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https://www.tokyo-np.co.jp/article/69079
「こんぴらさん」の愛称で知られる香川県琴平町の金刀比羅宮ことひらぐうは17日、神社本庁(東京都渋谷区)から離脱したと発表した。離脱の理由は、昨年11月の天皇陛下の即位関連儀式「大嘗祭だいじょうさい」を地元で祝う「大嘗祭当日祭」を巡り、本庁が約束していた供え物「弊帛料へいはくりょう」(5000円)が届かなかったためという。
同宮は大正天皇の大嘗祭で創作された歌舞うたまいを宮内省の楽師から指導してもらい、約100年前から「讃岐風俗舞さぬきふうぞくまい」として継承し、当日祭でも披露した。皇室との特別な縁を誇りとするだけに、本庁の対応を「天皇陛下に対しても不敬極まりない行為」と批判していた。
同宮は2月に離脱方針を決めて法的手続きに入り、10月20日に文部科学相から離脱が認証されていた。今後は単一の宗教法人として宮司交代などを判断できる。幣帛料は今年1月末、本庁の地方機関の香川県神社庁から現金書留で送られてきたという。
神社本庁の広報担当は、同宮の離脱について「コメントすることはない」とした。
◆有力神社が相次ぐ離脱…混乱続く神社本庁
神社本庁を巡っては近年、有力な神社の離脱が相次ぐほか、保有財産を巡る不透明な売却や訴訟などもあり、混乱が続いている。
金刀比羅宮の離脱は、本庁の「別表べっぴょう神社」と呼ばれる有力神社では、昨年の建勲たけいさお神社(京都府)以来となる。本庁は別表神社の宮司の任命権などを握っており、日光東照宮(栃木県)や富岡八幡宮(東京都)の離脱は、本庁による人事や運営への介入に神社側が反発したことが契機だった。
全国に2万5000社あるとされる八幡神社の総本宮・宇佐神宮(大分県)でも、宮司職を世襲する到津いとうづ家と本庁側が対立し、一時は離脱の動きもあった。到津家の女性神職に対する解雇やパワハラ訴訟など昨年まで10年以上も内紛が続き、地元神社界にしこりを残した。
2015年の川崎市内の本庁職員宿舎の売却では、本庁上層部が不動産業者に便宜を図った疑いが浮上し、本庁の内部調査で「適法」と結論づけられた後も、くすぶり続けている。疑惑を告発した幹部職員2人が懲戒処分を受け、裁判で事務方トップの総長に処分の無効確認を求めている。
この問題で、愛知県清須市の宮司らは、総長を背任容疑で東京地検に告発。9月に不起訴となったが、「神社界に民主化とコンプライアンスを求める」としてインターネットで署名を集める活動を続けている。
10年前に裁判で離脱が確定した気多大社(石川県)の三井孝秀宮司は「神社本庁は、全国の神社の自治や信教の自由を最大限に尊重するべきなのに中央集権的な支配を強めてきた。このままでは離脱の動きは止まらないだろう」と指摘する。(阿部博行)
金刀比羅宮 全国の金刀比羅神社や金毘羅神社など約600社の総本宮。古くから海上交通の守り神として漁師や船舶関係者らの信仰を集める。祭神は大物主神と崇徳天皇。参道の785段(奥社まで1368段)の石段は有名。江戸時代には庶民の間で「こんぴら参り」が流行。東京、愛知、三重など1都5県に分社がある。
神社本庁 全国の神社約7万8000社が加盟する国内最大の神道系包括宗教法人。戦後、政教分離政策のもと国家神道の解体を進めた連合国軍総司令部(GHQ)から神社を守ろうと、民間団体を中心に1946年に設立。皇室の祖神とされる「天照大神(あまてらすおおみかみ)」をまつる伊勢神宮を最も尊い「本宗(ほんそう)」と仰ぐ。関連団体に神道政治連盟、日本会議がある。
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