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ガスで膨らませた腹部に器具を差し込む。術中、医者の視線は常にモニターに向けられる〔PHOTO〕gettyimages
死亡者続出!体への負担は少ないが、命の保証もない「腹腔鏡手術」はこんなに危険です(上)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42942
2015年04月18日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
「体に優しい手術」と聞いていたのに……。結局、その治療を受けたことで命が奪われた。最先端の治療法で死者が相次いでいる。「外科手術の革命」とまで言われ、急速に普及した最新治療の実態とは。
■ベテラン医師でも失敗する
「腹腔鏡手術には高い技術が必要です。ベテランの医師であっても難しい。千葉県がんセンターや群馬大学のケースでは、ただでさえ難しい肝臓や膵臓などのがん手術を腹腔鏡で行っていました」(がん研有明病院消化器センター 肝・胆・膵外科担当部長の齋浦明夫医師)
群馬大学医学部附属病院では8人、千葉県がんセンターでは11人が、腹腔鏡手術を受けた後に相次いで死亡した。群馬大学では、最終報告書に不備があったとして再調査を行うことが決まったばかり。騒動は収まる気配がない。
患者が亡くなったのは、下手な医者が執刀した結果だろうと思うかもしれないが、そうではない。千葉県がんセンターで死亡した11人のうち8名を執刀した医師は、腹腔鏡手術の実績が200件を超えるベテランの医師だった。
腕のある医師でも次々と死者を出してしまうほど、腹腔鏡手術は、難しい手術なのだ。
傷が小さくて回復も早い—そんな触れ込みで広まった腹腔鏡手術だが、どんな治療法なのか。
まず、腹腔内に炭酸ガスを注入してお腹をパンパンに膨らませる。器具を動かす空間を確保するためだ。その後、5~10mm程度の孔を数ヵ所開け、そこに鉗子や腹腔鏡(カメラ)を入れる。術後、お腹に残るのは、この小さな孔の痕だけだ。医師は、カメラがモニターに映し出す画像を見ながら鉗子を動かし、病巣を切り取っていく(次ページのイラスト参照)。
「日本では、'90年に胆嚢の摘出手術が行われたのが、腹腔鏡手術の最初のケースです。その後、大腸がんや胃がんでも行われるようになり、ここ10年ほどで、肝臓がんや膵臓がんなどの腹腔鏡手術の症例も増えてきました」(前出・齋浦医師)
そのほか、前立腺、膀胱、子宮など、がんに限らず、良性腫瘍の手術でも幅広く導入されている。元東京医科歯科大学肝胆膵外科教授で、現在は浜松労災病院の院長を務める有井滋樹医師は言う。
「傷が小さいため、開腹手術と比べて術後の痛みも少なく、早期に退院できる。美容という点から見ても優れているため、急速に普及したのです」
メリットは多いが、手術は困難を極める。有井医師は、腹部を大きく切って行う開腹手術と腹腔鏡手術との違いについて次の3点を挙げる。
(1)手術器具を操作する自由度が制限されること、(2)器具から手に伝わる感触が薄れること、(3)視野が3次元ではなく2次元のモニター画面であること。
まず(1)は、イラストを見てもわかるように、ガスを入れて腹部を膨らませても、孔から入れた器具は可動範囲が限られている。開腹すれば簡単に摘出できるケースでも、病巣の場所が悪いと困難を極める。(2)については、開腹手術であれば臓器を直接手で触って患部の状態を確認することもできる。
そして(3)の視野については、腹腔鏡手術の場合、カメラが映し出す画像しかない。肉眼で見るよりも拡大できるメリットもあるが、カメラの死角に異常があった場合、見つけることさえできない。がんを取り残す可能性もあるのだ。モニターを見ながら細かく器具を動かして患部を切り取る作業は、「テレビゲームをやる感覚に似ている」と例える医者もいる。
患部に直接触れて行う手術と、皮膚の下にある患部をモニター越しに見ながら行う手術。後者の難しさは、素人でも容易に想像できる。
■やらない名医もいる
これまで5000例以上もの手術を手掛けてきた都立駒込病院名誉院長・森武生医師は、腹腔鏡手術は行わないと話す。
「がんの手術に関して言えば、開腹手術のほうが安全で確実に決まっています。病巣もよく見えて、周辺の臓器や血管の状態なども確認しながらできますから」
名医と呼ばれる人のなかでも、リスクを考えて自分はやらないというほど難しい手術。それが腹腔鏡手術なのである。
腹腔鏡手術では、ミスが起こりやすくなる。
「胆嚢を取る手術で、間違って胆管を切ってしまうことがまれにあるのですが、腹腔鏡の場合、そのリスクが開腹手術の7倍というデータが出ています。また、肝臓は血流が非常に多く、肝臓自体が血の塊のような臓器ですから、腹腔鏡手術で少し切り方を間違えると大出血を起こす危険があります」(順天堂大学医学部肝・胆・膵外科教授の川崎誠治医師)
この、術中の思わぬ出血は、命を左右する事故につながりかねない。
「開腹手術の場合、思いがけない出血が起きても、すぐに適切な処置ができますが、腹腔鏡ではその対処がしにくい」(前出・有井医師)
