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蔓延する「ウソ」 新薬が危ない!深刻な副作用、既存薬をただ合体
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13324.html
2016.01.16 文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士 Business Journal
本連載前回記事『薬の原価率はわずか1%で暴利?安価で危険な中国・韓国製が大量流通…』(http://biz-journal.jp/2016/01/post_13233.html)において、薬の特許が切れてから発売されるジェネリック医薬品について述べました。今回はジェネリックにシェアを奪われないように奮闘する先発メーカー側についてみていきたいと思います。
2009年から10年にかけて、日本では新しい降圧剤が次々に誕生しました。一見すると日本の製薬会社の開発能力は優れているようですが、実態は逆です。これは、なかなか開発することができないゆえに生じた現象なのです。
製薬会社にとって理想的な展開は、次々と独創性のある強力な新薬を開発して、常に新陳代謝が繰り返されることです。そうであれば、たとえ売れ筋の薬が特許切れになって、ジェネリック医薬品がゾロゾロ出てきても、メーカーはびくともしません。
しかし、日本の製薬会社は、開発力で欧米のビッグファーマ(巨大製薬会社)に大きく後れを取っているのが現状で、新薬の開発は苦戦を強いられています。新しいヒット商品を生み出せない会社にとって、主力商品の特許切れは非常に恐ろしいことなのです。
通常、新薬は開発してから20〜25年間の特許期間が認められ、その間は独占的に生産販売ができます。しかし、特許期限を迎えた途端、ジェネリックがゾロゾロ出てきてシェアを食い荒らすので、利益を得ることができなくなります。
製薬会社としては、そのような事態はできるだけ先送りしたいのが本音ですから、ジェネリックを封じる手段を講じます。
もっとも使われる方法は、「配合剤」の新薬づくりです。具体的には、特許期限切れが近くなった薬を、ほかの薬と合体させて「新薬」として申請するのです。承認されれば、新たに特許期限が設定されるので、ジェネリックのメーカーはその期限が切れるまで新薬のほうには手が出せず、1世代遅れた「旧薬」のジェネリックを売り出すことになります。
売れ筋の薬を合体させてつくった配合剤は、患者さんにとっても都合のよいことが多く、メーカーにとっては一石二鳥なのです。
09〜10年に降圧剤の分野で配合剤の新薬が次々に誕生したのは、ブロプレス(武田薬品工業)、ディオバン(ノバルティスファーマ)など、降圧剤のブロックバスター薬(薬効で莫大な利益を生み出してきた薬)に期限切れが近づいたものが多かったからです。
■質の低いジェネリックも多数
しかし、ここにきて状況は一変しました。とどまるところを知らない医療費の膨張に歯止めをかけるため、政府は2018年3月までにジェネリックのシェアを欧米並みの60%に引き上げることを目標に掲げ、施策を次々に打ち出すようになったのです。
先発薬の5割くらいの価格水準に引き下げられただけでなく、薬局に対しては、ジェネリックを出す割合が高いほど報酬が加算される仕組みが導入されました。同様に医師に対しても、薬を処方する際には先発薬指定でなく、薬局でジェネリックも選択できる書き方にすると診療報酬が加算されるようになりました。
これにより患者側は、医師や薬剤師からジェネリックを勧められるケースが増えたのです。日本では5〜10剤併用も珍しいことではないので、毎月の薬局窓口での支払いが2000〜3000円減ったと喜んでいる方が多くいます。
その一方で、ジェネリックを処方された方から、「効き目が一気に出てすぐ終わる」「効き始めるのが遅すぎる」「発疹が出たので元の薬に戻したい」といった不満もあちこちで聞かれるようになりました。
先発薬をコピーした商品なのに、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。最大の要因は、コピー商品といっても主成分が同じなだけで、それ以外の技術はメーカーによってかなりばらつきがあるからです。
ジェネリック薬品でも、優秀なメーカーは独自に工夫をするので、先発薬よりも評判のいいケースもたくさんあります。その一方で、品質を維持する技術などが低いところが多くあり、それが早く効きすぎる薬や、効かない薬が頻出する元凶になっているのです。
■中国、韓国から輸入したジェネリックは要注意
効かないジェネリック、副作用が出るジェネリックが生まれるもうひとつの要因は、安全性や品質管理に問題のある外国製の安いジェネリックを日本の会社が輸入し、自社のパッケージに詰めて販売しているケースが多いことにあります。
このような、「外見は日本製、中身は外国製」といった薬は、日本で流通しているジェネリックの約5割を占めるともいわれています。主要な輸入先は、購入金額ベースでみると韓国がトップで全体の31.0%を占めています。次いで中国が12.3%ですが、スペイン9.9%、イタリア8.9%、ハンガリー8.4%など、欧州からの調達も多いようです。
成分数ベースでみるとシェアが最も高いのはイタリアで、全体の22.5%です。以下、韓国15.7%、中国14.0%、インド10.2%と続きます。
韓国は中小企業の技術力が低いうえ、安全面への配慮が十分にできない傾向があります。12年には二度、日本に向けて輸出した原薬が製造品質管理基準に適合しないことが判明し、厚生労働省から各メーカーに改善命令が出たため、高血圧治療薬アテレック(一般名:シルニジピン)のジェネリック、抗精神病薬リスパダール(一般名:リスペリドン)のジェネリックなどが一定期間販売停止に追い込まれています。
中国に関しては、食の危険性だけに目が行きがちですが、14年9月に医療関連の死者が年間40万人いるということが京華日報で報じられ、日本でも話題になりました。しかも大半は医薬品の服用ミスが原因だと報じられています。
日本でも、ひと昔前は医師や薬剤師の指示通りに飲まない患者が大勢いましたが、何百何千という単位で服用ミスによる死者が出たという話は聞いたことがありません。
下水道からくみ取った油を原料に製造した抗生物質が日本に輸出されていたと報じられたこともあるように、中国は安全性に関して無法地帯のような状態です。そのため、本当は薬の安全性に問題があるのに、原因を「患者の無知」にすり替えているような気がしてなりません。
■安全な薬の選び方
一昨年、日本ではジェネリックのシェアが50%を超え、今後も増加が見込まれています。筆者もジェネリックを全否定する気は毛頭ありません。患者さんの声や、データとして効果が先発薬と同レベル、あるいはそれ以上と評価されているものは積極的に活用すべきです。
ジェネックの使用を躊躇している方の多くは、インターネットで調べても、どのジェネリックが良くてどれが悪いかなどの情報が掴みにくいために踏み切れないようです。
このような場合は、ジェネリックに詳しい薬剤師に相談するのが一番です。調剤薬局では、ジェネリックの比率を上げることで調剤報酬の加算もありますので、ジェネリックについての情報を蓄積したり仲間同士で情報交換したりして、“ジェネリックのソムリエ”と呼べるほどの能力を持っている薬剤師もいます。
日本は今、コンビニエンスストアよりも薬局のほうが店舗数の多い時代ですから、自分に有益な情報を提供してくれる薬剤師を是非見つけてください。薬の専門家である薬剤師をしっかり活用して、有効で安全な薬選びをしてください。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)
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