05. 2014年12月04日 08:02:42
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スマホの心臓を握る者は誰だ? アプリケーションプロセッサを巡る終わりなきバトルロイヤル 2014年12月04日(Thu) 湯之上 隆 世界はスマホを中心に回っている スマホの販売台数は、2013年に10億台、今年2014年には12億台を超えるという。2007年の「iPhone」発売以来、スマホの累計販売台数は、おそらく30億台程度になるのではないか。今やスマホは、世界70億人に必要な生活と仕事のツールになりつつある。 今後、普及が予想されるウエアラブル端末やモノのインターネット(Internet of Things : IoT)においても、スマホはそれらのハブとなるため、その重要性はより大きくなる。スマホは、「常時ON」「常時センシング」「常時接続」に向けて機能が進化しし続けるだろう。 このスマホの最も重要な部品は、すべての機能の中心となる半導体集積回路、いわゆる「アプリケーションプロセッサ」(AP)である。したがって、APを制するものがスマホを制すると言っても過言ではない。 本稿では、このAPを巡って、どのようなバトルが繰り広げられ、どのような主役の交代が起きてきたか、また起きそうかについて論じる。 スティーブ・ジョブズの慧眼 「スマホの付加価値は、APが握っている」。 このことにいち早く気づいたジョブズは、iPhoneに強力な付加価値をつけるために、自前のAPを持つしかないとの結論に至った。しかし、当初アップルにはプロセッサを設計する能力はなかった。 そこで、2008年4月、アップルは米P.A.Semiを2億7800万ドルで買収した。P.A.Semiは2003年に創業した半導体設計専門のファブレスで、その中心人物は創業者の1人、ダン・ドバーパルという設計者である(図1)。 図1 アップルはiPhoneにどのように付加価値を付けたか ダン・ドバーパルのチームは、2007年2月に、通信や軍事、航空宇宙などの分野で使用されるネットワーク機器用に、デュアルコア64ビット・プロセッサ「PA6T-1682M PWRficient」をリリースした。このプロセッサはわずか5〜13Wの消費電力、2GHzで動作し、同等のプロセッサより電力効率が300〜400%高かった。
ジョブズは、このような“とんがった”プロセッサを設計してきたドパーパルのチームに、iPhoneのAPを設計させたのである。その期待に応えて、ドバーパルのチームは、「iPhone 4S」のプロセッサ「A5」を開発した。そして、これがアップルの躍進に一役買ったわけである。 インテル史上最大のミスジャッジ スマホのAPの設計も重要だが、その製造もこれと同様に重要である。しかし、アップルは半導体の開発センターも量産工場も持っていない。したがって、どこかの半導体メーカーにAPを生産委託する必要があった。 アップルは、(おそらく)初代iPhone発売の2〜3年前に、APの生産委託を米インテルに打診した。ところが、当時インテルのCEOだったポール・オッテリーニは、これを断ってしまったのである。これは、「インテル史上最大のミスジャッジ」と言われ、そのせいで、オッテリーニはCEOの座を追われる羽目に陥った。 なぜ、オッテリーニは、iPhone用APの生産委託を断ってしまったのか? 米雑誌社“The Atlantic”が行ったオッテリーニへのインタビューによれば、アップルは(おそらくジョブズが)、APの生産委託を打診する際、「それに一定の金額(約10ドル)を払うが、その金額以上はびた一文も出す意思がないと伝えたのだという(ジョブズが言いそうなことだ)」(「スマホへの勝算なき執着、インテルも『UFOが来る』と信じているのか」 2014年10月7日)。 インテルはこれに基づいて利益を出すにはどのくらい生産すれば良いか、つまりiPhoneがどのくらい売れるかを予想した(まだスマホの市場がまったくないときに!)。 