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患者さんには、言えません 医者が「やりたい手術」「本当はやりたくない手術」がん・心臓病・脳卒中・全身麻酔……(上)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43166
2015年05月06日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
医者の言葉を、そのまま信じていないだろうか。「患者のため」だけを考えている医者ばかりではない。医者には医者の都合がある。最善の治療を受けるために、知っておかないといけないことがある。
■患者よりも大事なこと
「すごく簡単な手術だから大丈夫。2週間で退院できます」
主治医からそう説明を受けて、安心して臨んだ手術。だが、術後から体調が悪化し、患者は死亡した。群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者の話だ。
医者の言葉を信じたばかりに、最悪の結果を招くことになった。
「'10~'14年に8名死亡した群馬大だけでなく、千葉県がんセンターでも'08~'14年の間に肝臓や膵臓がんの腹腔鏡手術を受けて11名が死亡しました。これらは明らかに、最先端の治療をして実績を積みたいという医者の『名誉欲』のためになされた手術だと思います」
都内の大学病院に勤める消化器外科医は、こう語る。
腹部に空けた小さな孔に手術器具やカメラを入れて行う腹腔鏡手術は、傷が小さく回復も早いということで、大腸がんなどでは一般的になりつつある。だが、肝臓や膵臓の腹腔鏡手術は難易度が高く、まだ普及していない。そんな治療の実績を積めば、名も知られて評判も上げられる—そんな理由で、医師は腹腔鏡手術を勧めたというのだ。
こうした事例は、腹腔鏡手術ばかりではない。じつは、医療の現場では「患者のため」ではなく「医者のため」に行われている治療が数々ある。現役の医者たちに、医者や病院の都合で「やりたい手術」「本当はやりたくない手術」にはどのようなものがあるか、患者には言えない本音を訊いた。
腹腔鏡手術の場合、名誉欲のためだけではなく、医者がやりたがる理由がもう一つある。「カネ儲けになる」ことだ。前出の消化器外科医が言う。
「一般的に、新しい技術は保険点数が高いので、高額の医療費を請求できます。腹腔鏡手術もその一つ。病院にとっての利益も高いのです」
たとえば胃がんと大腸がんの手術について、開腹手術と腹腔鏡手術の保険点数を比較してみよう。
開腹手術で胃を全摘出した場合の保険点数は6万9840点(手術のみの点数)。腹腔鏡で胃を全摘出した場合は8万3090点。同様に、大腸(結腸)がんの場合、開腹手術は3万5680点で、腹腔鏡手術は5万1750点だ。
「保険点数は1点あたり10円で換算されます。胃がんは、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが13万2500円も高く、大腸がんも、腹腔鏡手術のほうが16万700円も高いことになります」(都内総合病院・医事課担当者)
治療法に選択肢がある場合、医者は「いかに儲けられるか」という視点で考えるもの—都内の大学病院に勤める外科医はこう断言する。
「経営を成り立たせるために、病院も経営のことを考えなければなりません。複数の治療法が考えられるなら、医者は儲かるほうを勧めるものです。治療をすれば、病院も製薬会社や医療機器メーカーも収入が得られますから、よりおカネが動く方向になっていくのは当然です。本当に純粋に患者さんのことだけを思って行われる治療なんて、めったにないと言ってもいいでしょう」
患者にとっては衝撃的だが、これが現実。腹腔鏡手術は、医者個人の実績にもつながり、病院も儲かるという2つのメリットがあるため、医者が「やりたい手術」の代表格だったというわけだ。
心臓病の治療にも、医者の名誉欲を満たし、病院の儲けにもつながる治療があるという。都内大学病院に勤める循環器外科医が語る。
「心不全や重症の不整脈治療に使われる『CRT-D』という最新のペースメーカー植え込み手術です。日本では'06年から保険適用になったので、まだ症例数も少なく、学会発表に向いている。このペースメーカーは、1台で400万円と高額なので、病院の利益にもなります」
どんな治療をやりたいかは、医者の勤務形態によっても異なる。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏が言う。
「自分の実績になる治療をしたがる医者は大学病院の勤務医。学会に発表できる症例なら喜んでやりますが、それ以外はやりたくないというのが本音です。一方、儲かる治療をやりたがるのは開業医に多い。とくに保険外の自由診療は、治療費を病院の判断で設定できるのでオイシイんです」
