02. 2014年8月06日 16:47:48
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41376 私についての情報は、誰が、どこで利用するのか 個人情報という価値の高い「流通商品」 2014年08月06日(Wed) 川口マーン 惠美 オンラインでホテルを予約したのは、2カ月以上も前のことだ。出発が近づいてきたので、道順や所要時間を確認しようと思い、グーグルマップに目的地を入れた。すると、地図上の目的の地点に、「○月○日から○○ホテルに2泊」という表示が出た。一瞬、「え? なぜ知ってるの?」と唖然。私の行動予定をグーグルが把握している。 そういえば、パソコンを使っていてアレッと思うことは、割としょっちゅうある。例えば、冷蔵庫が必要になってネットで探すと、そのあと、ネットサーフィンの最中に続々と冷蔵庫の広告が入る。そして、冷蔵庫の購入後は、広告は来なくなる。頭の中を覗かれたような気分だ。 各種のカードから流れ出す個人の生活情報 グーグル「忘れられる権利」要請7万件超、大手メディアにも影響 インターネット上での「忘れられる権利」を認める判決を受け、米検索大手グーグル(Google)が欧州の利用者を対象に5月30日に受け付けを始めた個人情報の削除要請が、7万件を超えたことが7月3日、分かった〔AFPBB News〕 前述のグーグルマップのことを長女に話したら、彼女は、「グーグルは何でも知ってるのよ」といともあっさりと言った。そういえば彼女は、生活情報が筒抜けになることを嫌って、各種のポイントカードも一切使わない。 それに比べて私ときたら、あちらのポイントカード、こちらのメンバーズカード、そして、何の役に立つのかも分からないようなカードまで、お財布の中にどっさりある。 ただ、その私も、クレジットカードだけはほとんど使わなくなった。以前、ソウルで乗り継ぎをしたときにカードを空港で使ったら、その直後、2件の不正使用が見つかり、嫌気が差したからだ。いちいち明細を見て、本当に使ったかどうかを確かめるのは、この上なく面倒くさい。忘れてしまっているものもある。 当時、なぜ不正を発見できたかというと、私が、行ってもいないイギリスで買い物をしたことになっていたからだ。これが日本やドイツの店だったなら、見逃していただろう。見逃しても不思議でないほどの、ちょうどいい金額でもあった。それ以来、こんな面倒なものはいらない!と思い、ほとんど使わない。4枚あったのも1枚にした。 しかし、たとえクレジットカードを駆逐しても、他のカードを使えば情報はどんどん漏れる。ポイントカードというのは、ポイントがたまるお店が多いカードほど、便利で得をしたような気分になるが、これが曲者。 お店がポイントカードを出す目的は、お客に利益を還元することではなく、言うまでもなく、お客の個人情報の収集だ。カードが広範囲に使われれば使われるほど、その顧客の情報は完璧なものになっていく。しかも、収集され、解析された情報はそこに留まらず、販売される。本人が知らないうちに情報は拡散されるのである。 最近、買い物をして、ポイントカードを出すたびに、いったい私という人間について集められている情報はどんなものなのだろうかと想像する。名前、生年月日、メールアドレスは、カードを作るときに開示している。たいてい、住所、性別、電話番号、家族構成なども。 それにいろいろな情報が加わっていく。使う航空会社はどこ、買い物はどこ、趣味は何、どこのホテルに泊まり、どこのレストランで何を食べるかなどという情報は、難なく収集できるだろう。 1年に何度もドイツと日本を往復するというのは、かなり特殊な行動様式のはずで、あまり役に立たない情報? 買い物の傾向はもちろんすべて丸見え。洋服は日本で購入、靴はドイツ。ブランド品を買う癖はないが、ときどき映画とオペラに行き、よくオンラインで本を買う。コーヒーは日常必需品、ワインの消費が若干多い・・・? すごい! まるで私の家計簿ではないか。お金の出納を管理することが極力苦手で、未だに自分が毎月、何にいくらお金を使っているかということが一向に把握できない身の上としては、料金を払ってでもいいから、一度見せてもらいたい気がする。 いや、そんなのんきなことを言っている場合ではなかった。今、挙げた程度の情報なら、別にどうってことはないが、問題はその先だ。この情報収集が、将来、いったいどこへ向かっていくのかが見えない。 情報技術の発達の先には罠が待っている? 個人情報などという言葉が流行っているが、何のことはない、実際は、個人情報は保護されず、独り歩きしている。現代社会において、情報は非常に価値の高い流通商品なのである。 ドイツ人は、個人情報についてとりわけ神経質で、国勢調査まで否定しようとするお国柄だ。