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東京女子医大病院で起きた全身麻酔・鎮静用剤による事故をめぐる一連の報道で、麻酔科医の間に困惑が広がっている。麻酔や鎮静に頻用されているプロポフォールの使用が、この事件を機に制限されるようなことがあれば、現場の混乱は避けられない。
今年2月、東京女子医大病院でリンパ管腫ピシバニール注入術を受けた2歳男児が、集中治療室での経過観察中に急性循環不全で死亡した。その後の院内調査で、鎮静に用いられたプロポフォールとの因果関係が浮上。一部のマスコミが、これを「小児に禁忌のプロポフォールで死亡事故」と報じ、一気にスキャンダル化した。
一連の報道の影響は、当の東京女子医大のみならず、日常診療でプロポフォールを使用している麻酔科医にも及んでいる。「プロポフォールは、小児にも成人にも、麻酔のファーストラインとして使用されている」と、ある麻酔科医は話す。にもかかわらず、同薬が「小児の禁忌薬」と報じられたことで、「うちの子の麻酔にプロポフォールを使わないで」などと言い出す患者家族が出てくるのではないかという懸念が広がっているのだ。
「小児の集中治療における人工呼吸中の鎮静」には禁忌
実際にプロポフォールの添付文書で禁忌とされているのは、「小児の集中治療における人工呼吸中の鎮静」。これとは別に、日本麻酔科学会のガイドラインでは、禁忌として「小児への長期大量投与」を挙げている。プロポフォールを小児に使用することが全面的に禁忌となっているわけではない。
超短時間作用型の静脈麻酔薬であるプロポフォールは、その使い勝手の良さから、小児の人工呼吸下以外の鎮静に広く使用されている。麻酔科医が不足している昨今、集中治療医、救急医、小児科医が鎮静を行うのは一般的。これらの医師は、使い慣れたプロポフォールを用いるケースが多いという。
もっとも、東京女子医大病院の事故では、プロポフォールが人工呼吸中の小児の鎮静に使用されていたことが分かっている。
集中治療室での鎮静などで投与が長期間に及ぶと、特に小児では突然死のリスクがあることが以前から知られている。「長期の鎮静で使用するなら、ミダゾラムやデクスメデトミジンを使うのが一般的」(前出の麻酔科医)だという。
一方で、本来は禁忌である人工呼吸中の小児の鎮静にもプロポフォールを使用している医療機関は他にも存在するとの指摘もある。ある小児麻酔科医は、「人工呼吸器を着けた小児の鎮静にも、プロポフォールを使用している施設は少なくない」と証言する。この医師によると、「やむを得ず使用する場合は、長期投与にならないように総投与量を管理したり、乳酸アシドーシスに十分に注意するなど、厳密な管理下で投与している」という。いずれにしても禁忌例に対してプロポフォールがどのように使用されているのか、その実態は明らかではない。
学会は使用実態を調査中
今回の東京女子医大の事件を受け、関係学会の対応は早かった。
日本麻酔科学会は4月下旬、会員に対し、「プロポフォール小児の鎮静使用に関する注意」を通知。同学会の「麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン」を遵守するよう改めて求めた。高用量プロポフォールを鎮静で長時間投与すると乳酸アシドーシスが発症し、治療抵抗性の徐脈の発現と不全収縮に至る症例(プロポフォール症候群:PRIS)が誘因されるという報告を提示。適応のある全身麻酔での使用においても、他の薬剤と併用するなどしてプロポフォールの総投与量を減らし、小児への長期大量投与を避けるよう、注意を喚起している。
また、日本集中治療医学会では、学会員を対象に、小児でのプロポフォール使用の実態を調査中という。関係学会が実態を踏まえた安全対策を示すことを期待したい。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201407/537469.html
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