インテルはiPhoneがフィーバーを起こすほど売れるとは思わなかった。したがって、1個10ドルのAPを作っても利益は出ないと判断した(ちなみにインテルのPC用プロセッサは1個5000〜2万円)。 こうして、当時CEOだったオッテリーニは、アップルの生産委託を断ったわけである。しかし、蓋を開けてみると、インテルの予測は間違っていた。なぜならば、iPhoneの生産量はあらゆる人が考えていた量の100倍以上だったからだ。 インタビューの最後にオッテリーニは、「私の本能はアップルの申し出を受け入れろと私に告げていた」と言い訳じみた言葉を付け加えたが、後の祭りであることは言うまでもない。逃がした魚はあまりにも大きかった。こうして、オッテリーニはCEOを退任させられることになった。 漁夫の利を得たサムスン電子 インテルに断られたiPhone用APは、韓国のサムスン電子が製造することになった。サムスン電子は、DRAMやNANDフラッシュメモリで世界シェア1位である。しかし、これらのメモリは好不況の波を受けやすいため、サムスン電子は随分前からファンドリーに進出しようとしていた。ところが、鳴かず飛ばずの状態が続いていた。 そのようなときにサムスン電子はiPhone用APの生産を受託し、ファンドリービジネスを開花させ、その利益を享受することになった。このiPhone効果により、サムスン電子は3年の間にファンドリー部門で10位から3位に大躍進した。 さらにサムスン電子は、このiPhone用APの受託で、もっと大きな果実を手に入れた。サムスン電子は、自他ともに認める“ファーストフォロワー”である。つまり、模倣者である。その模倣者に、アップル社は、スマホの付加価値の源泉ともいうべきAPを生産委託したわけである。 サムスン電子のスマホ「GALAXY」は出荷台数でiPhoneを抜いて世界一となり、サムスン電子の営業利益の約7割を稼ぎ出すまでになった。このGALAXYの開発・製造に、iPhone用AP製造で知り得たノウハウが生かされていることは間違いない アップルとサムスン電子は、2012年から世界各国で、スマホに関する訴訟合戦を繰り広げている。これについては、アップルは墓穴を掘ったとしか言いようがない。アップルは、“泥棒に追い銭を与えた”ようなものだろう。 インテル史上最大の痛恨のミスジャッジ アップルのiPhone用APの生産を受託するか、しないか? インテルのその判断は、半導体業界の歴史の転換点になった。 もし、インテルがアップルの生産委託を引き受けていたら、歴史が変わっていた。インテルはスマホ用APで確固たる地位を築いており、したがって、インテル史上最大の危機などに直面することはなかっただろう。そして、オッテリーニは新事業を成功させたCEOとしてその功績を称えられ、今もなお、CEOとして君臨していたであろう。 逆に、サムスン電子が漁夫の利を得ることもなかった。鳴かず飛ばずだったファンドリービジネスで躍進することはなかっただろうし、現在のサムスン電子のドル箱となっているGALAXYをつくることもできなかったかもしれない。 1つの判断が、これほど大きなインパクトを与えることになるとは驚くばかりだ。未来を予測することは、かように難しいのである。まったくもってオッテリーニ元CEOは、インテル史上最大の、痛恨のミスジャッジをしでかしてしまったとしか言いようがない。 GALAXYの売れ行きが急降下したサムスン電子 スマホ出荷台数で世界シェア1位となり、iPhone用APの生産も委託され、サムスン電子はこの世の春を謳歌していた。ところが、それも長くは続かない。2014年に入って、GALAXYの売れ行きに急ブレーキがかかったからだ。 この原因は、100ドルスマホなど、低価格スマホが急速に普及したことによる。特に、2013年に4.5億台と世界最大のスマホ市場となった中国で、低価格化の進行が激しい。 この低価格スマホの仕掛け人は、台湾のファブレス、メディアテックである。工場を持たず、半導体の設計だけを行うファブレスが、なぜ、低価格スマホを牛耳ることができたのか? 