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新しい薬が世の中に出回るためには、こんなに手間暇がかかっている!(プレジデント)
http://www.asyura2.com/14/iryo4/msg/230.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 8 月 15 日 16:13:15: igsppGRN/E9PQ
 

新しい薬が世の中に出回るためには、こんなに手間暇がかかっている!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140815-00013134-president-bus_all
プレジデント 8月15日(金)15時15分配信


■薬のつくり方、知ってますか

 創薬になじみがない読者の方も多いかと思いますので、今回は薬のつくり方についてできる限りわかりやすくお話ししたいと思います。

 薬をつくる前にまずしなければならないのは、病気を治療する為にはどのような変化を体に与えなければならないか、あるいはどのタンパク質の機能を調整しなければならないかを研究します。例えば胃酸が出過ぎて胃潰瘍になっているのであれば、どのようなタンパク質の働きを弱めれば胃酸の分泌が抑制されるのかを調べます。

 一般的にタンパク質の機能を促進するより、抑制することのほうが行いやすいので、阻害することによってよい影響を与えるタンパク質分子を選定します。この選定されたタンパク質を薬剤の開発可能な「ターゲットタンパク質」と呼びます。ターゲットタンパク質が決まったら、このターゲットに結合する薬剤を見つけます。

 薬剤にはざっくりと3つのつくり方があります。1つ目は、ある種の細菌や木の抽出液などの天然に存在するものから抽出した物質を薬にする方法で、世界で初めて発見された抗生物質として知られるペニシリンなどがあります。2つ目は、空気中にいくらでもあるような酸素や窒素などからできている有機化合物からつくり出す、一番よくある薬のつくり方です。3つ目は、人間などの体の中にあるタンパク質に対する抗体を作成したり、膵臓にあるインシュリンなどの生体物質をそのまま薬にする方法。順番に、天然物、低分子化合物、抗体医薬などの生物製剤の3つの分野に分かれています。

 私たちは、2つ目の低分子化合物で薬をつくろうとしています。

 中学や高校の理科や科学の授業で元素記号を習った時に、右図のような分子構造を見たことはありませんか?  見ての通り、6角形の構造式が亀の甲に似ているため、通称、亀の甲と呼ばれています。この図にも炭素(元素記号=C)が含まれているように、炭素を含む化合物の大部分を有機化合物といい、有機化合物は、炭素、水素、窒素などを組み合わせて作られます。

 その有機化合物から分子模型というものを合成化学者と呼ばれる職人たちがミクロの世界でつくっていくのです。ちなみに低分子化合物というのは、分子と分子、原子と原子が結びついてできる化合物の中でも、結びつきの数が少ないものだと考えてください。結びつきが多く複雑なタンパク質などの高分子化合物よりは高い安定性を確保しやすい(冷蔵不要で室温保存が可能な)場合が多く、製造コストも安価であると言われています。

■鍵穴にぴったりはまる鍵を見つける

 タンパク質の形や役割を基につくった、薬の候補となる低分子化合物が、体の中にあるターゲットタンパク質に対してぴったりはまるかどうかを調べていきます。何故タンパク質をターゲットにするかというと、病気を持っている臓器にあるタンパク質の機能を制御することが治療につながるからなんです(もちろん化合物の中には核酸(DNA・DNAの情報によりタンパク質をつくるRNA)、脂質等などその他の体の中にもともとあるタンパク質以外の分子をターゲットにしたものもあります)。タンパク質が鍵穴で、低分子化合物が鍵。ガチャッと扉が開く分子模型のデザインを見つけ出す作業をします。私たちはこれを、化合物をデザインするといいます。

 この化合物をデザインする時に気をつけなければならないことがいくつかあります。ターゲット以外の鍵穴にはまってはいけないのです。マスターキーのように、意図しない鍵穴にはまって鍵を開けてしまうということは副作用を起こしてしまう可能性を意味します。

