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マイクロソフト、捨て身の反撃
「ウィンドウズ10」無償提供 グーグルやアップルに対抗
米マイクロソフト(MS)は21日、今年後半に発売予定の次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」を「7」以降の利用者に無料で提供すると発表した。発売後1年間の期間限定とはいえ、最新OSをユーザーにタダで提供するのは初めてだ。「8」による買い替え戦略が不発に終わったパソコンOSの巨人。米アップルやグーグルの攻勢を前に、利用者の囲い込みを優先する「捨て身の戦略」は功を奏するか。
「ウィンドウズ10はただの新製品ではない。我々と顧客の関係を根本的に変えるものだ」。シアトル近郊のMS本社で、テリー・マイヤーソン上級副社長は「9」を飛ばしてまで「10」にかける意気込みを強調した。
MSは数年おきに新しいOSを投入して買い替えを促す「ソフト販売」を収益源としてきた。だが「10」は発売後1年間、「7」以降の利用者がネットなどを通じてOSを無償でアップグレードできるようにする。
顧客の声生かす
顧客との関係変化は開発手法にも見て取れる。昨秋「10」の試用版を公開するのに合わせ、ユーザーの声を開発に生かす仕組みを本格的に導入。すでに世界から170万人が参加し、80万件の意見や要望が寄せられた。
背景には満を持して投入した「8」が不発に終わった危機感がある。タブレットでの使い勝手を優先したが、逆にパソコンで使いにくいと不評を買った。ユーザーの過半が今も「7」を利用し、5人に1人はサポートを終えた「XP」を使う。
パソコンOSで9割のシェアを維持する同社だが、情報端末の主役となりつつあるスマートフォン(スマホ)やタブレットを合わせるとシェアは15%以下。仮に「10」でつまずけば、スマホとの連携機能を強化して攻勢を強めるグーグルやアップルに「最後のとりで」も切り崩されかねない。
あるシステム販売会社幹部は「『8』の時はMSが絶対正しいというような傲慢さが感じられたが、聞く耳を持ってくれるようになった。考えられない変化だ」と驚く。
MSは21日、音声で操作できるパソコン版の個人秘書機能「コルタナ」や、新型閲覧ソフト「スパルタン」など主に個人向けの新機能や新端末を公開した。「ものとして非常に良くなり期待できる」(国内パソコン大手)など反応は悪くない。
米証券会社の試算によると、無償化による減収は最大5億ドル(約590億円)。その分、「オフィス」などクラウドサービスで穴を埋める方針だ。収益源を「ソフト販売」から「サービス」に移す戦略を加速させる。
課題は、苦戦のスマホ市場で上位2社を追撃するシナリオの成否だ。スマホ用アプリ(応用ソフト)の充実度で、「ウィンドウズフォン」はグーグルの「アンドロイド」端末やアップルの「iPhone」に大きく水をあけられているからだ。
ちょうど30年
MSは「10」で1つのアプリを開発すれば、パソコンやスマホ、タブレット、家庭用ゲーム機「Xbox」などウィンドウズを搭載したすべての端末で使える仕組みを導入。ソフト開発者にウィンドウズ向けアプリの開発を呼びかけるが、グーグルやアップル陣営にどっぷり組み込まれた開発者をどれだけ自陣に引き込めるかは未知数だ。
「ウィンドウズを人々が『必要とする』ものから『欲しがるもの』に変えたい」。一連の改革を主導してきたサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は21日の会見でこう語った。初代ウィンドウズの登場から、今年はちょうど30年。失地回復を託された「10」が背負うものは重い。
(シリコンバレー=小川義也、深尾幸生)
[日経新聞1月23日朝刊P.13]
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