米国のエレクトロニクス誌“EE Times”の主任国際特派員として中国の半導体を取材している吉田順子氏によれば、その第一の要因は、「ソフトウエアの開発に注力したことだ」という(“EE Times”2012年10月25日)。 冒頭で述べた通り、APはスマホにとって最も重要なハードウエアであるが、そのAPを制御しているソフトウエアがさらに重要である。そのソフトウエアの出来如何によって、スマホの使い勝手などが大きく左右されるからだ。 ところが台湾では、優秀なソフトウエアエンジニアが不足していた。そこで、メディアテックは中国本土に目をつけ、優秀なソフトウエアエンジニアを片っ端から雇っていったという。後からエンジニアを探しに来た日本メーカーは、「メディアテックの通った後はぺんぺん草も生えていない」と言ったという。 靴屋でも明日からスマホメーカーに こうして開発した制御ソフトウエアとAPをセットにして、メディアテックは、スマホ端末メーカーに提供している。さらに、メディアテックは、そこに、スマホの設計図である「レファレンス」をつける。その上、推奨部品リストまで添付する。 つまり、スマホ端末メーカーは、メディアテックからAPさえ買えば、制御ソフトウエアはついてくるし、設計図は手に入るし、あとは推奨部品リストに従って部品をかき集め、組み立てるだけなのだ。その結果、中国では、「靴屋でも明日からスマホメーカーになれる」と言われている。 こうして、中国では、大した開発費もかけずに、そこそこの性能のスマホを、極めて安価につくれるようになった。そして、中国の地場メーカーが台頭し、格安スマホが急速に普及したのである。 図2に、2012年1〜3月期および2014年1〜3月期の中国市場におけるスマホの企業別シェアを示す。独自にAPを開発しているサムスンがシェア1位である。しかし、この2年間で24.9%から18.1%に大きくシェアを落とした。 図2 中国市場におけるスマホの企業別シェア (出所:易観国際の調査結果) 一方、メディアテックからAPを調達するようになった中国メーカーのレノボ、クールパッド、ファーウエイ、シャオミが、シェア2位から4位までを独占した。
2012〜13年の中国市場におけるスマホ用AP出荷個数のシェアを見てみると、2012年は米クアルコムが52%のトップシェアを獲得していた(図3)。ところが、2013年に、メディアテックがクアルコムを逆転し、シェア47%でトップに躍り出た。 図3 中国市場におけるスマホ用プロセッサの企業別シェア (出所:台湾の拓撲産業研究所調べ、出荷数量ベース) このように、スマホ用APでメディアテックが主役に躍り出た。2014年以降もメディアテックのこの勢いは続くだろうと予測していた。だが、その矢先に思わぬところから伏兵が現れた。
驚異的な低価格で躍進する中国シャオミ 2014年4〜6月期に、スマホの中国市場では、中国シャオミがサムスン電子を抜いて、シェアトップに躍り出た(図4)。サムスン電子は、レノボにも抜かれて3位に後退した。また、シャオミは、同年7〜9月期に、世界シェアにおいても、サムスン電子とアップルに次いで3位に進出した。 図4 中国市場における企業別スマホシェア (出所:IDCおよびCanalysのデータを基に作成 ) この躍進の背景には、メディアテックのAPの恩恵もあっただろう。しかし、それだけではない。シャオミにはいくつかの特徴的なビジネスモデルがある。
まず、マーケテイングはオンラインでの口コミに頼り、販売経路もオンラインに限定している。こうして、製品に流通や販促費が加算されないようにし、コストを削減している。また、端末は原価に近い価格で売りさばき、利益はアクセサリやオンラインストアで稼いでいる。 この結果、驚異的な低価格化が実現している。例えば、iPhone6の中国での販売価格は800ドル強だが、小米の人気機種「Redmi(紅米)」はその約4分の1である。このような低価格もあって、オンラインで販売すると一瞬にして売り切れることも多いという。 