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米中西部で呼吸器疾患ウイルス流行、子ども数百人が入院:エンテロウイルスD6:これもワクチンや治療法が未確立
http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/271.html
投稿者 あっしら 日時 2014 年 9 月 09 日 02:01:31: Mo7ApAlflbQ6s
 


 エンテロウイルス感染による風邪症状はそれほど珍しいわけではないが、エンテロウイルスD6は珍しい型だそうだ。

 ABCニュースによれば、エンテロウイルスD6に感染した子どもは、しばらくは風邪の症状が続き突然呼吸困難に陥るという。
 喘息を患っている子どもや5歳未満の子どもが重篤になるケースが多いとのこと。

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米中西部で呼吸器疾患ウイルス流行、子ども数百人が入院[CNN]
2014.09.08 Mon posted at 10:55 JST

(CNN) 米中西部ミズーリ州で呼吸器系の症状を引き起こすウイルスの感染が広がり、数百人の子どもが入院する事態になっている。米中西部全体に感染が広がっている恐れもあり、米疾病対策センター(CDC)の専門家は7日、現在の事態は「氷山の一角かもしれない」との見方を示した。

CDCによると、これまでのところミズーリ、コロラド、ノースカロライナ、ジョージアなど10州から、エンテロウイルスの検査について協力要請があった。

ミズーリ州カンザスシティーではこのウイルスのために1日あたり30人が病院に入院。うち約15%が集中治療室に入ったという。小児病院に入院した患者だけでも約450人に上り、少なくとも60人が集中治療を受けている。
同病院の医師は「前例のない事態だ。30年も小児医療に携わっているが、こんな事態は見たことがない」と話した。

地域の小児患者の90%を受け入れているカンザスシティー病院によれば、患者は8月15日から急増し始め、新学期を迎えた後の21〜30日にかけてピークを迎えた。現在は横ばい状態が続いているという。

コロラド州デンバーでも同じような呼吸器疾患の患者が急増。8月18日以降にコロラド小児病院を受診した小児患者は900人を超え、症状が重い86人は同州オーロラの施設に入院した。

エンテロウイルスは夏風邪のような症状を引き起こすウイルスで、これ自体は珍しいものではない。しかしこれほど多くの患者が入院するのは異例。CDCの検査の結果、カンザスシティーの小児患者のうち少なくとも19人に、エンテロウイルスD68型の陽性反応が出た。

CDCは、同じような症例が報告されている州についても検査を行っている。
D68型は比較的珍しく、1960年代に発見されて以来、これまでの症例数は100人未満にとどまっていた。米国のほか日本やフィリピン、オランダなどでも報告例があるが、現時点でワクチンは存在せず、治療法も確立されていない。
同ウイルスは患者との接触によって感染し、発熱、体の痛み、せき、発疹などの症状が出る。
同ウイルスによる死者はミズーリ州では確認されていない。ほかの州での死亡者数などは不明。

http://www.cnn.co.jp/usa/35053430.html
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※ 参考(エンテロウイルスD6ではなくエンテロウイルス68とエンテロウイルス71に関するもの)


呼吸器感染症、熱性けいれんの乳幼児からのエンテロウイルス68型の検出―大阪市
(Vol. 31 p. 300: 2010年10月号)

2010年6〜8月の期間に呼吸器感染症由来10検体、熱性けいれん由来1検体からエンテロウイルス68型(EV68)を検出したので報告する。

EV68の月別検出数は、6月2例、7月6例、8月3例であった(2010年8月16日現在)。患者情報を表に示した。いずれの検体もVero、RD-18S細胞を用いたウイルス分離検査は陰性であった。そのため、ライノウイルスおよびエンテロウイルスの遺伝子検査(EVP4、OL68-1 プライマー)を実施した1) 。その結果、すべての検体について、610bpに特異的増幅産物を認め、ライノウイルス(530bp)、エンテロウイルス(650bp)とは異なっていた。ダイレクトシークエンスによりVP4遺伝子(207塩基)を解読し、BLAST(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)による相同性検索を行った結果、すべてEV68(37-99 isolate, GenBank No. EF107098)に高い相同性 (94.7〜95.7%)を示した。一方、VP1遺伝子(927塩基)を用いたBLAST検索についてもすべてEV68(MD02-1 strain, GenBank No. AY426491)に高い相同性(97.0〜97.6%)を示したことから、前述の11検体について、EV68陽性と判定した。