腹腔鏡で肝臓がんの手術をした経験のある都内大学病院の外科医は、次のように振り返る。
「切ってはいけない部分にメスが触れ、出血が止まらなくなったんです。あっという間に患部は血に埋まって見えなくなり、止血しようにもできなかった。すぐ開腹手術に切り替えたので命は取り留めましたが、今思い出しても背筋が凍ります……」
腹腔鏡で手術した場合、死亡リスクはどれほどなのだろうか。
「肝臓がんの腹腔鏡手術の場合、術後30日以内に死亡する手術死亡率は1~2%。数字は開腹手術とあまり差がないのですが、同列で比較することはできません。腹腔鏡手術は難易度の高い症例はできないため、比較的容易な手術の症例が多く含まれたデータだからです」(前出・有井医師)
「週刊現代」2015年4月18日号より
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死亡者続出!体への負担は少ないが、命の保証もない「腹腔鏡手術」はこんなに危険です(下)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42943
2015年04月18日(土) 週刊現代 :現代ビジネス
■医者はなぜ「やりたがる」か
今回問題になっているケースでは、術後、数ヵ月以上経ってから死亡した患者もいた。前出の都内大学病院外科医が言う。
「がんを切り取ったあとに臓器などを縫合しますが、それを内視鏡でやるのも難しい。縫合不全から感染症など合併症を起こして、しばらくして命を落とすこともある」
皮膚につく傷は小さくても、臓器は大きく切り取られている。外から見たらきれいに治っているようでも、術後の体内の患部では何が起こっているかわからないのだ。
前述したように、傷が小さいので術後の痛みが少なく、退院も短くて済む点は大きなメリットである。高齢者の場合、入院中に足腰が弱り、寝たきりにつながるケースもあるため、術後の生活の質を上げるという点でも、恩恵を受ける人は多い。
だ が、そのリスクとベネフィット(利点)を患者や家族が判断し、治療法を選択するのは難しい。医者は、手術前に死亡率や合併症のリスクなどについて説明する 義務があるが、患者がそれをきちんと理解しているかは別問題だ。群馬大学のケースでは、遺族の一人がこう証言している。
「執刀医から『すごく簡単な手術だから大丈夫。2週間で退院できる』と言われました」
結局、現場の医者の倫理観に委ねられているのが実状だ。
「難しい症例を新しい手法でやったものは、学会でも注目されるので、自分の実績につながりやすい。その功名心が医者にあるのは否めません。腹腔鏡で、これまで救えなかった命が救えるようになるわけではない。医者はもう少し冷静であるべきです」(前出・川崎医師)
誰も成し遂げていない実績を作るため、「医者がやりたい手術」に患者を誘導する。そういう例が少なからずあるという。
■それでも腹腔鏡を選ぶなら
では実際に、患者や家族はどう治療法を判断すればいいのだろうか。
がんの場合、臓器によって安全性や確実性に大きな違いがある。腹腔鏡手術が向いていて、現在もっとも普及しているのは、大腸がんだ。元国立がんセンター中央病院長・土屋了介医師が言う。
「がん研有明病院の場合、大腸がん手術は開腹より腹腔鏡のほうが症例数が多く、第一選択になってきています」
胃がんでも腹腔鏡手術が広まってきたが、開腹のほうが確実性が高いという。土屋医師が続ける。
「胃は、血管の周りにリンパ腺があるため、開腹して実際に手で触りながら手術したほうが確実だという意見が多い」
一方、腹腔鏡手術が向いていないのは、肝臓や膵臓だ。
「管のようになっている腸や胃と違って、塊の臓器のため、そこから腹腔鏡でがんを切除するのは非常に難しい。とくに膵臓は、体内の奥にあって周囲に神経が絡んでおり、より高度な技術が必要です」(前出・齋浦医師)
それを踏まえた上で、医者には、事前に次のようなことを確認しておこう。前出・森医師が言う。
「その医者が手掛けた腹腔鏡手術の症例数、死亡率がどれくらいなのか、最低限確認しておく必要があります。また、医者から腹腔鏡を勧められたら、なぜ開腹手術ではなく腹腔鏡手術でなければいけないのか、その理由を訊いてみてください」
他の選択肢を提示せず、腹腔鏡だけを一方的に勧められたら要注意だ。また、腹腔鏡手術の実績だけでなく、開腹手術の経験も訊いたほうがいい。
「腹 腔鏡手術中に大量出血などが起こった場合、開腹手術に急遽変更することがあります。開腹手術の経験がある医師は腹腔鏡の怖さを知っているので、緊急事態で もすぐ切り替えられる。ですが、開腹手術の経験が浅い外科医の場合、不測の事態が起こっても腹腔鏡のまま何とかしようと続けてしまい、不幸な結果を生むこ ともありえるのです」(前出・齋浦医師)
体への負担が少ないからと受けた治療で、命を落としてしまったら元も子もない。患者にも判断力が問われている。
「週刊現代」2015年4月18日号より
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