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[けいざい解読]ネットの中立性、米で論争 回線投資、誰が負担
「ネットの中立性」をめぐる論争が米国で熱を帯びてきた。利用者にはどんな影響があるのか。
ニューヨーク市マンハッタン南部のビルに「出会いの部屋」はある。通称「meet me room」。無数の大手ネット企業が互いをつなぐ拠点で、回線が所狭しと室内をはう。
「動画配信などのコンテンツ業者は顧客増に対応してネット接続業者との回線を増強し続けている」と管理会社テレクスのバウニー最高経営責任者(CEO)は言う。
だが、流れ込むデータが増えた接続業者は、それを家庭に届ける回線などへの投資が必要になる。そこで優先的なデータの扱いを望むコンテンツ業者から追加料金をとろうと考えた。ネット上の「有料高速車線」だ。
これに米連邦通信委員会(FCC)が待ったをかけた。先月に承認した「中立性」ルールの柱は情報を遮らない、遅らせない、優遇(差別)しないの3点。FCCの監督権限を明確にするため、これまで「ネットは電話でない」としてきた立場も見直し、ネット接続業者を電話会社と同じ法律上の区分に含めた。
高速車線ができれば自分たちが割を食うと恐れた新興コンテンツ業者や消費者の代表は喝采を送った。なお法廷闘争も見込まれるが、FCCの背中を押したオバマ政権がまずは得点した形だ。
では中立性ルールは利用者に何をもたらすのか。FCCは「開かれたネットが利用者増→インフラ投資拡大→技術革新の好循環を生む」と主張する。これに対し、反対派は「過剰規制で投資や技術革新が滞り、利用者に害が及ぶ」と反論する。
実際はどちらも言いすぎだろう。反対派は「公益事業並みの規制」と反発するが、FCCは「時代遅れの料金規制などで負担をかけることはない」と説明している。
そもそもFCCがネット接続業者を電話会社と区別してきたのは光ファイバーや無線、電力線など多様な手段での接続を促すためだった。その期待は外れ、利用者は競争が乏しい旧来型の銅線の「高くて遅い」接続に不満を募らせる。
原因の一つとされるのは日本のように各家庭へと伸びる回線の末端部分を新規参入の業者に開放する義務がない点だ。今回のルールではこの肝の部分は変えないとした。FCCがいう投資やサービスへの好影響が生じる根拠は見当たらない。
お金のあるなしで情報を差別する動きを封じた今回のルール。ネット上の“格差問題”に先手を打った面はある。だが情報が急増するなか、回線の質を保つためのコストを誰が負担するのかという根っこの問題は棚上げされたままだ。
日本でも2000年代半ば、NTTが動画配信会社やネット電話が回線に「ただ乗り」していると批判した。今のところ日本は映画などのコンテンツ流通が少なく回線に余裕がある。だが、今後データが急増すれば、日本でも回線への投資負担の押しつけ合いが起きる可能性はある。
(米州総局編集委員 西村博之)
[日経新聞3月15日朝刊P.3]
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