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将来は男性がんの第2位に 手術以外の「前立腺がん」治療〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140808-00000004-sasahi-hlth
週刊朝日 2014年8月15日号より抜粋
2010年1年間で発症した人は約6万5千人、東京オリンピックが開催される20年には男性のがんでは肺がんに次いで2位になると言われる前立腺がん。女性の乳がんと同様、早期に見つければ、根治する可能性が高く、治療の選択肢が多いがんだ。
東京都在住の相原浩二さん(仮名・81歳)は、73歳だった2006年の秋に、地元の大学病院で前立腺がんと診断された。
前立腺は膀胱(ぼうこう)のすぐ下に尿道を取り囲むようにある男性特有の臓器で、精液を作る役割を果たしている。ここにできるのが前立腺がんだ。
相原さんは担当医から手術を勧められた。しかし、手術以外に、永久密封小線源(しょうせんげん)療法(小線源療法)という放射線治療があることを知った。
小線源療法とは、超音波で前立腺の形を見ながらコンピューターで治療計画を立てて、会陰部(陰嚢と肛門の間)から長い針を刺してその針を通してヨウ素125という放射線を密封したシード(カプセル)を、がんのある前立腺内に50〜100個埋め込む治療だ。すると、埋め込んだ線源から放射線が放出され、がんをたたく。放射線は徐々に弱まり、1年で全くなくなる。シードは永久に前立腺内に残るが問題はないという。
通常の放射線治療が、体の外から放射線を照射する(外照射)のに対して、小線源療法は内照射と言われる。手術と比べると患者の負担が少なく、腰椎からの下半身麻酔による2時間程度の治療で済む。入院も3泊4日だ。
相原さんは主治医に小線源療法を受けたい旨を伝えて、国立病院機構東京医療センター泌尿器科の斉藤史郎医師に紹介状を書いてもらった。斉藤医師は日本における前立腺がんへの小線源療法の先駆者で、同センターは、現在も全国有数の治療数を経験している。
斉藤医師のもとを訪れた相原さんは、前立腺がんの可能性や悪性度、進行度を調べる検査を受けた。PSA(前立腺特異抗原)の値が27(健康な人は4未満、10以上だとがんの可能性が高い)、グリソンスコア(生検で得た病理組織の主要な二つのスコアを足したもの)が5+4の9(6までが低リスク、8以上が高リスク)と判明。がんが前立腺の外に出ているが精嚢には達していない病期分類T3aだった。前立腺がんはリスク分類で低リスク、中リスク、高リスクに分けて治療法を検討するが、相原さんは高リスクの要件がすべて当てはまり、治療が難しい上に再発に注意しないといけない状況だった。
「相原さんはかなりの高リスクでしたが、他の治療との組み合わせで、小線源療法が可能であることを説明して治療を受けてもらうことにしました」
そう斉藤医師は話す。
相原さんは、07年1月から、男性ホルモンの分泌や作用を抑えてがんの進行を遅らせるホルモン治療を始め、3カ月間受けた。そして、同年4月、小線源療法を受けた。さらに、小線源療法の1カ月半後に外照射による放射線治療を5週間かけて25回受け、治療は終了した。
小線源療法は、現在、単独では、低リスクの症例に行われるのが標準だが、治療前、治療中のホルモン治療、そして治療後の外照射による放射線治療をあわせて行うことにより、高リスクの症例に対しても標準治療とされている。
治療後は、3カ月ぐらい尿が出にくく、頻尿になるなどの排尿障害の日々が続いたが、薬によるコントロールで、1年後には排尿障害はほとんど気にならなくなった。
それからは、3カ月に一度経過を診てもらうため通院していたが、7年経った今も再発はなく、普通に日常生活を送っている。
「相原さんのようにこれだけ高リスクだと、手術でリンパ節を広範囲にとる拡大郭清をしても再発する可能性がある症例ですが、再発もせず、QOL(生活の質)も保たれて、元気に過ごされています」(斉藤医師)
同センターは、小線源療法を受けて5年以上経った990人の追跡調査を実施したが、そのなかの高リスク97症例で、5年で再発しなかった症例が86.5%という好成績だった。このデータを13年に日本癌治療学会学術集会で発表し、注目されている。
「ホルモン治療の効果には議論もありますが、小線源療法と外照射の組み合わせによる治療成績が向上していることは確かです。現在、外照射は精度の高いIMRT(強度変調放射線療法)で実施され、さらに良好な成績が期待されます」(同)
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