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インド・ムンバイの薬局で販売される抗生物質(2010年10月20日撮影、資料写真)。
高まる薬剤耐性菌リスク、インドの抗生物質多用が世界の問題に
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140831-00000001-jij_afp-int
AFP=時事 8月31日(日)8時1分配信
【AFP=時事】その薬剤師は、背後の棚から抗生剤の白い箱をさっと取り出し、カウンター越しに手渡してきた。処方箋の提示を求められることはなかった。――インド・ニューデリー(New Delhi)郊外の高級住宅地にある薬局での出来事だ。
重度の肺炎や気管支炎といった急性の細菌感染症の治療に使われる強力な抗生物質は、本来、最後の最後に頼るべき薬とされる。インドでも処方箋なしの販売は昨年、違法化された。しかし、AFP記者は多くの客でにぎわう薬局で、およそ700ルピー(約1200円)で簡単に購入できた。
医師や医療専門家らは、人口12億人のインドでこのように手軽に抗生物質が入手できる事実が、薬剤耐性菌を増やし、地球規模の問題をもたらしていると指摘する。治療可能となって久しい病気が、再び不治の病になりかねないのだ。
「抗生物質への耐性が上がってきているのは恐怖だ」と、インド医薬品規制当局のGN・シン(GN Singh)局長はAFPの取材に語った。「誤用や乱用は、あってはならない。そのうち、軽い病気でも治せなくなる」
だが、抗生剤が簡単に入手できてしまう現実に「驚きはしない」とシン局長。薬剤師や過剰処方する医師を取り締まり、使い過ぎの危険を患者に説いているが、苦戦しているという。
■世界で増加する抗生剤使用、インドがけん引
米プリンストン大学(Princeton University)が7月に発表した研究「Global Trends in Antibiotic Consumption 2000-2010(抗生物質消費の世界的傾向・2000〜2010年)」によれば、抗生物質の過剰使用は、インドをはじめとする新興国で顕著だという。
経済規模124億ドル(約1.3兆円)のインドの医薬品産業は、世界の抗生物質の3分の1近くをまかなっている。
インドでは、寝ていれば自然に治るような軽い病気でもすぐに治そうと抗生物質を常用する人々が、台頭する中間所得層で増えている。医師たちも、抗生物質が効かない病気にも誤って処方していると、消化器系が専門のスディープ・カナ(Sudeep Khanna)医師は証言する。
「患者から多大なプレッシャーをかけられることが多い。患者はすぐに楽になりたいと思い、医者も早く回復させようと過度な治療を行う傾向がある」(カナ医師)
プリンストン大の研究では、世界の抗生物質の使用量は2000年からの10年間で36%増えた。世界最大の消費国は62%増のインドだ。
■スーパー耐性菌の温床にも
抗生剤の乱用は、薬物耐性のある「スーパーバグ(超強力細菌)」を生む温床となりつつあり、貧困層が多く公衆衛生が不十分なインドに甚大な影響をもたらしていると専門家は指摘する。
2010年、ニューデリーで、ほとんどの抗生物質が効かない新型スーパー耐性菌「NDM-1(ニューデリー・メタロベータラクタマーゼ、New Delhi metallo-beta-lactamase 1)」が発見された際は、世界中がパニックに陥った。
一方、インドには世界の結核患者860万人の25%が暮らしており、2種類以上の抗生物質に耐性のある「多剤耐性結核」の症例も増えている。
インド政府は昨年、46種類の強力な抗生物質について、処方箋なしの販売を禁止した。この中には結核治療に使われる抗生剤も含まれている。この新政策の下では、抗生物質の製造・販売をチェックし、処方箋の記録を付け、人々の理解を深めるための最善の方法を記したガイドラインが全ての医療関係者に配られる。
12月までには新政策の準備が整うとみられているが、導入には「さらに何年かかかるだろう」と新政策に関する政府パネルのメンバーの1人、プルバ・マトゥール(Purva Mathur)氏は言う。
国立インド医学研究評議会(Indian Council of Medical Research)のVM・カトク(VM Katoch)議長は、抗生物質の誤用リスクについて国民を広く教育することが急務だと指摘。「インド人は、深く考えることなく気軽に抗生物質を使いすぎている」と苦言を呈した。【翻訳編集】 AFPBB News
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