 治療の対象になっている病気とは関係のない他の臓器のタンパク質の鍵穴にはまってしまうために、いろんな副作用を引き起こすこともあれば、化合物のデザインによっては、臓器が受け付けないこともあります。また、ターゲットのタンパク質そのものがいろいろな臓器に発現している場合も予想外の副作用がでる可能性があるので要注意です。他にも、化合物がちゃんと血液に吸収されて、鍵穴に到着するまで分解されないかなども調べなくてはいけません。

 人間の体には、外から入ってきた低分子化合物や異物を排出する働きがあります。そもそも吸収されなかったり、すぐに分解されてしまったり、吐き気を催すような反応を引き起こしたりと。タンパク質に作用して病気の進行を抑える薬の候補としてデザインされている化合物でも異物と認識されることが当然あるわけです。それをどうかいくぐって鍵穴に到達させるかが肝なんです。それを可能にするデザインの化合物を見つけていかないといけないから、薬ができる確率は低い。この薬のタネを見つける段階で数年はかかります。

■飲み薬のタネをつくれたわけ

 今までの常識では、眼疾患の治療薬は、目の表面には点眼液、網膜や視神経などの眼球の後ろの部分となると眼球注射で投与します。眼球注射は目に物理的に針を刺すので侵襲性が高く、患者さんへの負担は大きいため、症状が進行した患者さんを対象に施術します。

 私たちがつくろうとしているのは、ドライ型の中でも末期とされる地図状萎縮をともなった加齢黄斑変性(加齢とともに中心視力を司る網膜の黄斑部が変性し、視力低下もしくは失明する目の病気)の治療薬候補で、しかも飲み薬です。網膜に薬を届ける手段として経口剤を選択するのは非常に困難だと言われてきました。

 その理由は、飲んだ薬は血液中を流れて、体の他の臓器全てを通過して最後に脳に到達します。ということは、脳にたどり着くまでに、他の臓器のタンパク質の鍵穴にはまるデザインの化合物であってはいけません。

 さらに、異物の侵入を防ぐ関門、いわゆる交通の関所を通過しなければならない。脳には血液脳関門があり、脳の一部である網膜には血液網膜関門があります。この関門をかいくぐる化合物のデザインを見つけるのも容易ではありません。

 私たちがつくっている新薬候補は、網膜にしか存在しないタンパク質に特異的に作用するデザインの化合物でもあり、服用しやすい飲み薬の開発を進めることができているのです。臨床開発のフェーズ2b/3に突入していることは欧米でも注目いただいています。臨床開発について詳しくはアキュセラ・インクのウェブサイト内「患者の皆様/開発のプロセス」(http://bit.ly/V6Gxz5)をご参照ください。

 少し臨床開発について補足しておきます。アルツハイマーや網膜変性はゆっくりと悪化します。プラセボ(※)あるいは偽薬を投与されている被験患者グループが悪化してはじめて薬効の有意差が得られるため、臨床試験には長い期間を要します。no news is good news と言って、副作用などの問題が生じることなく臨床試験が進んでいる場合は、一日一日順調に試験結果のデータが出る日に近づいていることを意味します。この間も現場の医師や臨床開発のスタッフは 患者さんが薬をきちんと飲んでいるか、副作用は出ていないか、予定通りに医師の診察を受けているかなど、全て滞りなく進んでいるかを24時間365日、目を光らせているのです。

 低分子化合物を使った創薬は、こういった探索からはじまります。探索から、前臨床試験、臨床試験を経て、10年以上の長い年月をかけて世の中に生まれてくるのです。3万個のうち薬になるのはたったの1つという低い成功確率にもご納得いただけるのではないでしょうか。

 [脚注・参考資料]
※プラセボ:有効成分が入っていない偽薬のこと。腹痛や頭痛などの症状がプラセボをのむことによって軽減されることがあり、それをプラセボ効果という。

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窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ会長・社長兼CEOで、医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp
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窪田 良=文


 

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コメント
 
01. 2014年8月17日 00:43:50 : OgN3Qr2o0E
統計でやっと効くと証明?された薬。
まあ、効くんでしょうな。
それが、年間売り上げ200億円。
ウハウハですな。
医療費の年間増加8000億円はこの積み重ね。
本当に効く薬は統計なんか取らんでも良いくらい効くものだ。
効かない上に副作用。たまったものではないわいな。

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