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2015年12月04日 (金) 午前0:00〜[NHK総合]
時論公論 「化血研不正 "常軌を逸した隠ぺい体質"」
村田 英明 解説委員
製薬会社の「化血研」が血友病患者の治療などに使われる血液製剤を40年前から不正に製造し、問題が発覚しないように組織ぐるみで隠ぺい工作を行っていたことが明らかになりました。調査を行った第三者委員会は「常軌を逸した隠ぺい体質」だと厳しく非難。また、薬害エイズの被害者たちは再発防止を誓った被告の企業として許されない行為だと強く抗議しています。患者の安全を軽視した医薬品の製造はなぜ起きたのか。今夜の時論公論は、この問題について考えます。
化血研・化学及血清療法研究所は熊本市にある製薬会社で血液製剤やインフルエンザなどのワクチンを製造・販売している国内有数の医薬品メーカーです。
今回、問題となっている血液製剤は献血の血液を元に作られ、血友病患者の出血を防ぐ治療などに使われています。血液製剤の国内のシェアは30%、業界2位の大手で患者が化血研の薬に頼らざるを得ない状況の中で起きたのが薬害エイズです。
1980年代、血液製剤に混入していたエイズウイルスへの感染が血友病患者などの間で相次ぎました。1989年、薬害エイズの被害者たちが東京と大阪で国と製薬会社5社を相手取り損害賠償を求める裁判を起こし、96年に和解が成立しましたが、その際、被告企業の化血研は責任を認めて謝罪するとともに文書で再発防止を誓っていました。「安全な医薬品を消費者に供給する義務があることを深く自覚し、悲惨な被害を再び発生させることがないよう最善・最大の努力を重ねる」と。しかし、そうした誓いを立てたまさにその時に熊本にある化血研の工場では不正が行われていたのです。
不正は、いつから、どのような形で行われていたのでしょうか。
今回の問題は、厚生労働省に内部告発の手紙が届いたことから医薬品の審査や承認を行う医薬品医療機器総合機構が今年5月に化血研に立ち入り調査を行い発覚しました。国が承認した内容と異なる方法で血液製剤が製造されていたことがわかり、厚生労働省は6月に化血研が製造する12種類すべての血液製剤の出荷を停止させました。これを受けて化血研は第三者委員会を設けて調査を行い、おととい国に報告書を提出しました。
報告書によると不正は1974年ごろから行われ、薬害エイズ事件が起きた1980年代から90年代前半にかけて急増しています。具体的には12種類の血液製剤すべてで国が承認した内容とは異なる方法で製造が行われ、とくに「ヘパリン」という成分の添加が目立っています。製造の過程で出血を止める効果が失われていた製剤があり、ヘパリンを添加したところ止血の効果が保たれたことから添加するようになったとされています。
厚生労働省によるとヘパリンを添加したことによる副作用などの被害は報告されていないということです。ただ、今回の不正は医薬品の有効性や安全性を確保するためにある国の承認制度の根幹を揺るがしかねない重大な問題をはらんでいます。薬の製造方法を変更した場合は、その都度、国の承認を受けなければならないと法律で決められています。ルールが守られないと患者も医師も医薬品を安心して使うことができません。そうした重要なルールを破り、血友病患者や国民をだまし続けてきた責任は重いと言えます。
では、なぜ化血研は不正を辞めなかったのでしょうか。
報告書によると不正が増えた90年代はエイズウイルスが混入するリスクを減らすため、国が血液製剤を自給する方針を掲げ国内のメーカーが開発を競い合っていた時期と重なります。化血研は製造部門に人材を集め増産を始めます。
そうした中で、当時の製造部門の担当理事がヘパリンを添加したことが外部にもれれば改めて製造方法について国の承認を受けなければならず、製造を中断すれば供給に支障が出る。そう考えて製造方法の変更を隠し続けることにしたというのです。
さらに、今回の問題では周到に隠ぺい工作が行われていたことに驚かされます。
まず、国が査察を行う場合に備えて本物と偽物の2種類の「製造記録」を作っていました。おまけに文字も変えて国が承認した方法で製造したように見せかける偽物の記録は「ゴシック体」。ヘパリンの添加など実際の製造方法を記録した本物は「明朝体」にして社員が区別できるようにし、査察では偽物の記録を見せて当局を欺いていました。また、ヘパリンを大量に購入していることがわからないように薬剤を管理する「出納記録」のデータも改ざん。さらに、偽物の製造記録や出納記録は過去に遡って作られ、その際、紙に紫外線をあてて変色させ年代を古く見せかけるという徹底ぶりです。
こうした一連の不正について報告書は「製品の安全性や患者の安心を優先すべき製薬会社として、あってはならない重大な違法行為である」としたうえで、隠ぺい工作を20年以上にわたり続けていたことについては「常軌を逸した隠ぺい体質が根付いていたと言わざるを得ない」と化血研の組織風土に問題があったと指摘しています。そして、不正や隠ぺいを招いた背景には「自分たちは当局よりも専門家だ。ごまかしても問題ない」という研究者としてのおごりがあったと結論づけています。血液製剤やワクチンの製造が化血研など数社で占められていることが、そうしたおごりを生んでいるのだと思います。
さて、この報告書が厚生労働省に提出されたおととい辞任した化血研の宮本誠二理事長は記者会見で謝罪したうえで「国の承認通りに製造していないことには気付いていたが見て見ぬふりをしてきた」と不正を認識していたことを認めました。そして、役員全員を辞任や降格させて役員体制を刷新。薬の製造方法の変更は製造部から切り離して新たに作った製品開発部で行い、また、変更する内容は外部のコンサルタント会社がチェックするなどの再発防止策を講じるとしています。
ただ、これで患者の不安は解消されるでしょうか。
不安を取り除くために、まず化血研に求めたいのは患者の健康状態の確認です。
化血研は安全性には問題がないとしていますが、そうであれば、副作用などの影響が出ていないか調べて根拠を示すべきです。
また、薬害エイズ訴訟の原告団は化血研が変わると信じて和解に応じただけに裏切り行為だと受け止め、今回の問題について直接説明するように要望しています。化血研は、すみやかに説明の場を設けて、信頼を裏切ったことについて謝罪して欲しいと思います。
一方、厚生労働省には長年にわたって不正を許してきたことの責任を重く受け止めてもらわなければ困ります。不正を見抜けるように医薬品メーカーに対する査察の方法を見直して欲しいと思います。薬害エイズでは国が危険性を認識しながら血液製剤の回収が遅れたことが被害を拡大させました。その反省に立って医薬品の安全審査を見直し監視を強めてきたはずですが不十分と言わざるをえません。今回の問題を教訓に対策を根本から練り直してほしいと思います。
(村田英明 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/233168.html
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