http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/367.html
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医薬業界は、金融・軍需・原子力などと並び、支配層が徹底的にコントロールしているマフィア的世界である。
なかでも、医薬の世界は、人道主義を全面に打ち出せるテーマであり、人々も健康と生命に強いこだわりを抱いていることから、おカネを吸い上げたり、人々の精神的依存を深めるのにかっこうのネタとなっている。
(これが、日本政府が子宮頚癌ワクチンを推奨したりイレッサを早期承認した背景であり、日本の製薬会社が世界に打って出ても思うような成果を上げることが難しい要因でもある)
昨日、WHOは「マラリアの死亡率は世界で半減」という発表をしたが、その実現に大きく貢献した中国の役割についてはほとんど触れられていない。
末尾にNHKが報じた関連記事を転載。
(WHOは、いちおう、アルテミシニンの併用治療がマラリアによる死亡数の減少に貢献したと説明)
WHOは、スリランカでマラリアの感染者がゼロになったと説明しているが、この成果は、スリランカ政府と中国政府の共同作戦によるものである。
中国のマラリア対策の根幹は、マラリアを媒介する蚊を標的にせず、生命体に寄生する病原菌(マラリア原虫)そのもののを死滅させることにある。
転載する記事は、コモロでのマラリア絶滅経緯を題材に、マラリアの感染者数と死亡者数を劇的に削減した中国の方式を紹介したものだが、タイトルが「マラリア撲滅に挑む中国 小国を実験台に」であることからわかるように、必ずしも好意的に書かれていない。
記事には、「中国は世界の公衆衛生分野では完全な新参者。その中国が、西洋の医薬業界が長年にわたり挑戦し続けて成功できていないことを成し遂げたわけだ」といいつつ、「世界中の公衆衛生分野の関係者は、今回のような新手のアプローチと、一見成功したようにみえる結果には眉をひそめる。全国民が治ったのだが、それは従来の世界の衛生上のルールにはのっとっていない。このため、世界保健機関(WHO)でマラリア撲滅キャンペーンを指揮するアンドレア・ボスマン氏は、コモロ全国民が危険な実験のモルモットの役割をしたと指摘する」と書かれている。
コモロ政府及びアルテファーム(青蒿科技)・中国政府が、コモロの人々に対し、薬や治療法の有害な副作用の可能性について説明していなかったとすれば重大な罪だが、“成果”については、欧米諸国の関係者も素直に検証しなければならないだろう。
マラリアの感染者は年間2億人近いことから、欧米の製薬会社も、治療薬の開発に力を注いでおり、1960年代以降大きな治療成果を上げている漢方薬系アルテミシニン(ヨモギ科のクソニンジンからの抽出成分)を取り込もうとしている。
(08年には、サノフィ・アベンティスがワンワールド・ヘルスとのあいだで半合成アルテミシニンの開発協定に調印)
現段階でアルテミシニンの効用を素直に認めることは中国のアルテファーム(青蒿科技)を利するだけになるという判断が、マラリア感染者を大きく減少させた経緯をきちんと説明しない状況を生み出していると邪推している。
※ 関連投稿
「北朝鮮、「エボラ出血熱蔓延の責任者はアメリカ」:“囚われの思考”でない限り、それに近い判断に至るのは自然 」
http://www.asyura2.com/09/gm15/msg/296.html
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マラリア撲滅に挑む中国 小国を実験台に[フォーブス]
2014/12/4 7:00
中国・広東の医薬品製造、アルテファーム(青蒿科技)はここ数年、マラリアとの闘いという意欲的な事業に取り組んでいる。マラリアは中世以来、人類の健康を脅かす疫病であり、刻々と人類を死に至らせている。
漢方薬として使われてきたアルテミシニンという成分に部分的に基づいた治療法を開発したアルテファームは、コモロの全国民に対し、制限なくかつ組織的に、その治療を実施している。コモロはインド洋のマダガスカルの西側にある、人口70万人の小さな諸島だ。
コモロ政府の支援を受け、同社はアルテミシニンを、コモロを構成する一つモヘリ島に住む3万6千人に配り始めた。数カ月後、このキャンペーンが終わるころには結果は驚くものとなっていた。いくつかの村では、ひどいときには90%にも達していた感染率が95%減少した。アルテファームは次に、薬の配給計画をコモロの全国民対象に拡大した。このプロジェクトの生みの親の一人である李国橋・広州大学教授によると、同社は2014年11月までに、コモロにおいてマラリアは撲滅されたと発表できるところまできたという。
これは私の知る限り人類史上初めてだった。同時に、かなり議論を呼ぶニュースでもあった。というのも、中国は世界の公衆衛生分野では完全な新参者。その中国が、西洋の医薬業界が長年にわたり挑戦し続けて成功できていないことを成し遂げたわけだ。
■医薬業界が異議を唱える手法
しかし、同社が成功した治療法はすでに医薬業界で地位を確立している専門企業が強く異議を唱えてきたアプローチに基づいているため、激しい議論の的になっている。
アフリカや東南アジアでの古典的なマラリア撲滅計画は、池や水たまりの水を除去し、そこに卵を産み病気を媒介するメスのハマダラカを駆除することに注力してきた。しかし、アルテファームはマラリアを媒介する側を(駆除の)標的にしていない。その代わり、生命体に寄生する病原菌(マラリア原虫)の死滅を狙う。
同社の治療薬である「アルテクイック」は4錠の飲み薬だけ。ワクチンよりも、錠剤のほうが寄生病原菌を失わせる浄化作用が強い。もし全人類が同時にこの薬で浄化されたら、蚊の生息数には変化がなく吸血し続けても、病原菌はこれ以上増殖しないことになるだろう。
