民にインタビューをすると、「今までにこんなこと経験したことがありますか」との誘導質問があり「これまでに経験したことがない」と答えた人の映像を出す。でも今日の広島の住民は誘導質問に対して、「いや、ときどきこのぐらいの雨はありますよ。でも少し時間が長かったかも知れませんね」と答えていた。
今度の災害が、本当に記録的なのか、それとも1時間ほど長く降ったのかによって今後の対策が違う。本当に記録的なら仕方が無いところもあるが、1時間ほど長く降ると土砂崩れが起きて命を失うというような治水政策なら、少しの雨でもすぐ逃げなければならない。
一刻も早く気象庁は表現を正確に(「記録的」とか「観測史上最大」という代わりに、「九州・中国地方では何年ぶり」という表現)に直すべきである。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。