自由診療には、がんの免疫療法から美容整形までさまざまな種類がある。たとえば椎間板ヘルニアの場合、保険が利く外科手術で治療することもできるが、自由診療のレーザー治療を行うクリニックも増えている。
「レーザー治療は、メスを入れずに短時間で終わり、日帰りできる点がメリットです。外科手術をすると、手間暇がかかるわりに保険点数も低くてカネにならない。てっとり早く儲けようと、椎間板ヘルニアのレーザー治療を行っている医者もいます。驚くのはその値段。1回の手術で100万円近く取るクリニックもあるんです。ですが、本来では治療の対象とならない患者まで無理に行って、トラブルが起こるケースも多いと聞きます」(都内総合病院・整形外科医)
治療費が高い上に、治療して後遺症が残っては、たまらない。そんな悪質な医者も中にはいるが、うまくカネ儲けをしている医者は、患者にそれを察知されるようなことは決してしないという。心臓外科医で、東京ハートセンターのセンター長・南淵明宏医師が話す。
「儲けるために行っている手術でトラブルを起こしたり、患者を死なせたりしてしまっては、告発されて医師生命にもかかわってきます。群馬大や千葉県がんセンターの死亡例はそういった発想とは程遠いものですが、儲けのことを考えている医者は、ヘマはしないものです」
つまり、失敗しない、リスクの低い手術をこなして数を稼ぎ、儲けるというわけだ。たとえば、内視鏡検査を勧めて小さな大腸ポリープが見つかる度に手術をする、命には別状のない下肢静脈瘤のリスクを強調して手術を勧める、などもそれに含まれるだろう。
■早期の手術で数を稼ぐ
脳卒中の原因となる、脳の動脈瘤についても同様の傾向がある。くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋医師が言う。
「大きくなって破裂すると、くも膜下出血につながる脳動脈瘤ですが、2o以下の大きさであれば手術の必要はない。血圧を管理しながら経過観察することが治療のガイドラインで定められています。ですが、1・5mm程度でも『大体2oくらいですね』と患者に説明して手術する病院もある。小さいうちに手術したほうが短時間で済みますし、リスクも少ない。通常は動脈瘤の大きさによって保険点数は変わりませんから、病院にとってはメリットが多いのです。
患者さんからしたら、たとえ小さくても脳卒中の原因があることを画像で見せられたら不安になりますし、『爆弾≠抱えたままでいいんですか?』などと医者から言われたら、手術を選ばざるを得ません。セカンドオピニオンが普及して、悪質なケースは減ってきていますが、まだやっているところはあるでしょうね」
脳ドックなどを受けてごく小さい脳動脈瘤が見つかることは多い。治療法だけでなく検査技術も進歩しているため、従来だったら見過ごされていた「見つからなくてもいい病気」が発見され、余計な手術をされる患者が増えているのだ。都内大学病院の消化器内科准教授が解説する。
「乳がんのマンモグラフィーや、前立腺がんのPSA検査でも、放っておいて問題ないレベルの病気が見つかることが問題になっています。治療を開始する基準は、ガイドラインで定められていますが、実際のところ、その判断は現場の医師に委ねられています」
「早く見つかってよかったですね」と言われれば患者としては安心する。悪化する前に病気を治せるならいいと思う人もいるかもしれない。だが、ここにも一つ知っておくべき点がある。同医師が続ける。
「早期発見・早期治療がいいと言われていますが、実際のところ、がんなども含めて、初期に手術をすれば予後がいいということが明確になっている病気は多くありません。それでも、医者は検査や治療をする『手段』があれば試してみたいと思うものなのです」
新しいものを試したいという医者の思いがなければ医療は進歩していかないわけだが、治療を受ける側からすれば、自分がその実験台にされるのはたまったものではない。
「週刊現代」2015年5月2日号より
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患者さんには、言えません 医者が「やりたい手術」「本当はやりたくない手術」がん・心臓病・脳卒中・全身麻酔……(下)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43169
2015年05月07日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
■医者には医者の都合がある
医者が患者には言えない本音は、こうした「やりたい手術」ばかりではない。じつは、実際に医療の現場で行われていても、医者が「本当はやりたくない」と思ってやっている手術も数々あるのだという。
