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捏造も当たり前…病気を「つくり」ガッポリ儲ける製薬企業 高血圧の基準がコロコロ変わる裏事情
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12663.html
2015.12.01 文=神樹兵輔/マネーコンサルタント Business Journal
■「最高血圧120未満」が治療目標?
先頃、米国の国立心肺血液研究所が発表した「高血圧基準値は120未満を目標にするべき」という大規模な研究報告が、波紋を呼んでいます。日本では一時期「130未満」が基準値となっていたものの、現在では高齢者が血圧を下げすぎると転倒して骨折を招くおそれがあることから、概ね140未満を目安とする治療が主流になっていたためです。
肥満者の多い米国人との比較が一律に日本人に当てはまるのかは疑問ですが、今回の報告は、50歳以上の高血圧症と心筋梗塞のリスク患者9400人への3年間の追跡研究から導き出されたものとなっています。9400人に対して、血圧を「120未満」に下げる患者と、「130未満」に下げる患者の2群に分け3年間追跡。その結果、「120未満」にした患者のほうが心不全や心筋梗塞、脳卒中の発症リスクが、「130未満」にした患者よりも27%も低かったといいます。
いずれにしろ、この研究報告を素直に受け止められないのは、これまでの医療業界、製薬業界のさまざまな過去の経緯から、欺瞞的な匂いがプンプンと漂ってくるからにほかなりません。
■日本は米国に次ぐ世界第2位の薬漬け国家
意外に知られていませんが、日本は米国に次ぐ世界第2位の薬漬け国家です。米国の医薬品市場は世界市場の4割弱を占めますが、日本も同約1割を占める薬漬け国家なのです。薬剤費がべらぼうに使われていることが窺われます。
日本の場合、医薬品は約9割が医療機関向けです。国の医療費は年々伸び続け、2014年度には40兆円に達しています。00年度と比べて14年間で10.5兆円もの増加です。40兆円の医療費のうち、薬剤費の占める割合は、ほぼ4分の1にまで達しています。00年度と比べ、調剤薬局の薬剤料だけが2倍以上もの突出した伸びを示しているのです。
もちろん、厚労省もほぼ2年毎に薬価を見直し引き下げに動いていますが、薬剤費は下がりません。業界はジェネリック医薬品の浸透を阻むべく、薬価基準を巧妙にすり抜ける新薬もどきの製品への切り替えで、薬剤費を膨張させてきたからです。
製薬会社は、どこも儲かっています。景気に左右されない業態である上に、特許切れによる収益減に備え、潤沢な内部留保を活かしての世界市場でのM&Aに邁進しています。
■病気の基準値を厳しくするほど「儲け」が増える製薬メーカー
薬剤費が下がらないもうひとつ理由は、製薬メーカーが医師や医療機関と癒着した関係のなかで「病気の基準値を変える」というマジックを実現してきたからです。
高血圧症、糖尿病、高脂血症(脂質異常症) という3大慢性病の基準値は、これまで次々と改訂され、厳しくなってきたという背景があります。
たとえば、日本における高血圧症の患者数は1987年には170万人でした。それが11年には205.3倍の907万人にまで増えています。同様に糖尿病も、1990年の560万人が2012年には950万人と1.7倍に増えています。高脂血症も96年の968万人が11年には1900万人と約2倍以上に増えています。
1980年代までは、高血圧の基準は「年齢+90」といわれ、概ね180/100 と大らかなものだったのです(旧厚生省)。それが、93年にはWHO(世界保健機関)と国際高血圧学会が140/90を打ち出したことにより、日本の高血圧症患者数はグンと伸び、96年には750万人を突破しました。
さらに2008年には、日本高血圧学会が130/85の数値を正常値と定めたおかげで、患者数は797万人まで膨れ上がりました(14年に140未満に緩和された)。この基準値でいくと潜在患者数、つまり基準値を上回る人の推定は4300万人といわれますから、製薬会社は笑いが止まりません。高血圧症の医療費だけで2兆円となり、そのうちの9000億円が薬剤費となったのです。今では「成人の3人に1人が高血圧症」とWHOも警告する始末なのです。
しょせん、WHOも各医学研究団体も共存共栄の構図があるゆえんです。
■医療機関も逆らえない「金権」構図
高血圧といえば、世界第2位の売り上げ(約500億ドル)を誇るスイスの製薬メーカー・ノバルティスファーマの日本支社で、14年6月に元社員が逮捕され、家宅捜索が行われています。これは、同社の看板薬で年間1000億円を売り上げていた高血圧治療薬「ディオバン(一般名称はバルサルタン)」が他社製品よりも優れていると見せかけるため、大学の研究機関に捏造データを渡して論文を作成させ、それを販促活動に使っていたという不正によるものでした。
このことからも明らかなように、医学界において製薬メーカーは偉大なスポンサーです。研究名目や寄付で医者や研究者を御用学者として手なずけ、学会やセミナーで自社製品に都合のよい発表をさせるなど、相互にズブズブの癒着関係があるのです。
11年の製薬メーカーの研究開発費は平均データで売り上げの18%を占め、これは自動車や家電メーカーの3倍強に当たります。他産業と比較して突出して高いことで知られますが、実はこの中に医学界への潤沢な謝金が含まれているのです。
日本製薬工業協会加盟72社の医師など医療関係者への謝金額総額は4793億円です(13年度)。うち研究開発費が2472億円、情報提供関係費が1405億円、学術研究助成費が536億円、原稿料が267億円、接遇費が113億円です。
医者や医療研究者が、製薬メーカーに逆らえない構図がここにはっきりと見て取れるでしょう。
近年、なぜ肥満の基準がBMI基準に代わったのか、疑問を持つ方も多いと思います。かつては身長マイナス100に0.9をかけたものが標準体重でした。BMI基準では、体重を身長の2乗で割り、22の標準に近いかを見ます。これによって、太り過ぎの人だけでなく、痩せた人も厳しく病気予防に駆り立てられるようになったというわけです。
医療業界が、製薬メーカーの支配下に置かれているという事実だけは、今後もしっかりと押さえておきたいところです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)
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