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「医者と患者は対等のパートナー」と上野さんはいう(※イメージ写真)
日本人の9割は2流? “患者格差”はどこで生まれるのか〈dot.〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160426-00000288-sasahi-hlth
dot. 4月29日(金)11時30分配信
「今、病院のなかでは“患者格差”が生まれています」
そう警鐘を鳴らすのは、全米No.1といわれる、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの医師、上野直人さんだ。がん治療の先端を担う医師として、広く知られている。その上野さんが、4月上旬に出版した『一流患者と三流患者』(朝日新書)では、「患者さんの“差”が、受けられる治療やその後の健康に大きく関連するようになってきているのです」と書かれている。
医療格差じゃなくて“患者格差”――?
そう疑問に思うことだろう。がんなど大きな病気にかかったら、「どこの病院に行くか、どの医者に診てもらうかが大事なのでは」と。
「どんなに情報を集めて、病院ランキング上位の病院に行ったとしても、名医を探してみたとしても、安心はできません。ブランド病院であることや、名医であることが、あなたにとって最適な治療を保証するものではないからです」(上野さん)
……どうやら病院や医者の良し悪しではなく、病気になると患者の「スキル格差」によって、選び取れる治療が変わってしまうという。なぜなら医療技術の進歩によって、年々新しい治療法や薬がどんどん生まれていて、患者が選び取れる選択肢はどんどん増えているからだ。医療側も忙しくて、内情は新しい知識に追いつこうと青息吐息。だからこそ、「お医者さんにお任せ」というスタンスでは危険、というわけだ。
■日本人の9割は、二流患者?
上野さんは、本のなかで“患者格差”を以下3つに大別している。
【一流患者】
・医者のいうことを鵜呑みにしない。質問を繰り返して、ベストな治療を選択する
・情報に振り回されず、自分でも調べる習慣がある
【二流患者】
・医者に質問をしない。「はい、分かりました」「それでお願いします」が口癖
・医者のいっていることを理解はするが、自分で調べたり自ら選択をしない
【三流患者】
・自分の病気や医者のいっていることを理解しない。理解しようとしない
・病院や医者に文句ばかりいう。病院や医者を「悪者」と決めつけている
おそらく日本の多くの患者は、二流患者に分類されるのではないだろうか……。きっと誰もが病気になったら、「自分は医療の専門家ではないから、しっかりお医者さんに任せたほうが安心」という気持ちが、どこかにある。あるいは、「医者が上、患者が下」という意識があって、医者にモノをいいにくい雰囲気もあるかもしれない。
「日本の患者さんの多くは、損をしています。アメリカの患者さんの多くは、医者に質問をするだけでなく、治療法の提案もどんどんしてくれます。もちろん、医者のいうことを鵜呑みにしませんし、自分自身で情報収集することも忘れません。医者と患者は対等のパートナーなのです」(同)
今や考えられる治療法や薬の選択肢が増えているので、医者であっても「何がベストか」という判断は、迷いが生じるものだという。そういう医療の現状で、日本の患者の多くが、まだまだ「お医者さんにお任せします」というスタンスは、アメリカの医師から見ると、ちょっと信じられないのかもしれない。
だからこそ「誰もが一流患者を目指すべきです」と、上野さんは力説する。「医者のいいなりに治療をして、後になってこの治療法で本当に良かったのか、別の方法があったのではないか……と後悔するのが、いちばんもったいないケースなのです」と。
■医者だって人間だもの
上野さんが、患者のスキル向上を説くのには理由がある。
がん治療を専門とする上野さん自身が、8年前の43歳でがんにかかったからだ。悪性線維性組織球腫(あくせいせんいせいそしききゅうしゅ)という珍しいがんで、医者であるのに「もう治らないのではないか」「死の恐怖」に襲われてしまったと、述懐する。
つまり、頭では「医者に頼りきるのではなく、患者もしっかりしなければ」と分かっているのに、いざ自分ががんになると、ついつい何も考えられなくなってしまった、と。そんなご自身の体験があるからこそ「治療で後悔してしまうような二流患者のことは、自分のこととしても、よく分かるのです」と、上野さん。
そう、「医者の正論」が患者を苦しめることもある。
頭では分かっていても、なかなか自分の病気に向き合えないからこそ、患者は苦しいのだ。患者の立場に立脚して、いかに一流患者になればいいのか……。
「でも、一流患者を目指せといっても、本当はそんなに難しいことではないのです。患者さん自身が主体性をもって、医者としっかり対話や交渉をすることです。それは、ビジネスシーンと同じこと。打合せや商談で、丸腰で相手のいいなりになる人はいませんよね」(同)
では、具体的にどうすればアメリカの多くの患者さんのように一流患者になれるのだろう? そのノウハウや心得は、『一流患者と三流患者』のなかで詳しく述べられている。
主だったところを抜き出してみてみよう。
・医者から治療方針を告げられたら、必ずその根拠と他の選択肢を尋ねる
・薬を飲む際も、必ず根拠を尋ねる
・医者にいわれたことを鵜呑みにしない。自分で調べるクセをつける
・家族や友人などに付き添いを頼み、一人では病院へ行かない
・診察室の会話は必ず録音する
……etc.
といった、誰にでもできるようなシンプルなノウハウだ。
それでも、がんといった大きな病気にかかってしまうと、ついつい医者に「それでお願いします」「わかりました、がんばります」と答えてしまうもの。だからこそ、今病気であっても病気でなくても、誰もが「一流患者の道」を歩み出すべきなのだろう。
ちょっとした風邪で医者にかかったとき、「他の病気は考えられないでしょうか?」と尋ねてみるなど、今から「主体的な患者(=一流患者)」になるためのレッスンをはじめたい。
アメリカでは「ペイシェント・エンパワーメント」という言葉が浸透してきている。これは、「患者力、患者さん自身の力こそが、医者から最高の医療を引き出せる」ということを指す。いっぽう、日本ではまだまだ「病院ランキング」に頼ったり、「スゴ腕医師」を探し出すことだけに躍起になってしまう。
そんな「ブランド」に頼るのではなく、今やもう「自身の“患者ランキング”を問うべき時代」――が到来しようとしている。
上野直人(うえの・なおと)
1964年、京都府生まれ。和歌山県立医科大学卒業。ピッツバーグ大学付属病院にて一般内科研修後、米国内科専門医取得。米国一のがんセンターといわれるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターに就職し、腫瘍内科医として研究、臨床に携わる。米国腫瘍内科専門医取得後、MDアンダーソンがんセンター助教授を経て、現在は同教授(永代教授)。腫瘍分子細胞学博士(Ph.D.)。専門は、乳がん、分子標的療法開発。標準的な治療方法の確立から、新しい分子標的および遺伝子治療の開発まで、がん治療の先端を担う。がんの治療効果を最大にするために必要かつ最適とされるチーム医療の推進にも力を入れ、日本でも医療従事者と患者向けの教育活動を行う。著書に『最高の医療をうけるための患者学』(講談社)がある
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