「最大径が3cmを超える大きさの脳動脈瘤は、手術中に破裂して患者が死亡したり、重篤な後遺症が残ってしまうリスクが高い。『神の手』と呼ばれるよ うな医師がやればうまくいくのでしょうが、非常に難しい手術なんです。自分の血圧を測りながらこの手術をしたことがあるのですが、ミスをしそうになった瞬 間の血圧は200を超えていました。長時間に及んで激しいプレッシャーを感じますから、医者自身も精神状態がおかしくなってきます」(都内大学病院・脳神 経外科医)
冒頭の腹腔鏡手術の例のように、功名心からリスクの高い手術を進んでやりたがる医者もいるが、当然ながら、リスクが高い手術だと思ったら、守りに入って「絶対にやらない」という医者もいる。前出の南淵医師が語る。
「リスクが高いと判断したら、別の医者に紹介するか、手術をせずに『様子を見ましょう』と言ってとりあえず薬を処方し続ける医者もいます。
たとえば心臓病の場合、2つの弁を交換して、狭窄した大動脈と冠動脈の治療も必要、などと一度に何ヵ所も治療しなければいけない手術は大変です。手 術をする場合、医者にも覚悟が必要。手術できるかできないかの判断は医者によって異なるので、他の医者にかかれば治せる病気でも、医者によっては『手遅れ です』と言われることも多いのです」
がんの手術についても、こんな意見がある。
「食道がんの外科手術は、胸や腹部まで大きく開かなくてはならず、手術時間も長くて合併症のリスクも高い。それなのに再発することも多いので、正 直、やりたくない手術です。外科医ではありますが、放射線や抗がん剤治療を勧めてしまうこともある」(都内総合病院・消化器外科医)
手間暇がかかって面倒な手術も医者がやりたくない治療のひとつ。時間がかかるのに儲けは少ない、という理由で病気を放置する医者もいる。前出の工藤医師は、こんな指摘をする。
「たとえば、精神疾患や認知症を抱えた患者さんは、患者さんの顔を見ながらじっくり話を聞かなければ解決できません。でも、いくら時間をかけても収入は変わらない。なので、ただ薬を処方するだけで患者を薬漬けにしてしまう医者は多いのです」
治療ばかりではない。手術前には欠かせない検査にも、医者が本当はやりたくないと思いながらやっているものがある。その中の一つが、「血管造影検査」だ。
「心臓や脳の血管に狭窄などがないかを調べる検査で、造影剤を血管に流し込んだあとにX線で画像を撮ります。血管内に炎症がある場合、炎症を悪化さ せる恐れがあるのです。また、検査によって、脳梗塞などの合併症を起こして、患者や家族とトラブルになることも少なくありません」(前出・富家医師)
手術の直前に行われる全身麻酔にもリスクがあり、医者は非常に神経を使う。麻酔科医としての経歴を持つ医師で作家の久坂部羊氏が解説する。
「麻酔薬は全身に影響を及ぼすため、手術中は5分ごとに血圧、脈拍や臓器の状態を確認しなければなりません。とくに麻酔をかけるときと醒ますときは命に関わるトラブルになる可能性があるので、細心の注意が必要です。
そもそも、全身麻酔は治療ではなく手術のサポートですから、絶対安全で当たり前と思われている。それだけに、麻酔科医は常にプレッシャーを感じています」
このように、医者が自分の都合でやりたいと思って勧める手術、本当はやりたくないと思っているのに、しぶしぶやっている手術というのはかなり多い。
患者にとって一番良い治療を行い、病気を治すことが医者の使命のはずだが、それがゆがんでしまっているのには、「症例数至上主義」が蔓延しているという背景もある。
「いまの医療界には、手術件数こそが病院や医者の『力』を示す指標であり、社会からの評価であり、医者自身の栄達の源であるという風潮が定着してい ます。病院の経営のためにも数をこなさなければならないし、いい病院・いい医者の基準も手術数が指標になる。目に見えてわかりやすい評価基準が他にないか らです。それゆえ、病院も医者個人も、自分の症例数を増やそうとし、ケモノ道にはまりこむ医者もいるかもしれません」(前出・南淵医師)
手術数が増えれば、自分も病院も評価が上がり、儲けにもなる。さらに言えば、「専門医の資格を取るためにも、一定以上の症例数が必要となる」(前出・工藤医師)。そのために、患者が必要のない手術、ベストではない手術を受けさせられている可能性は大いにある。
いったい、患者はどうすればいいのか。都内大学病院名誉教授の外科医はこうアドバイスする。
「たとえば下肢静脈瘤のレーザー治療専門のクリニックなど、一つの治療法だけを扱う病院は避けたほうがいい。それしか売り物がないと、たとえその治 療がベストでなくても患者に勧めるはずです。複数の治療法を扱っている病院であれば、治療法の選択肢と、そのメリット・デメリットを提示してくれたら、信 頼してもいいと思います」
医者には医者の都合がある。すべての医者が「患者のことだけ」を考えて治療をしているわけではない。患者もそのことを知っておいたほうがいい。
「週刊現代」2015年5月2日号より
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