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毎日新聞ウェブサイトの読者の皆さん、初めまして。京都にある一般財団法人高雄病院理事長の江部康二です。新しくオープンした「医療プレミア」サイトでエッセーを連載させていただくことになりました。タイトルは「人類史からひもとく糖質制限食」と大風呂敷? を広げてみました。糖質制限食というと、「何のこっちゃ?」と思われる方もおられるのではないでしょうか。まずは簡単に説明しましょう。
この連載の記事一覧
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糖質だけが血糖値を上昇させる
米国糖尿病学会の患者教育用のテキストブック「Life With Diabetes」(2004年版)には、「摂取後直接、血糖に変わるのは炭水化物のみである。炭水化物は速やかに吸収され、直接100%血糖に変わり、ほぼ120分以内に吸収は終了する。たんぱく質・脂質は、摂取後、直接血糖に影響を及ぼすことはない」と記載されています。「炭水化物=糖質+食物繊維」であり、食物繊維は人体に吸収されません。従って米国糖尿病学会の記載をよりシンプルに言い換えると「糖質だけが血糖値を上昇させ、たんぱく質と脂質は上昇させない」ということになります。欧米ではこのことは、医師も栄養士も看護師も学校で学ぶので、常識として周知されています。
実は、米国糖尿病学会のテキストブック(1997年版)では、「炭水化物は摂取後速やかに吸収され100%血糖に変わり、たんぱく質は数時間で約半分が血糖に変わり、脂質はゆっくりと約10%未満が血糖に変わる」と記載されていました。04年版以降、上述のようにがらっと変更されて現在に至っているのです。
カロリー計算で血糖値をコントロールするのは不可能
ところが驚くべきことに、日本ではほとんどの医師、栄養士も、04年版の変更のことを知らないのが現実です。結局、医学部も栄養士の学校も04年版のことを知らないので、97年版の知識を教育しているのが現状なのです。「糖質だけが血糖値を上昇させ、たんぱく質と脂質は上昇させない」。この重要な生理学的事実を知らない医師や栄養士が、糖尿病の治療を主導しているかと思うと背筋が寒くなります。日本の携帯電話がガラパゴス化して衰退しても、人命に直接影響はないかもしれませんが、医師や栄養士の知識がガラパゴス化していたら大問題です。即なんとかせにゃならんのです。
主に食事や運動など生活習慣が起因とされる2型糖尿病で、体重64kgの人を例に挙げて説明します。1gの糖質が、血糖値を約3mg上昇させます。炊いた白ご飯茶わん1杯150g(252kcal)には、55.3gの糖質が含まれており、血糖値を166mg上昇させます。一方、和牛サーロインステーキ(脂身つき)を200g(約1000kcal)食べても、糖質含有量は1gもないので、食後血糖は3mg未満しか上昇しません。健康な人でも、白米と焼き肉を食べた後の血糖値の上昇を比較すると、同様の傾向が見られます。カロリー計算に基づいて食後血糖値をコントロールすることは理論的に不可能なのに、日本糖尿病学会はそれを推奨しています。
糖質制限食とは
さて糖質制限食ですが、「血糖値を上昇させるのは糖質だけ」というシンプルな事実をもとに、食事で摂取する糖質をできるだけ減らして、血糖を良好にコントロールしようというものです。食後の高血糖はリアルタイムに改善。過去1〜2カ月の平均血糖値の指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)も、月1〜2%の速度で改善し、糖尿病患者にとってはまさに福音となる食事療法です。糖質制限食と糖尿病のことは、今後連載のなかでまた詳しく説明していきたいと思います。
連載タイトルが「人類史からひもとく糖質制限食」ということで、勘のいい読者はお気づきかもしれませんが、糖質制限食は狩猟・採集時代の人類本来の食事でした。人類は約700万年間の狩猟・採集時代、すなわち糖質制限食時代を経て、約1万年前に現在の中東・シリア付近で組織的な小麦栽培を始め、農耕・穀物食時代へと突入したというのが一般に知られている人類史です。そうすると人類が穀物を主食としたのは、人類史においてわずか700分の1の期間にすぎないわけです。このように考えると糖質制限食こそが、人類本来の食事・健康食と考えられます。
その証拠に糖尿病以外にもさまざまな生活習慣病が糖質制限食の実践により改善しますので、本連載で折に触れ取り上げたいと思います。さらに人類の進化、糖質は嗜好(しこう)品でラッキー食材、二足歩行、衣服・言語の発明、農業は人類の原罪、ホモ・サピエンス、ネアンデルタール人−−などなど多岐にわたり話題を提供し、読者の皆さんの知的好奇心を満足させたいともくろんでおります。
江部康二
高雄病院理事長
えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。
http://mainichi.jp/premier/health/entry/index.html?id=20150525med00m010001000c
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