EV68は、1962年にアメリカにおいて呼吸器疾患の子供から発見され2) 、呼吸器感染症に関与することが報告されている3) 。その後の研究により、EV68は、ヒトライノウイルス87型と同一であることが明らかにされた1) 。日本国内では、例年、EV68の検出が報告されているが、その数は、2006年2例、2007年8例、2008年0例、2009年4例、2010年9例(2010年8月25日現在)と多くない(https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data60j.pdf)。しかしながら、今夏については、大阪市のみで11例検出されていること、7月に検出数が増加していることから、EV68が流行している可能性が考えられた。

 文 献
1) Ishiko, et al ., Intervirology 45: 136-141, 2002
2) Schieble, et al ., Am J Epidemiol 85: 297-310, 1967
3) Oberste, et al ., J Gen Virol 85: 2577-2584, 2004

大阪市立環境科学研究所
改田 厚 久保英幸 関口純一朗 入谷展弘 後藤 薫 長谷 篤
中野こども病院 大町太一 舟木克枝 圀府寺 美
大阪市立総合医療センター 天羽清子 塩見正司
大阪市立住吉市民病院 中野嘉子 外川正生
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マレーシアおよび日本で分離されたエンテロウイルス71型の分子疫学的解析

エンテロウイルス71型(EV71)は、コクサッキーウイルスA16型、コクサッキーA10型等とともに手足口病の主要な原因ウイルスのひとつとして知られており、日本各地で毎年分離される常在ウイルスである。EV71はしかし、稀にではあるが重篤な神経症状を引き起こすことが知られており、死亡例を伴うEV71の流行が報告されている。特に1975年のブルガリアおよび1978年のハンガリーではそれぞれ40名以上の死亡例を伴うEV71の流行が確認されており、オーストラリア、アメリカ等でも重篤な中枢神経疾患へのEV71の関与が示唆されている。

1997年、マレーシア・サラワク州で、エンテロウイルス感染が疑われる死亡例を含む小児の急性疾患の流行が報告された(前項参照)。感染研では、マレーシア国立医学研究所と協力して、サラワク州およびマレー半島における死亡例および手足口病患者よりウイルス分離を試み、これまでのところ15株のEV71を分離した。分子疫学的解析によると、分離したマレーシアのEV71は、死亡例、手足口病患者からの分離株を含めてほとんどの株が同一のgenotype(サラワク型)に属していた。マレーシア・サラワク型のEV71は、これまでに塩基配列が報告されているプロトタイプ株BrCrおよびアメリカで1987年に分離された7423/MS株と、RNA で80〜86%、アミノ酸で95%程度の相同性を示し、いずれとも異なるgenotypeに属していた。

日本で現在流行している手足口病の原因ウイルスとしてのEV71とマレーシアで分離されたEV71との間に病原性の強さを含めたウイルス学的性状の違いがあるかを解析する手始めとして、両者の分子疫学的比較解析を行った。また、最近日本でも少数例ではあるがEV71感染の関与が疑われる脳炎を含めた重篤な症例の存在が明らかにされており、ウイルスが分離された大阪の死亡例由来のEV71についても併せて解析を行った。手足口病由来の約40株のEV71および大阪の1株を解析したところ、日本のEV71は大きく2種類のgenotypeに分けられることが示された。そのうち、約10株のEV71はマレーシアで分離されたEV71の多くと共通のgenotypeに属しており、大阪の死亡例由来の1株もこのgenotypeに属することが示された。他の日本のEV71は、EV71/サラワク型と明らかに異なるgenotypeを形成していた。

