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かつて結核は“不治の病”と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった(※イメージ)
結核に40年ぶりの新薬登場! 根治難しい「多剤耐性結核」に光?〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150901-00000003-sasahi-hlth
週刊朝日 2015年9月4日号より抜粋
かつて結核は“不治の病”と恐れられたが、現在は薬を飲めば治せるようになった。しかし日本はいまだ毎年約2万人の新しい患者が発生し、2千人以上が亡くなっている。
結核の多くは治るようになったが、根治が難しい「多剤耐性結核」もある。多剤耐性結核とは、特に強力な抗菌効果を持つ薬、イソニアジドとリファンピシンの両方に、菌が耐性を持つ場合を指す。
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター・感染症研究部長の露口一成医師は、
「日本では結核患者のうち約0.7%が多剤耐性結核患者だと言われています。最初から多剤耐性菌に感染した人もいれば、服薬中断や不適切な薬剤選択が原因で治療中に多剤耐性化してしまった人もいます」
と話す。
主軸の2剤が使えないため、これ以外の抗結核薬や、結核薬として承認されていない一般的な抗生剤や注射剤などを組み合わせて治療してきた。ところが治せずに死亡したり、長期入院を余儀なくされたりする患者もいる。
しかし14年9月、こうした患者にとって大きな希望になる抗結核薬「デラマニド(一般名)」が発売された。国内で結核の新薬が登場するのは、約40年ぶりだという。
デラマニドは、結核菌の細胞壁を構成する脂質「ミコール酸」の生成を妨げるという、従来の薬とは異なる仕組みで抗菌効果を発揮する。
日本や米国など世界9カ国17施設が参加した臨床試験では、多剤耐性結核の標準治療にデラマニドを上乗せして投与すると、偽薬を上乗せした場合に比べて痰の中の菌の消失率が明らかに高いことが確認された。また標準治療とデラマニドを6カ月以上併用すると、死亡率が低下することもわかっている。
大阪府在住の加藤由梨さん(仮名・35歳)も、デラマニドの効果を実感した一人だ。
加藤さんは20歳のときに結核を発症。その後、再発を繰り返すうちに多剤耐性結核と診断され、近畿中央胸部疾患センターに転院してきた。治療が難航したため、当時始まったばかりのデラマニドの臨床試験へ参加を希望したという。
加藤さんの場合、効果が望める抗結核薬がいくつか残っていたため、その薬にデラマニドを上乗せして内服。半年後には排菌が陰性化したため、その後は弱い薬だけを現在に至るまで2年近く飲み続けている。肺の病巣はきれいになり、咳などの症状も全くない。
普通の結核は半年で治癒と判断できるが、多剤耐性結核の場合は、排菌が止まってからおおよそ2年間症状が出ない場合に治癒と見なされる。加藤さんも、そろそろ治療を終了できそうだという。
「加藤さんを含め、当院では7人全員、排菌が陰性化して治癒に結びついています。多剤耐性結核自体の治療成功率は6〜7割と言われているので、新薬の効果は大きい。まれに心臓の異常を起こすことがありますが、それ以外で薬を続けられなくなる副作用はほとんどなく、使いやすい薬です」(露口医師)
しかし、いい加減な使い方をすれば、この新薬の耐性菌を生むことにもなりかねない。そこで日本結核病学会とデラマニドを開発した大塚製薬が協力。「高精度の感受性検査が可能」「多剤耐性結核の知識と豊富な治療経験を持つ医師がいる」といった基準をクリアした施設を登録し、なおかつ患者ごとに投与の是非を厳格に審査するシステムを整えた。露口医師はこう話す。
「審査の結果、耐性菌を作るだけなので投与できない、残念ながら効果は見込めない、というケースもあります。多くの人を救える可能性のある新薬だけに、使い方を慎重に見極めていく必要があると考えています」
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