この低価格化について、2013年8月下旬に、Googleからスカウトされたヒューゴ・バラ副社長は、「イノベーションはぜいたく品ではなく、万人のためのものだ」「200ドルのコストで作れるものを600ドルで販売すべきではない」と述べている(「ウオールストリートジャーナル」2014年10月29日)。 ただし、シャオミのスマホは「安かろう悪かろう」ではない。サムスン電子やアップルに比べると小回りがきくシャオミは、「先端技術の採用が世界大手よりも早いケースもある」。また、「サムスン電子もアップルも『問題ない』と言っているのに、なぜシャオミはけちをつけるのか」というほど部品の品質にこだわりを見せるという(「日本経済新聞」2014年11月12日)。 つまり、シャオミは、可能な限り高性能・高品質なスマホを、可能な限りの低価格で提供しているのである。シャオミの躍進の秘訣はここにある。 APの主役はシャオミへ 中国市場でシェアトップに立ったシャオミは、次のステージへの移行を目指している。 まず、中国以外に販路を拡大し始めた。前出の吉田氏によれば、シャオミは既に香港、台湾、シンガポールに製品を提供し、今後はインド、マレーシア、さらにアジアの数カ国、その他、イタリアにも進出を検討しているという(“EE Times”、2014年11月28日)。 また、シャオミは、中国の動画サイト最大手の「優酷土豆」(北京市)と資本業務提携を発表した(「日本経済新聞」2014年11月14日)。1000万ドルを出資して専用の動画コンテンツや動画アプリを共同開発する。 加えてシャオミは、中国インターネット検索最大手である百度傘下の動画サイト大手「愛奇芸」と資本業務提携をすると発表した(「日本経済新聞」2014年11月20日)。18億元(約340億円)出資し、愛奇芸ともスマホ用の動画コンテンツを共同開発する。 立て続けに発表された2つの資本業務提携は、「ソフトで稼ぐ」ビジネスモデルをより強化することに狙いがある。 そして、シャオミは、中国ファブレスのリードコアと組んで、APの内製化を始めると発表した(「半導体産業新聞」2014年11月19日)。これには驚いた! シャオミもアップルのジョブズと同じように、スマホの付加価値を最大化するためには、APを自前でつくるしかないという結論に至ったわけだ。 シャオミは、2015年には1億台以上のスマホを出荷する。APの内製化が実現すれば、1億個以上のシャオミ製APが世に出ることになる。今後、スマホ用APの主役は、メディアテックからシャオミに交代するのかもしれない。 【もっと知りたい! あわせてお読みください】 ・「スマホへの勝算なき執着、インテルも『UFOが来る』と信じているのか」 ( 2014.10.07、湯之上 隆 ) ・「シャオミはなぜ、低価格スマホで利益を出せるのか?」 ( 2014.11.07、小久保 重信 ) ・「サムスン、ベトナムでスマホの生産工場増強」 ( 2014.11.12、小久保 重信 ) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42350
中国のスマホメーカー、アジア地域で勢力拡大 自国市場の成長減速背景にインドなどの新興国に進出 2014年12月04日(Thu) 小久保 重信 米IDCが12月2日に公表した調査リポートによると、アジア太平洋地域(日本を除く、以下同じ)における今年7〜9月期のスマートフォン出荷台数は、1年前に比べ24%増加し、4〜6月期からは6%増加した。 休暇中もスマホが手放せない国民は? スマホを片時も離さないアジア人旅行者〔AFPBB News〕 ただしこれらの出荷台数伸び率は過去数年における伸び率と比較すると低下している。その理由は、この地域の最大市場である中国の勢いが衰えつつあり、同国スマートフォン市場の全盛期が終わりを迎えつつあるからだという。 今年7〜9月期における中国のスマートフォン出荷台数は4〜6月期から1%の伸びにとどまった。これに対し、アジア太平洋地域の他の新興国は同22%増加した。 