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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
すでに米国で普及 「薬ゼロ・短時間で効果」のうつ病最新治療
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/165370
2015年10月8日 日刊ゲンダイ
「抗うつ薬を飲み続けているが良くならない」「うつ病と診断され、薬を処方されたが、飲んで大丈夫か」──。こうした思いに悩まされる人は少なくない。うつ病は日本人の15人に1人が死ぬまでに一度はかかる病気で、その多くが薬物治療を受けている。ところが、効果があるのは6〜7割で、多くの弊害が報告されている。そんななか、薬を使わず、短期間で治療効果を実感できる最新治療法が話題だ。「新宿ストレスクリニック」(東京・西新宿)の川口佑院長に聞いた。
「私たちが行っているのは、最新のうつ病研究により開発されたTMS(経頭蓋磁気刺激治療)です。2008年にFDA(米国食品医薬品局=日本の厚生労働省にあたる)に認可され、米国では抗うつ薬が効かない人、飲ませられない人へのセカンドラインの治療法として、大病院で広く導入されている治療法です」
従来のうつ病治療の根拠は、「セロトニン仮説」にある。脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量が減るか、働きが悪くなるからうつ病を発症するという考えだ。しかし、脳内のセロトニンを増やす薬でうつ病患者を治療しても、症状が改善しないどころか、若者の異常行動や自殺が目立っているのが現状だ。
「そもそも神経伝達物質が不足しているというセロトニン説は仮説にすぎず、最近の脳科学では前頭葉の神経ネットワークの異常であるという考えに変わってきています」
なぜ、前頭葉の機能が落ちるとうつ病になるのか? それは快・不快や好き嫌いといった衝動的な感情をつかさどる「扁桃体」を前頭葉がコントロールしているからだ。
「TMSは磁気の非常に弱い刺激によって、低下した前頭葉の活動性を高め、その機能を戻していくことで、うつを改善していきます。治療は週1〜3回ほど行い、症例にもよりますが30回ほど続けることが基本です。薬は一切使わないので安全・安心です」
■薬物療法のリスクが高い10代にも効果
その治療により治療開始1カ月ほどで、「長年うつ病で苦しみ休職していた男性が職場に復帰した」「寝たきりだった主婦が家事をできるようになった」などの例が出ているという。
「とくに効果が著しいと感じるのは進路や学業で強いストレスを感じている受験期の子供たちです。ある男子高校生は大学受験期間中にTMSを受けた後、集中力を取り戻して志望校に合格しました。また、ストレスでキレやすかった女子中学生は、治療後は穏やかで前向きに過ごせるようになりました」
子供の頭に磁気を当てることに不安を持つ人もいるだろうが、「受験に勝利した親子が実践したストレス克服法」(ブックマン社)の著者で医師の和田秀樹氏は「特に薬物療法のリスクが高い10代にとっては安心して受けられる治療法といえる」と言う。
なお、「新宿ストレスクリニック」では、従来の問診・診察に加え、安全な近赤外光で頭の血流を測定して、「健常」「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」を判別する「光トポグラフィー検査」の結果を参考にうつ病を診断している。患者にわかりやすい診断治療を行うためだ。
TMSは厚労省の認可を受けていないため、自費診療。検査料1万2030円(税抜き)に、1回4万4000円(税抜き)程度の治療費は決して安くはない。
ただ、それが心の苦しみから逃れられる糸口になるとしたら、試してみる価値はあるかもしれない。
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