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2014年4月、抗生物質が効かない耐性菌が世界で拡大しているとして、WHOが医療関係者らに抗生物質の処方を必要最低限に抑えることなどを呼びかけているということが、報じられました。今回は、日本でも以前からその是非が問われる機会の多い抗生物質について。
米国だけで毎日51トンの抗生物質を消費…抗生物質はもう効かない!?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140829-01059728-trendy-sci
日経トレンディネット 8月29日(金)10時30分配信
食、医療など“健康”にまつわる情報は日々更新され、あふれています。この連載では、現在米国ボストン在住の大西睦子氏が、ハーバード大学における食事や遺伝子と病気に関する基礎研究の経験、論文や米国での状況などを交えながら、健康や医療に関するさまざまな疑問や話題を、グローバルな視点で解説していきます。 2014年4月、抗生物質が効かない耐性菌が世界で拡大しているとして、WHO(世界保健機関)が医療関係者らに抗生物質の処方を必要最低限に抑えることなどを呼びかけているということが、報じられました。 今回は、日本でも以前からその是非が問われる機会の多い抗生物質について。
●ありふれた感染症や軽い傷で命を落としかねない“昔のような現状”
今年の春に、WHO(世界保健機関)は、日本を含む114カ国からのデータを基に、「抗生物質が効かない耐性菌が世界で拡大傾向にある」という報告書をまとめました。報告書では、抗生物質が効かない耐性菌が世界中に広がり、非常に深刻な状況であることを警告しています。
WHO事務局長補のケイジ・フクダ氏は、「緊急に協調して行動しなければ、これまで何十年も治療が可能であった、ありふれた感染症や軽い傷で命を落としかねない。ポスト抗生物質時代に、世界は向かっている」と述べています。
■参考文献 WHO「WHO’s first global report on antibiotic resistance reveals serious, worldwide threat to public health」
●患者からのプレッシャーで不要な抗生物質を処方!?
耐性菌が生まれた原因として、不必要な抗生物質の使い過ぎが考えられています。
英国大手メディアのガーディアン(The Guardian)によると、英国の開業医1004人の調査の結果、ほぼ半分の医師が、患者さんの治療に役に立たないと知りながら、抗生物質を処方していることが判明しました。
さらに、28%の医師は、抗生物質が医学的に必要であるか分からないまま、週に数回処方していました。また、医師の90%は、抗生物質の処方をしなければならないと、患者からのプレッシャーを感じていると回答しています。
■参考文献 The Guardian「Antibiotics wrongly prescribed by many GPs, survey finds」
この記事に対して、ナビタスクリニックの久住英二院長は、次のようにコメントされています。
不要な抗生剤の処方は、日本でも多いですね。その理由をMECE(もれなく、重複なく)に分類すると、以下のようになります。 [1]患者の誤解に基づく強い要望(医師が誤った知識を植え付けたのが原因の可能性が高い) [2]医師の“念のため”処方 [3]医師の古い知識
英国も日本も同じような状況ですし、この問題は米国でも深刻です。
●年間200万人以上が抗生物質の耐性菌に感染する米国
米国では、年間少なくとも200万人が抗生物質の耐性菌に感染し、少なくとも2万3000人が死亡しています。疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention :CDC)のトーマス・フリーダン所長は、ワシントンポストに対して、「注意しないと、すぐにポスト抗生物質時代に突入します。一部の患者さんや病原菌は、すでにその時代に入っています」とコメントしています。
またCDCは、感染症の治療のために「絶対に必要なときのみ、抗生物質を使うべき」と提案しています。ただし、いつが「絶対に必要なときなのか」は、正しい知識がなければ判断できないため、処方する医師側とそれを受ける(もしくは要望を出す)患者側の両方が、知識を共有する必要があると思います。
■参考文献 The Washington Post「The FDA is cracking down on antibiotics on farms. Here’s what you should know.」
●米国で使用されている抗生物質の約80%は家畜に投与!
ところで米国では抗生物質に関して、悩みがもう1つあります。
それは、多くの家畜が感染症の治療だけではなく、予防のために抗生物質が使われていることです。特に、大規模な農場では、家畜が狭い場所に密集しているので感染症が起こりやすく、少量の抗生物質を毎日投与することにより、家畜の生存を維持しています。
さらに、もう1つ、少量の抗生物質を投与する理由があります。それは、ウシ、ブタや鶏などの成長が促進できることです。つまり、ある一定の体重に、少量のエサで早く達することができるのです。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine:NEJM)の記事によれば、米国だけで、毎日計51トンの抗生物質が消費されています。よって、米国は耐性菌の問題の一部の責任を負っているとこの記事の筆者は述べています。また現在、米国で使用されている抗生物質の約80%が、家畜に使用されていて(非医薬品グレードの抗生物質は、通常1kg当たり約25ドルで販売)、現状では抗生物質の禁止は難しいとしています。その理由は「禁止により、家畜の成長が遅れたり、病気になり死亡し、家畜の価格が上がるから」だといい、その対策をこの筆者は、「抗生物質の価格を上げればいいのではないか」と示唆。値上げによる使用農家の減少を期待するというわけです。
■参考文献 The New England Journal of Medicine「Preserving Antibiotics, Rationally」
●低コストのまま産業用抗生物質を規制するのは難しい
米国食品医薬品局(FDA)は、動物の抗生物質に対して、「動物の成長または飼料効率を促進するために使用が可能な抗生物質、と標示することを自主的に停止」、「新しい指針を3年以内に自主的に施行」、「現在は店頭で発売されている抗生物質、獣医の処方を必要とする規則に同意」などをメーカーに呼びかけています。
■参考文献 U.S. Food and Drug Administration「Phasing Out Certain Antibiotic Use in Farm Animals」 U.S. Food and Drug Administration「FDA Takes Significant Steps to Address Antimicrobial Resistance」
FDAからのこの呼びかけに対して、批判的な人も多くいますが、本質的には抗生物質の使用を禁止する考え方だと肯定的な人もいます。消費者にとって低コストのまま、産業分野での抗生物質の使用を規制することは、非常に難しい問題です。
簡単に結論は出そうにありませんが、耐性菌対策から考えると、急を要する問題に思えますね。今後の動きが注目されます。
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