以前より、EV71が多様な病原性を示すこと、また地域、時期により異なる症状を呈する流行を起こすことからEV71の株間で病原性に違いがある可能性が指摘されてきた。今後、マレーシア、日本および他の地域で分離されたEV71の病原性についての研究を進めるとともに、日本で流行しているEV71について、genotypeの違いを含めて注意深く監視していく必要がある。

国立感染症研究所ウイルス第二部
清水博之 Andi Utama 吉田 弘 萩原昭夫 宮村達男

http://idsc.nih.go.jp/iasr/19/221/dj2212.html


 

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コメント
 
01. 2014年9月09日 09:05:58 : nJF6kGWndY

>エンテロウイルスD6:これもワクチンや治療法が未確立

とは言え、一般健常者が死ぬ確率は低い


仮に大規模に感染が広がったとしても、

インフルエンザや麻疹同様、放置しておいても、

じきに免疫が広まり、流行は収まるし

患者が増えてペイするようになれば対応抗ウイルス薬やワクチンも生産されるようになる



02. 2014年9月10日 09:34:20 : asdjYoy9bU
福島から放射能が風に乗って到達した可能性はあります。

03. 2014年9月10日 10:04:25 : mAKWjxKjsw
日本のテレビが全く伝えないアメリカのトップニュース。
これでアメリカは大騒ぎだ。
何にも知らない日本人に、エボラ、デング熱、プラスこれはパニックに
なるんじゃないかな。
エボラもしょっちゅう出てたし、デング熱は世界的大流行だと言うニュースを
今まで聞いたこともないのだから、しかたないか。
ほんとに日本人はおバカさん。
日本のデング熱なんて蚊にさされた程度のニュースなのに。
海外のニュースでは、日本の騒ぎ方をニュースにしている。
私は以前阿修羅に「夏のインフルエンザ」と書いたが
今日のテレビで専門家が同じ事を言っていて笑った。

04. 2014年10月08日 11:37:47 : nJF6kGWndY

オバマケアの影響はどうかな

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20141002/272051/?ST=print

米国、医療保険制度改革の教訓

経済学で分析したオバマケアの影響

2014年10月8日(水)  辻山 仁志

 社会保障のあり方がさかんに議論されている。社会保障は本来、広く社会保険や社会福祉一般を指すものであり、制度の総体として捉えられる。日本でも昨今、財政健全化や再分配といった観点から「社会保障と税の一体改革」が注目を集める一方で、最低賃金額の改定や生活保護法の改正が関心を呼んだ。

 医療保険も社会保障の一環であり、実際に日本をはじめ多くの先進国では皆保険制度として公的に運営されている。一方、米国でSocial Security(社会保障と訳される)と言えば、年金制度や障がい者保険を指すことが多い。米国において医療保険は原則個人が自らの責任で取得すべきとの考え方が一般的で、高齢者や貧困者を対象としたものを除き、医療保険そのものを社会保障とみなすことはなかった。

 本稿では、2014年から本格始動した医療保険制度改革、いわゆるオバマケアとその影響について考察する。この改革は、米国有史以来で最も大きな政府介入の1つとされ、これまでの医療保険制度を社会保障の枠組みで捉え直す大きな変革であるといえるだろう。医療保険制度崩壊の可能性が叫ばれる日本についても、ここでの議論が役立つかもしれない。

「パッチワーク」になぞらえられる米国の保険制度

 まず、これまでの米国の医療保険制度を振り返っておこう。米国の保険制度はしばしば「パッチワーク」になぞらえられてきた。これは国民の加入する保険が多岐にわたるからで、ほかの先進国にみられるような公的保険が供与されるのは65歳以上に限られていた(メディケア)。また、貧困層向けのメディケイドという公的保険も用意されており、65歳未満の約15%がカバーされている。

 しかし、メディケイドは所得制限以外にも厳密な加入制限があり、単身世帯や子どものいない世帯は加入できないことが多い(州により異なる)。子どものいる世帯であっても、親への保険付与は母子家庭に限ることが主流となっている。

