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【15/03/13 YFC
JDSの糖質制限食に対する見解
江部先生
阪神尼崎で開業している山前と申します。
先日地区医師会の講演会に川崎医科大学特任教授の加来先生がお見えになり、「糖尿病薬物治療の現状と展望」と題したご講演をされました。
講演の内容自体は一般論とスポンサー企業の製品の説明であったのですが、質疑応答で興味深いやりとりがあったのでご報告します。
SGLT2の話しから、糖質制限食についての質問となり、加来先生の意見を伺ったわけですが、まとめると以下のとおりです。
1.JDSが理想の栄養バランスと行っている糖質50-60%は、現状の日本人の栄養バランスがこの程度であるために設定した。
2.この糖質50−60%に科学的根拠はない。
3.糖質制限食をしてもらっても構わない。
4.JDSは糖質制限食を否定するものではない。
5.糖質は総カロリーの1/3程度が良いのではないか。
6.糖質を制限すると総カロリーが低下するので効果があるのではないか。
7.腎機能に応じて指導内容を変更すべき。
といったものでした。
加来先生のお話ではJDSの提言作成にかなり関わったようです。その先生が糖質は1/3が良いのではないか、JDSは糖質制限食を否定しない、とおっしゃっていましたので驚きました。
少しずつ糖質制限がアカデミアに認められる日が近づいているのではないかと感じた次第です。
毎月近隣の住民向けに健康セミナーと称して30分程度のミニ講義をしていますが、来月は糖質制限食について講演します。自分の出来る範囲で頑張っていきます。
今後とも宜しくお願い致します。
やまさきファミリークリニック
山前浩一郎 】
こんばんは。
尼崎の、やまさきファミリークリニック 山前浩一郎 先生から、興味深いコメントをいただきました。
貴重な情報を、ありがとうございます。
川崎医科大学特任教授の加来先生は、日本糖尿病学会(JDS)の評議員ですね。
1.JDSが理想の栄養バランスと行っている糖質50-60%は、現状の日本人の栄養バランスがこの程度であるために設定した。
つまり、単なる平均値であり、それがよいかどうかは全く別ということです。
2.この糖質50−60%に科学的根拠はない。
当然、根拠となるRCT研究論文は、皆無ということです。
3.糖質制限食をしてもらっても構わない。
この発言は、山前先生と同様、私も正直驚きました。
日本糖尿病学会の評議員の立場にある医師が、医師会の講演という一定公的な場で、「糖質制限食をしてもらっても構わない」と言うことができるレベルまでは、日本糖尿病学会も進化したのでしょうね。
大変喜ばしいことです。
4.JDSは糖質制限食を否定するものではない。
2013年3月の「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」では、
『炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは・・・エビデンスが不足しており現時点では薦められない。』
『炭水化物50%〜60%、たんぱく質20%以下を目標。脂質の摂取上限は25%を推奨。』
でしたから、かなりの温度差が感じられます。
糖質制限食推進派にとっては、とても良い変化です。
5.糖質は総カロリーの1/3程度が良いのではないか。
糖質33%がよいというのが加来先生のご意見なら、50〜60%の糖質を推奨という糖尿病学会の提言よりは、はるかに糖質制限食に肯定的になってます。
6.糖質を制限すると総カロリーが低下するので効果があるのではないか。
このご意見だけは、とても残念です。
脂の乗った和牛サーロインステーキ200gは約1000kcalですが、糖質はグリコーゲン分の0.6gしかありませんので、食後血糖値は2mg程度しか上昇しません。
一方、炊いたご飯軽く一膳は、150gで約250kcalですが、糖質は55gあるので、食後血糖値は165mgくらい上昇します。
このことは、科学的事実であり、論争の余地はありません。
血糖値に直接影響を与えるのは糖質だけで、タンパク質・脂質は影響を与えません。
このように、血糖値上昇と摂取カロリーは無関係であることは、医師はしっかりと認識しておく必要があります。
7.腎機能に応じて指導内容を変更すべき。
日本腎臓病学会は「CKD治療ガイド2013」で、eGFRが60ml/分以上あれば、顕性タンパク尿の段階でも、タンパク質制限の必要なしとしました。
即ち糖尿病腎症第3期でも eGFRが60ml/分以上あればタンパク質制限の必要なしなので糖質制限食も実践しやすくなりました。
eGFRが60ml/分未満の場合は個別に相談して糖質制限食を導入するか否かを相談することとなります。
なお、米国糖尿病学会は、2013年10月の「栄養療法に関する声明」において、『糖尿病腎症の所見のない糖尿病患者では、最適な血糖コントロール、あるいは、心血管疾患リスクの改善のための理想的な蛋白質摂取量に関しては、これを推奨するに足る十分なエビデンスは存在しない。したがって、目標は個別化されなければならない。
C糖尿病腎症(微量アルブミン尿、および、顕性蛋白尿)を有する糖尿病患者では、通常の摂取量以下に蛋白質摂取量を減量することは、血糖状態、心血管リスク、あるいは、糸球体ろ過率低下の経過に変化を与えないので、推奨されない。A』としています。
つまり、糖尿病腎症のない糖尿病患者での理想的な蛋白質摂取量のエビデンスは存在しないと断定しています。
さらに踏み込んで、糖尿病腎症を有する患者においても、「蛋白質制限は推奨しない」とランクAで断定しています。
山前先生も仰っているように、日本糖尿病学会(JDS)が、米国糖尿病学会(ADA)と同様に糖質制限食を正式に認める日は近いのでしょうか?
江部康二
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3313.html
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