中国スマートフォン市場の成長鈍化を背景に、同国の主要メーカーは国外進出を加速させている。そうした中国メーカーの活動が、中国以外のアジア太平洋地域の出荷増に寄与しているという。 上位5社のうち4社が中国メーカー 今年7〜9月期におけるアジア太平洋地域のメーカー別出荷台数を見ると、最も多かったのは韓国サムスン電子で、その出荷台数シェアは16.0%。これに次いだのが中国シャオミ(小米科技=Xiaomi)でそのシェアは10.4%だった。 このあと、中国レノボ・グループ(聯想集団)の9.1%、中国ファーウェイ(華為技術)の6.6%、中国オウポ(広東欧珀移動通信、Oppo Mobile Telecommunications)の5.7%と続いている。 つまり、上位5社のうち4社は中国メーカー。このうち2位のシャオミの出荷台数は1年前の3倍以上に増え(210.2%増)、5社の中で最も伸びた。 シャオミは昨年まで中国市場だけで事業展開していたが、今はシンガポールやインドを手始めに本格的な国外展開を進めており、マレーシア、インドネシア、タイなどへも進出する。 一方、サムスンのアジア太平洋地域における出荷台数は1年前から20.3%減少。上位5社の中で前年実績を下回ったのは同社だけだった。 サムスンは今年、インドの携帯電話市場で首位の座をインドメーカーに明け渡した。また中国のスマートフォン市場ではシャオミが初めてサムスンを抜いて1位になったと、英国の市場調査会社が報告した。 サムスンの今年7〜9月期における、スマートフォンを含むIM部門(ITとモバイル通信)の営業利益は1兆7500億ウォンとなり、1年前から74%減少。その営業利益率は7%と、2008年末以来の低水準だった。同社はモバイル分野で苦戦している。 インド市場の成長は最速 なお、IDCは日本を除くアジア太平洋地域を「APEJ(Asia/Pacific excluding Japan)」というグループに分類し、同地域のスマートフォン市場を調査している。 このAPEJはさらに「成熟国市場」と「新興国市場」の2つに分類されており、前者には「オーストラリア」「ニュージーランド」「韓国」「シンガポール」「香港」「台湾」が、後者には「中国」「インド」「インドネシア」「マレーシア」「フィリピン」「タイ」「ベトナム」などが含まれる。 IDCによると、このうちインドの7〜9月期における出荷台数は2300万台となり、4〜6月期から約500万台増えた。インド市場はアジア太平洋地域の中で最も成長速度が速いという。 インドには、マイクロマックス ・インフォマティクスやラバ・インターナショナルといった地場メーカーがあるが、これらは、画面サイズが4.5〜5インチ、価格が約100ドルの端末で出荷台数を伸ばしている。 インドで首位のマイクロマックスは7〜9月期に同国で20%のシェアを獲得し、2位との差を広げたという。 インド以外の新興国も高い伸び アジア太平洋地域におけるその他の新興国も伸び率が高く、その7〜9月期の合計出荷台数は2300万台に達した。とりわけ、インドネシア、フィリピン、タイは1年前のほぼ2倍となった。これらの国は東南アジアのスマートフォン市場を牽引しているという。 IDCによると、各国の地場メーカーや中国メーカーは、世界ブランドを展開する大手メーカーのシェアを奪っている。その傾向は東南アジアで顕著だという。 東南アジアにおける大手メーカーの7〜9月期におけるシェアは43%となり、1年前の62%から大きく低下した。 なお推計によると、2014年におけるアジア太平洋地域のスマートフォン年間出荷台数は6億4190万台。このうちオーストラリアや、韓国、シンガポール、香港、台湾といった成熟国・地域の合計台数はわずか5700万台。 一方、中国、インド、インドネシア、フィリピン、タイなどを含む新興国の合計台数は5億8490万台で、アジア太平洋地域全体の91.1%を占める。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42372