 公的保険が利用できない人は、民間保険への加入を検討することになる。65歳未満のうち約3分の2は雇用主を通じて保険を購入している。この種の保険の保険料はプランの内容と年齢のみによって決まることが一般的で、審査も簡単な上に保険料の大半が雇用主によって支払われることから、魅力的なオプションになっている。実際、雇用主を通じて保険取得可能な場合の取得率は100%に近い。

米国の保険で起こり得る深刻な「逆選択」

 では公的保険が利用できず、雇用主からも保険が提供されないとしたらどうすればよいのだろう。このような状況は主に、中小企業の従業員やパートタイムの従業員、そして失業者に多く見られる。この場合、自分で民間の保険会社が提供する保険を契約するしかないが、ここでいわゆる「逆選択」が問題となってくる。

 すなわち、保険会社は購入者の健康状態が事前に分からないので、同じプランであればより不健康な人ほど購入動機が強く、それに合わせて設定された保険料は健康な人にとって不合理に高くなってしまう。価格が保険支払いの期待値を上回るような、いわゆる保険数理的に合理的でない保険料が課されるのである。現実には、民間の保険会社はこのような状況を防ぐ目的で、事前のスクリーニングに多大な努力を費やしてきた。

 具体的には、年齢・性別・喫煙の有無・病歴や血族者の病歴などを厳密に調べることでリスクを分類し、かつ申請時に健康診断を要求することで健康状態を把握できるようにした。リスクが高いと判断された場合には高額の保険料を請求したり、販売自体を拒否したりすることもある。

「逆選択」がもたらすコストが選択肢狭める

 このようなスクリーニングによってサービス提供を維持してきたが、そのときにかかる費用は一般的に保険料に転嫁され、保険数理的に合理的でない設定がされてきた。結果として、保険料が高すぎて払えない、払えるとしてもコストに見合わない、そもそも申請自体が却下されるなどの理由により、私的に購入する民間保険は有用なオプションにならず、利用者は65歳未満のわずか5%にとどまることになった。

 反対に、無保険であることがあまり不利にならないような制度的特徴もある。米国には救急の患者をその国籍や支払い能力に関わらず治療しなければならないという法律があるため、たとえ無保険であっても緊急的な治療を受けることができるからである。

 しかもこの際の支払いは有限責任となり、請求金額を払えなくても自己破産により事実上免責されるのである。このため、無保険であることが即生命の危険に直結するようにはなっておらず、高い保険を購入するよりも日々の消費を優先する個人も多く存在する。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のグルーバー教授によれば、先に述べた保険数理的に合理的でない民間保険料とこの緊急医療の有限責任こそが、米国の無保険者を生み出す2つの主要因とされている。健康な個人であれば、民間保険会社の設定する保険料はより不合理に感じるであろうから、無保険でいるインセンティブをもつ。一方、不健康な個人であっても、緊急時の治療は保障され、その際に免責される額も大きいので、無保険でいるインセンティブがある。

 こうした「パッチワーク」により生み出された米国の無保険者は4700万人を超え、大きな議論を巻き起こしてきた。しかし、国内に多くの無保険者がいることが、ただちに政府の助けを必要とするものではないことに注意が必要である。

 というのも、市場の効率性を歪めないで政府が介入するというのは現実的には難しく、仮に市場の失敗や外部性の規模が大きくないのならば、政府が介入することによりむしろ厚生が下がってしまうことがあり得るからだ。

 例えば、無保険者に公的保険を提供するために所得税率を上げれば、その分だけ労働供給に歪みが生じ、生産活動が大きく阻害されるかもしれない。さらに言えば、国内に多くの無保険者を抱えるような状況が、効率を最大限に追求した結果によりもたらされるのだとしたら、その効率性を歪めてまで政府が再分配を行うことはまさしく、「どのような社会を目指すのか」に帰着する問題である。事実、先の大統領選では、医療保険改革をめぐり弱者救済と自己責任が大きな論点となっていた。