その意識はまことに高いと思うが、しかし、覗かれている事実は変えられない。 現在、ドイツで大問題になっているアメリカの情報収集しかり。メールも、フェイスブックも、スカイプも、皆、その中身が収集されていたという。最近のアンケートでは、ドイツ人のアメリカ人に対する信頼度は、急激に落ちてしまった。 スノーデン暴露が世界に及ぼした不安 元CIA職員のエドワード・スノーデン容疑者による数々の暴露は、米当局の世界的なスパイ行為を暴き、監視国家に対する恐怖を呼び起こした〔AFPBB News〕 いずれにしても、情報の漏洩は、すでに抵抗しようのないところまで進んでいるのではないか。繰り返すようだが、これが将来、私たちにどういう結果をもたらすのかが分からない。 国家にすべて統制されるという、警察国家的な方向に行かないという保証もない。リベラルな考えの極めて強いドイツ人が、情報技術の発達に夢中になっているうちに、監視統制の罠に落ちるとしたら、あまりにも皮肉な話ではないか。 ビッグデータという言葉をよく聞く。巨大で複雑なデータ集合の集積物を表す用語だ。そんな雑多で膨大なデータ群など、これまではさほど重要視されていなかったが、今では急に宝の山となりつつある。 ビッグデータの特徴は、数が膨大で、種類も膨大で、しかも、頻繁に変化するということだそうだ。つまり、数値や文字列だけではなく、文章、音声、動画、メール、ひいては、いろいろな機器が発するデータなど、すべてが含まれる。 そこから、質の良い、利用可能な情報を抽出し、解析し、分析し、最終的に可視化する。それらが最終的に、商品開発の傾向や、研究の品質決定、疾病予防、犯罪防止、リアルタイムの道路交通状況判断など、様々なことに利用される。 会員数が8億人を超すと言われているフェイスブックなども、ここに潜む情報は膨大な付加価値を持つのだろう。 日本でも、最近、通信教育の大手ベネッセにおける顧客情報流出事件が起こった。外部から雇われていたシステムエンジニア(39歳)が、ベネッセ社の顧客情報を自分のスマートフォンに取り込んで売却したというが、現在分かっているだけで、情報総数が約2260万件。ちょっと想像できない数だ。そんな大量の情報を、スマホに取り込めるということさえ、私には驚きだった。いずれにしても、情報は商品なのだ。 受験生用のソフトを売ろうとする会社がベネッセの情報を入手したなら、どの家庭が受験を控えた子供を持ち、教育に熱心で、経済力があるかということが特定できる。そうなれば、ダイレクトメールも、しらみつぶしに老人家庭にまで送る必要はない。当然のことだが、魚を釣るには、釣り堀でやるのが一番だ。 とはいえ、このような利用の仕方は、私にも理解できるということで、まだまだ他愛無いものなのだろう。情報利用の真の姿は、残念ながら素人にはよく見えない。 技術の進歩で便利になることと裏腹の恐怖感 最近、この20年の技術の進歩はあまりにも早過ぎたという恐怖感のようなものに囚われるときがある。しかも、そこには、その進歩は良くない方向に向かっているのではないかという、ほぼ確信に近い疑問が伴う。 近い将来、ドイツでは家庭の全電子化が始まり、家電製品たちは自分で考え、家政を管理してくれるようになるそうだ。冷蔵庫は足りない物を注文し、エアコンは帰宅する頃にちょうどいい室温を提供してくれる。ということは、能力のあるハッカーなら、そこに不法に割り込んで、それらを遠隔操作することだってできるのだろう。やっぱり怖い・・・。 車は便利な物で、私でも使いこなせる。だからといって、自分で造れと言われればお手上げだが、少なくとも、エンジンがどういうふうに機能するのかは学校でも習ったし、動かなくなれば、私でもその原因を想像することぐらいはできる。これは電気系統かな、それともエンジントラブル、あるいは、単なるガス欠とか。 コンピューターも便利で、特にインターネットには絶えず世話になっている。一瞬でこの原稿を日本に送れるなど、20年前には想像もできなかった。調べ物もあっという間だ。だから、使いこなしていると言えば、言える。 ただ、私がこれらによって、私とまるで無関係の場所、それも世界中のネットワークに繋がっているかと思うと、とても不気味に思えてくる。 そもそも、インターネットもパソコンも、なぜ機能するのかが全く分からないのだ。買った時点でパソコンに罠が仕掛けてあっても、もちろん分からない。動かなくなれば、私の場合、そのまま救助を待つしかない。 つまり、こういう状態を、“使いこなす”と言えるかどうか? 技術の進歩に関しては、そのうち、思いもよらない大きなツケがくるような気がする。まず、皆がここまでインターネットの中毒症状に陥ってしまっているのも、ひょっとすると、もう、罠にはまってしまっている証拠かもしれない。 |