しかし、世界中の公衆衛生分野の関係者は、今回のような新手のアプローチと、一見成功したようにみえる結果には眉をひそめる。全国民が治ったのだが、それは従来の世界の衛生上のルールにはのっとっていない。このため、世界保健機関(WHO)でマラリア撲滅キャンペーンを指揮するアンドレア・ボスマン氏は、コモロ全国民が危険な実験のモルモットの役割をしたと指摘する。
さらに悪いことに、コモロの人々は薬や治療法の有害な副作用の可能性について、知らされていなかった。加えて、コモロの地元民の多くは高熱を訴え、アルテファームのマラリア撲滅キャンペーンのあとコモロ諸島の病院の受診者数が目立って増加した。
西側の専門家たちは過去5年間に記録に残っている4人の死亡例についても、薬との関連が疑われると指摘。ただしこれら4例とも抗マラリア薬と直接的には関連していない。WHOはアルテファームに対して敵対的な姿勢はみせていないし、同社の対マラリアのキャンペーンに異論を唱えてもいない。WHOはただ、「非常に極めて新しいアプローチ法」を前に、注意を喚起しているだけだ。ボスマン氏が問題として指摘するのは、キャンペーンの組織的なモニタリングも長い間なされていないことや、二重盲検法、ランダム化試験、プラセボ試験のような西洋式の評価方法が採用されていない点だ。
■副作用の可能性を否定
もう一つの懸念は、子どもは服薬によって自然に得られるはずの「予防接種効果」を失うかもしれないということだ。実際、マラリアが大規模に再発生した場合、病原菌が突然変異を起こさないという証拠はなく、そうなるとアルテクイックが無意味になってしまう。
広州中医薬大学教授で同社のプログラムのトップである宋健平氏は、その心配はないとする。宋教授の研究チームは200人以上のコモロ人を訓練して、マラリア再来を防ぐという視点からマラリアの発生率を監視させる。もう一つの予防策は単純ながら直裁的だ。群島の他の島へ行く船に乗る人は乗船前にアルテクイックを服用しなければいけない。宋教授は副作用の可能性についても、有効成分の用量がかなり低いことを挙げて否定している。
アルテファームのパン・ロンホア社長とコモロのモハディ副大統領兼保健相は、国際的な医薬品検査の手順をふまないことへの非難に対し反論や意見をしていない。今回の計画を通じて、コモロはマラリアのない国になり、マラリア患者の治療のために必要な1100万ドルの支出削減につながるかもしれない。そのうえ、マラリアに苦しんだかもしれない人々が代わりに生産性の高い労働者として働き続け、地域経済の発展に貢献するかもしれない。宋教授としては、この治療法をアフリカ全土に広め、「大陸全土を10年以内に病原菌から救う」のが夢だという。
■公衆衛生の向上へ強い意思
宋教授の夢を実現する前に、WHOは同教授の進歩的な新しい抗マラリア治療薬を認証しなければならないのだが、その動きはすぐには起きそうにない。フランス語圏の雑誌であるAfriquejet.comは「中国の研究者は、自分たちの革新的な発見に対して必要なライセンスがなぜ与えられていないのか、理解していない」と記事の中で述べている。モハディ氏はもっと深読みする。ノバルティス(スイス)の「コアルテム」など、アルテミシニンをベースにした併用療法の競合マラリア治療薬を開発する時間を稼ぐため、認証を遅らせようとロビー活動が盛んに行われている可能性を示唆する。
この件に関して、私の考えは以下の2点だ。
第一に、発想の大転換をみせた中国は怖いもの知らずの活力、創造力を見せただけでなく、公衆衛生の向上に力を発揮しようという強い意思を示した。
第二に、現在の医薬業界のトップ企業は本気で対抗してくるだろう。中国の製薬会社と喜んで対等な立場に立ちはしない。成功のカギは、中国側も本気で挑むことだが、彼らは準備万端のようだ。
By Eric Meyer, Contributor
(2014年11月24日 Forbes.com)
(c) 2014 Forbes.com LLC All rights reserved.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80434630T01C14A2000000/?n_cid=DSTPCS001
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マラリアの死亡率は世界で半減 WHO[NHK]
12月9日 22時17分
WHO=世界保健機関は、マラリアに関して治療や予防の取り組みが進んだため、世界全体の死亡率は2000年に比べて半減したものの、アフリカではエボラ出血熱の影響でマラリアの治療が十分にできなくなっている地域もあると指摘しています。
WHOは9日、マラリアについての年次報告を発表しました。
それによりますと、去年1年間のマラリア感染は世界全体で1億9800万件で、死者の数は58万4000人と推測されます。
これを2000年と比べますと、死亡率は47%も下がっており、死者数も3割近く減っていて、WHOは治療や予防の取り組みが成果を挙げているとして、「われわれはマラリアとの戦いに勝利できる」と評価しています。
とりわけ、アフリカの中でマラリアの感染者が多い地域で、虫よけ効果のある蚊帳を、2004年には人口の3%の人たちしか使えなかったのに比べ、去年は半数近くの人が使えるようになったことが死亡率の低下につながったとみられます。
一方で、東南アジアのメコン川流域では、治療薬への耐性を持つマラリアウイルスの脅威が高まっているほか、エボラ出血熱の感染が拡大しているアフリカの国々では、混乱によって医療施設が閉鎖され、そのためにマラリアの治療も十分にできなくなっている地域もあると指摘しており、今後も国際社会の支援が必要だと訴えています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141209/k10013850931000.html
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