オバマケアの経済学的意味

 では改めて、オバマケアを通じて無保険者問題に対処することが弱者救済以外にどのような経済学的意味を持つのか考えてみよう。もし医療保険制度改革に利点があるのなら、そのような政府介入は「どのような社会を目指すのか」に関わらず支持されうるだろう。

 まず、大統領選でも論点になっていたが、オバマケアは膨れ上がる医療費抑制に効果があるかもしれないと期待されている。無保険者にとっては医療サービス自体が高額なので、適切な時期に適切な医療を受けられず健康状態が悪化し、それが結果として国全体の医療費を押し上げているかもしれないからだ。

 実際、緊急時を除いて無保険者に対する治療を拒否・制限する医療機関も多い。このような非緊急時のプライマリケアによる健康維持・改善効果が強いならば、無保険者の保険加入は国全体の健康状態向上に寄与し、ひいては医療費を抑制する効果があるだろう。しかし、より多くの人が医療サービスを受けることになるので、かえって医療費増大を招くという指摘もあり、その判断には定量的な分析を要する。

 2つ目の利点として、有保険者が暗に無保険者を補填している現在の状況を是正する効果があるかもしれない。無保険者に対する緊急医療サービスは有限責任が理由できちんと支払われない場合が多く、医療機関はUncompensated Careとして多額の費用を計上している。

 しかしこの費用はどこかで補填されなければならないので、現実には正規の医療サービス価格に反映され、正規医療サービスを受ける人々、つまり有保険者が実際にかかるコスト以上の価格を払っていることになる。

 すなわち、無保険者が医療システムにフリーライド(ただ乗り)し、有保険者がそれを補填する状況になっている。オバマケアにより無保険者の絶対数が減れば、このようなフリーライド自体が減り、結果として有保険者の同じサービスに支払う医療費は下がると期待されている。

 3つ目の利点として、保険に入りやすくすることが、国民全体の潜在的なリスク抑制に効果をもつかもしれない。無保険であることは予期せぬ医療費に対するリスクに脆弱であることを意味するが、無保険に陥る可能性は誰にでもある。

 たとえば現在安定的な職に就いている富裕層も、ひとたび健康状態が悪くなって仕事と雇用主からの保険を失えば、高額な民間医療保険か無保険かの2択を迫られるであろう。オバマケアによって貧困時や不健康時の保険取得が容易になれば、国民全体の潜在的なリスクも小さくなるかもしれない。これは、高所得者や健康な人の負担を増やすことで、それまで保険取得が困難だった人々の保険に加入できないリスクを緩和する仕組みであり、すなわち、国全体のリスクシェアリング機能を高める効果があるかもしれない。

 それでは、医療保険改革で具体的に何が変わったのかを見ていこう。実際の制度改正は多岐にわたるが、2014年に本格導入された変化は主に以下の3点に集約される。

医療保険改革による変化

 まず、保険の取得が義務化され、無保険者は罰則として課税されることになった。次に、民間保険会社において、保険契約時に健康状態を調べること、健康状態によって保険料を変えたり、申請を却下したりすることが禁止された。

 最後に、政府が低中所得者層向けの保険を運営することになり、その保険料は所得の一定割合に制限することが決められた。これ以外に、メディケイドの加入制約をなくし貧困層を一律にカバーすることが検討されていたが、導入前の最高裁判決によりこれは州ごとの判断に委ねることが定められ、現在多くの州で導入拒否または導入延期される事態になっている点に注意が必要である。

医療保険改革がもたらすもの

 さて、改革により一体どのような変化が予想されるだろうか。筆者はマクロ経済モデルを用いてオバマケアの長期的な影響を考察した。まず、上述のような改革前のアメリカの医療・保険システムを再現し、実際に保険数理的に合理でない民間保険料や緊急医療の有限責任によって、多くの個人が「主体的に」無保険状態になっていることを確認した。次に、オバマケアの3つの改革が導入されたらどうなるかシミュレーションした。この際、依然導入が不透明なメディケイドの適用範囲拡大は考慮していない。

