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写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
「水分摂取療法」でメニエール病のめまいは95%改善する
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/153018
2014年9月2日 日刊ゲンダイ
男性2〜2.5リットル、女性1.5〜2リットルの水分を毎日飲むことで、メニエール病の症状が改善するという。122人を対象にした調査では、めまいを1回も起こさなくなった人は95%にのぼった。
この治療法の名前は「水分摂取療法」。北里大学医学部・新世紀医療開発センター・先端医療開発部門・神経耳科学、長沼英明准教授が2000年から始めた。
「メニエール病は内耳に水が過剰にたまって起こる病気です。そのため、<メニエール病患者は水分の摂取を抑えた方がいい>ということが常識でした。しかし、これに基づく治療を行っても、患者の症状はよくならない。そこで、メニエール病の発症メカニズムを解明する目的で本学医学部の河原克雅教授との共同研究を始めたのです」
そんな時、「抗利尿ホルモンの分泌が過剰になると、内耳に水がたまる内リンパ水腫を引き起こす」という研究結果が発表された。
「脱水やストレスで抗利尿ホルモンの分泌が増えることは以前から知られていました。そこで水分を十分に摂取し、ストレスを軽減すれば、抗利尿ホルモンの分泌を抑制でき、内耳に水がたまりにくくなり、内耳の血液循環もよくなると考えたのです。それが、水分摂取療法のメカニズムです」
カフェインと塩分が入っていない水分を、一日の中で分散して飲む。午前中に多めに飲み、就寝2時間前は控えるように勧めている。
「メニエール病の主症状はめまいと聴力低下ですが、多くの場合、耳閉塞感と低音部の耳鳴りが初期症状として出る。この段階でメニエール病を疑い、すぐに水分摂取療法を始めてもらいます」
■聴力改善効果も
多量の水分摂取は心臓と腎臓に病気があるとダメージを与えるので、心臓と腎臓が健康であることが大前提。治療開始前には心臓と腎臓の検査を慎重に行う。この14年間で合併症など問題が生じた人はひとりもいないという。
水分摂取療法のメリットは、心臓、腎臓に異常がなければ、体への害がなく、ほかの病気の予防にもなることだ。
「私は2年かけて患者さんをフォローアップしますが、水分摂取を取り入れることで、長期的には全身の血液循環が改善され、脳梗塞、心筋梗塞のリスクも下げます」
メニエール病の従来の治療法は、内リンパ液を減らす利尿剤やめまい発作を改善する薬を長期間服用すること。それで効果が見られなければ、内リンパ液を排出したり前庭神経を切断する手術が検討される。
しかし、薬は対症療法でしかなく、聴力が次第に低下していく。手術もめまいは改善できても、長期的には聴力低下は防げないことが多い。
「ところが水分摂取療法は聴力の改善にも効果が見られます。研究では30%が聴力を改善し、65%が聴力を維持できた。聴力低下は5%でした」
2010年からは、内耳の血液循環をよくする水泳(水中歩行でも可)も患者に奨励している。
「メニエール病は他人の評価を気にする人に多く、ひとつの行動に熱中する熱中行動、嫌なことでも我慢してやり遂げる自己抑制行動が特徴的。これらの人が水分摂取療法や水泳をすることで、メニエール病の予防にもなると考えています」
最近は、耳石の異常で起こる「良性発作性頭位めまい症」の治療にも水分摂取療法を活用。内耳の血液循環を改善することで、良い治療成績が出ているという。
▽メニエール病 めまい、難聴、耳閉塞感、耳鳴りなどを生じる病気。難病指定されている。
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