マーケティングで、日本は世界の先生 グローバル企業が日本で猛勉強中 2014年12月04日(Thu) JBpress 日本が世界に誇れるものと言えば、まず思い浮かぶのが品質が高く価格は高くない「メード・イン・ジャパン」の製品だろう。最近は工業製品だけでなく、日本の農産物も世界中で人気がある。
このメード・イン・ジャパンはさらに進化している。LEDの研究開発で日本人3人がノーベル物理学賞を受賞したのをはじめ、先日はトヨタ自動車が世界に先駆けて燃料電池車の量産車を発表した。 世界最速で進む日本に学ばなければならない クリス・ケネリー日本テトラパック社長 もはや品質だけでなく研究開発の分野でも世界の「先生」になっていることを証明していると言っていいだろう。
さて、これとは全く別の分野でも日本は世界の先生になっていることをご存じだろうか。マーケティングの分野である。 今年7月に日本テトラパックの社長に就任したクリス・ケネリー氏は言う。 「日本という国はいろいろな意味で世界のリーダーであることを痛感させられる半年間でした。日本で生まれた製品がこれからもどんどん世界に広がっていくのは間違いありません」 ケネリー社長が指摘するのは、高齢化社会を世界で最も早く迎え始めている日本には、様々なマーケティングの種が眠っているということである。 例えば、同社が行ったウエブ調査によると面白い現象が日本で起きているという。500ミリリットル入りペットボトルの飲料をすぐに飲み干す人は4割以下しかおらず、6割以上の人が一度飲んだあと再び栓をしてあとで飲むか、あるいは捨ててしまっている。 長く続いたデフレ経済の影響か、500ミリリットル入りのペットボトルは「50ミリリットル増量」を謳う製品が多く見られるが、実はそういう市場は案外少ないようだ。 また、日本で一般的な1リットル入りの牛乳パックも似たような現象が起きているそうだ。同社の調査によると、賞味期限内に1リットルを問題なく飲み切ると答えた人は65%しかいなかったという。 残りの人は賞味期限内に何とか飲み切ることができるか、あるいは飲み切れずに捨ててしまっていると答えている。こうしたデータを基に日本テトラパックは、購入される1リットル入りの牛乳のうち180〜350ミリリットルは余らせてしまっていると推定する。 首を上に30度持ち上げないと飲み切れない つまり、高齢化が進み始めた日本では、「多いことは良いこと」ではなくなりつつあるのだ。これから高齢化が本番を迎える日本でこの傾向はますます顕著になると見られる。 さらに、ペットボトルなどの容器に入った飲料を飲む際、とりわけ女性では体への負担が大きくなってきているという。 どういうことかと言うと、例えばペットボトルに入ったお茶を飲み干そうとすると、人間が正面を向いた状態から約30度ほど顔を上に向けて飲まなければならない。この動作が高齢になって筋肉の衰えた女性には負担になり始めているそうなのだ。 日本テトラパックの鍛冶葉子・執行役員マーケティングディレクターは言う。「そうした負担を下げて上げることが日本市場ではとても重要になっています。当社では飲み口を容器の真ん中ではなく端に持ってくることで、上を向く角度が約半分の15度ですむようにしました」。 ブロー成型するペットボトルでは飲み口を端に持ってくることは難しいが、紙ボトルだと比較的簡単にできる。「紙を使った容器のチャンスだととらえています」と鍛冶執行役員は言う。 先進国で真っ先に高齢化時代を迎える日本は、グローバル企業のマーケティング担当者にとっては重要な市場になっているそうである。 「日本の後を世界の先進国は間違いなく追っていきます。さらには中国など人口の多いアジアの国々も高齢化のスピードを上げています。日本市場は世界中で商売している私たちにとって欠かせない存在になっているのです」 ケネリー社長はこう話す。高齢化は良いイメージで語られることは少ないが、ことマーケティングの世界では、「日本は世界の先生」になりつつあるようである。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42369 |