 シミュレーションによると、改革後の米国経済ではまず無保険者数が大幅に減少した。これは主に義務化による影響が強く、驚きに値する結果ではない。しかし、これにより上記のような無保険者のフリーライドが緩和され、同じ医療サービスに対する価格は5%ほど減少すると推計された。また、多くの保険加入者が非緊急医療であるプライマリケアにアクセスできるようになったおかげで、国民の健康状態は改善することが推計された。しかし、健康改善効果よりも医療サービスの利用増が強く、かえって医療費増大を招く結果となった。

 次に格差についての効果はどうだろうか。まず、上述したように健康格差は縮小する。また、改革によって再分配機能が高まり、高所得者から低所得者への分配が進むことがわかった。しかし興味深いことに、資産格差が縮小する一方で消費格差が拡大する結果となった。これはなぜだろうか。

 民間保険会社における健康状態の審査を禁止したことや、保険料に上限のある低中所得者層向けの保険が登場したことは、たとえ貧困や不健康になったときにも容易に保険に加入することができることを意味し、経済全体のリスクシェアリング機能を高めた。個々人の潜在的リスクを押し下げる効果をもち、人々は予備的貯蓄を切り崩して、消費に回すことが出来るようになった。特に、もしものときに備えて資産を積み増していた富裕層は、より消費に回せるようになる。

 しかし、貧困層に対してはかえって貯蓄を増やし、消費を切り詰める効果を持つことになった。これは、貧困層はもともと無保険で、医療システムにフリーライドしている者も多かったためである。

 緊急医療の有限責任によってこれらの人々の貯蓄意欲は低かったが、改革後は保険取得を義務化されたためその保険料分だけ消費を減らす必要があり、予備的貯蓄を行うインセンティブも生まれる。結果として、資産格差は縮小し、消費格差は拡大することが推計された。このことは同時に、貧困層がかえって消費を減らすこのような事態を招かないためには、メディケイド拡大が不可欠であることを意味している。

制度改革には、厳密な分析と議論を

 以上はマクロ経済モデルを使った推計だが、一般の議論では見落とされがちなメカニズムや、人々の抱える見えないリスクと政策の関係を定性的・定量的に分析できる強みがある。特にこれまでのシステムでは経済全体のリスクシェアリングが不十分で、政府の介入によりその機能を高めることができるというのは、大事な視点であると考えられる。

 一方、今回の分析では医療費用を保険選択に付随して起こる「外生的なもの」と捉え、医療サービス需要を簡略化して考えていることに注意が必要である。供給サイドについても構造的な変化を省略して考えている。

 保険や医療サービス価格が変わったときに需要がどう変わるかはそれ自体が大きな研究テーマであり、供給側に何が起こるかもあまり詳しいことが分かっていない(例えば本欄の『医療費の「高齢者1割負担」がもたらすメリットとデメリット』や『医療保険の拡大は医療費を増加させるのか?』を参照)。ミクロ経済学や計量経済学の分析による新しい知見が、より精緻なマクロ経済学的分析に寄与することに期待したい。

 最後になるが、昨今では、日本においても医療保険制度改革の必要性が叫ばれている。日本の国民皆保険は長らく有効に機能してきたように見えるが、ここにきて修正を迫られているのかもしれない。民間保険との混合を提案する声も聞かれるが、改革を語る際には人々が直面するリスクとそれを回避するために持っている手段を厳密に捉え、経済全体のリスクシェアリング機能を適切に把握することが必要不可欠である。

 その上で、それを改善する方法があるのか、提案されている改革が思わぬ弊害をもたらすことはないか、精査する必要がある。そして、ますます高齢化が進む中での財政健全化が議論されている今こそ、私たちがどのような社会を目指すのか、社会保障政策のあり方を考えていく必要があるだろう。

このコラムについて
「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。


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