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医師は抗がん剤の発がんリスクを患者に説明しなさい
イペリット
ジャーナリストの船瀬俊介さん執筆の書籍、『抗ガン剤で殺される』(花伝社 2005)は、私たち患者側に添付文書の存在と、抗がん剤の起源が化学兵器であるという事実を知るきっかけを与えてくれました。
しかし、『抗ガン剤で殺される』は、本のタイトルを含め、多方面から様々な問題点が指摘されている事を念頭に置いた上で読まねばなりません。
代替医療の過大評価、過激すぎる文章表現、出典の明示を伴わない不確かな主張など、冷静さを欠く表現が目立ちます。
化学兵器起源に関しては出典として『医学大辞典』(南山堂)が279頁で明示されていますが、内容の全体において問題点が多い書籍は、細かな事柄についても慎重に判断する必要があります。
慎重に判断する必要がある、この事は『抗ガン剤で殺される』に限らず、同様の書籍、ネット上にあふれる情報、そして当サイトを閲覧していただく際にも必要であるということはいうまでもありません。
特に、医療知識が不足している私たち患者側の多くは、信頼に足りうる資料とクロスチェックした上での判断が欠かせません。
検証する上で選定する資料は、医療関係者にも資料価値が高いと判断されるものに限定する必要があります。
まずは、化学兵器起源についてクロスチェックを兼ね、身近な事柄をきっかけに出典を明示してみます。
映画で話題となった『海猿』をご存知の方は多いでしょう。
原作となった漫画の作者は、佐藤秀峰さんという方です。
この方は、医療現場の現状を描いた漫画『ブラックジャックによろしく』(講談社)の作者でもあります。
その単行本7巻で、TS-1という抗がん剤について語られるシーンがあります。
TS-1は実在の抗がん剤であり、開発者は北里大学生命科学研究所客員教授であられる白坂哲彦さんという方です。
TS-1は国内にとどまらず、海外でも高い評価を受けている世界的な抗がん剤です。
くすりの適正使用協議会という団体の『RAD-AR News』という広報誌に、抗がん剤の起源に関する白坂哲彦さんの記事が掲載されていました。
癌の化学療法の歴史
1943年、イタリアのバリ・ハーバーで毒ガスのイペリットを積んだ船がドイツ軍に撃沈された時、海に飛び込んだ兵士たちの白血球が減ってきた。
これをアメリカ軍医のアレキサンダーがスローン・ケタリングのローズ博士に報告し、『白血球が減るのなら白血病の治療に使えるのではないか』ということから癌の化学療法はスタートした。
これまでの歴史を見ると、1950〜1970年までは物質の時代。
ここで生まれたのがイペリットのSをNに変えたナイトロジェン・マスタード。
これは主作用が毒性で、副作用が抗癌作用であった。
『RAD-AR News』 くすりの適正使用協議会
Series No.59 Nov.2003 8頁
イペリットとはナチスドイツが開発した化学兵器であり、別名マスタードガスとも呼ばれていたもので、文中のSは硫黄、Nは窒素です。
船が撃沈され大量のイペリットが流出したこの出来事は、ジョン・ハーヴェイ号事件として語り継がれています。
イペリットは、強力な発癌物質です。
イペリット
皮膚をただれさす毒ガス
…1917年、一発のドイツ軍の毒ガス弾がイープルに落とされた。
(中略)
臭いをかいだイギリス軍は、その芥子臭から、”マスタードガス(芥子ガス)”とよんだ。
これが、一般にはイープルの地名にちなんで「イペリット」といわれる悪名高い毒ガスである。
イペリットには「糜爛性毒ガス」ともいわれるように、皮膚でもどこでも、イペリットに触れたところからただれてゆくもので、ガスマスクだけでは防げないし恐ろしい毒ガスである。
その上、イペリットには恐ろしい発癌性がある。
しかし後年、この発癌性に着目してイペリットから、有用な制癌剤「ナイロジェン・マスタード」など、たくさんの制癌剤が開発された。
『毒物雑学事典―ヘビ毒から発ガン物質まで』 (1984年)
172頁 講談社
医学博士 大木幸介
毒性の強さもさる事ながら、注目すべきは、イペリットの発癌性に着目して制癌剤が開発された、という経緯です。
白坂さんの記事を裏付ける内容です。
抗がん剤の腫瘍(がん)に対する縮小効果が、発癌作用によるものである事を示しています。
抗がん剤とは、発癌作用によって抗腫瘍効果を得ようとする薬剤。
ここまでをまとめると、イペリット(マスタードガス)という化学兵器を元に、ナイロジェン・マスタードという抗がん剤が開発された、と読み取れます。
しかし実は、語られていない歴史の空白が存在します。
ナイロジェン・マスタードは、そもそも化学兵器として開発されました。
ナイトロジェン・マスタードは臭いの強いマスタードガスの硫黄を窒素に変えたもので、マスタードガスと作用は類似である。
化学兵器としてはHN-1〜3があるが
(中略)
米軍では化学兵器として使用したことはないが、保有している。
HN-2の塩酸塩(塩酸ナイトロジェン・マスタードーN−オキシド)は医薬品(抗腫瘍薬、ナイトロミン)として用いられる。
『ナイトロジェン・マスタード』
公益財団法人 日本中毒情報センター
医師向け中毒情報 (2009年) 1頁
いずれにせよ、抗がん剤の起源が化学兵器である事は事実で、これについては他の著名な医師の方々も度々、触れておられます。
そして、化学兵器ナイトロジェン・マスタードは、世界初の抗がん剤としても使用されたのですが、現在は未承認薬となっています。
以上、クロスチェックでしたが、この事は患者側の一部、特に抗がん剤批判派にとっては周知の事実です。
しかし、世間にとって周知の事実ではないのは明らかであり、広く伝える必要があります。
家族、親戚、友人、尊敬する人々に、後から知ってショックを受けてほしくないと考えれば、当然ではないでしょうか。
もちろん、広く伝えようとすれば、既に化学療法を受けておられる患者さんがショックを受けるかもしれません。
しかし、「大変なショックを受けた」ならば、それは事前説明が必須であった、という事になり、 その全責任が、がん専門医に追求されるべきはいうまでもありません。
http://centraldogma.main.jp/genesis-yperite.html
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